表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

入学編2


 入学二日目


 昨日は、四人で喫茶店に言ってから、軽く食事をした。


 相変わらずサユリとヤンは口喧嘩をしていたが、流石に、人の目もあるので喫茶店ではそこまでヒートアップはしなかった。


 なので、喫茶店での食事はなかなかに有意義なものとはなった。


 「よっ!」


 ヨシキが学校までの通学路を歩いていると、後ろから肩を叩かれる。


 「やあ、ヤン。」


 そこには昨日仲良くなったヤンがいた。


 魔術英明学園までの通学路は、大きな桜並木の一本道が、駅から続いている。


 なので、通学の途中でクラスメイトなどに会うことになり、その光景はヨシキとヤンだけでなく周りでもよく見受けられた。


 「今日は授業見学なんだろ? 上級生の」


 「授業見学じゃなくて、実習見学な。上級生が魔法実技を俺たちに見せてくれたり、卒業生による授業の説明があるんだよ」


 魔術学園は、実技と筆記を学ぶので、忙しい。もちろん土曜日は授業があるし、学校のカリキュラムもびっしりだ。


 だが、自主性もあり、一年生の間は、必修単位でクラスで受ける授業も少しはあるが、大抵が単位を自身でとっていく長れとなり。授業も自分で選ぶことができる。


 だから、自身の能力を自分で見極めて、それを伸ばしていくことができる。しかし、全員が授業を自由に選べるわけではなく。成績が優秀なものほど、自由に選ぶことができるようになる。


 それは学年があがっていくごとに、その傾向が増していき。三年生の成績優秀者の中には、もうすでに軍や、大学で学んでいるものもいて、彼らは行事ぐらいでしかもう学校に来ない。


 なので、入学してからの一週間は、それぞれのコース、授業についての説明がある。これから自身が取っていくものが何であるか理解してから、履修したほうが、より成長を施せるという考えに基づいてだ。




 「俺は、三年ではやく、軍にいきたいから、実技系ばっか取ることになるだろうな。」


 ヤンは、眠たそうにあくびを我慢しながら言う。


 魔術学園は最長五年生だ。最短は三年である。(といっても、先ほどの通り、優秀者はほとんど学校に来ないので、事実上学校に来るのが一年の生徒もいるが)


 なぜ、五年もの期間をおいているのかというと、魔術の基礎である。生命エネルギーに起因している。


 魔術は、自身の体内にある生命エネルギー(気などとも言う)を、自然界に干渉させることによって行うものである。


 それをより効率的に媒介する手段としての、詠唱や魔術式などがある。それを駆使して、様々な魔術師は、世界に貢献をしているのだ。


 その生命エネルギーが、先天的なものがかなり影響をしてくるが、伸ばすこともできることがわかっている。それが二十歳までといわれている。


 生命エネルギーがたくさんあればあるほど、より自然界に干渉をしやすくなったり、干渉規模が大きくなる。


 だから、より優秀な魔術師を育成したい国としては、それまでは面倒を見てくれるのだ。


 といっても、やはり先天的なものが大きいので、後から生命エネルギーが伸びる例は、ほとんど確認されていない。


 なので、四年、五年生は、魔術師としての就職や、進学を望みながらも、他の道を探す猶予期間になっている場合が多い。


 世界に魔術があふれているといっても、それは一部の優秀な人間によって行われただけであり、ほとんどの人間は小さな奇跡しか起こすことはできない。


 だから、魔術能力の低い人間は、それよりもより凡庸な科学の道に進むものも多い。


 今はその科学と魔術の融合が目指されているので、もちろん魔術学園においても、その課程の授業がわんさかとある。これは、科学をも取り込もうとしている魔術側の人間の思いからであるといわれているのは、みなは声に出さないが周知の事実である。


 「そういえば、何でヤンは軍隊に行きたいんだ?」


 「俺の家は代々そういう家だからな。この大和国は、日本と朝鮮半島が集合して名前が大和国になっただろう? そのとき、俺の親父のほうのじいちゃんが韓国の軍人だったんだよ。それで、俺のかあちゃんのほうのじいちゃんは、日本の軍人。だから俺はそのサラブレッド一族だから、必然的に軍人になることになったってわけ。」


 「そうなんだな。ってことは、ヤンも世界魔術大会を目指してるのか?」


 「いや、俺は別に成績を残さないでも軍人への道は確保されてるからな。もし俺が出るとしたら、代理戦争とまで言われてる。世界学生歩兵戦のほうかな」


 世界魔術大会が、個人の選手権ならば、世界学生歩兵戦は、団体での戦いである。これは、大和国で各学校により選抜が行われて、選ばれた人間が世界に出る。


 なぜ代理戦争とまで言われているかというと、そのルールからだ。まず、使っていいものは、魔術だけでなく。世界戦は科学兵器も使用可能であり、いつも、どの科学兵器が魔術に有効であるのかを試されている。


 まずグループリーグで総当りをしてから、各グループ上位2チームが最終トーナメントに上がり。優勝した国には大賛辞が送られる。


 試合の勝利条件は、相手の無力化と拠点の制圧のどちらかをクリアしたらよく。魔術での再生治療の進歩から、本格的な世界戦では、殺傷能力の高い魔術と、重火器の使用が許可されている(学生世界戦では禁止されている。)


 これは、世界異能力戦争からの教訓から、ある程度のガス抜きが必要であるという、世界の認識から行われるようになった。


 といっても、いきなり世界だけではなく。大和国でも大和一を決める大会があり、これは高校単位で出場して、優勝高には総理による祝杯が送られる。


 確か、魔術英明学園はその大会を現在2年連続準優勝という苦杯をなめさせられていたはずだ。


 「いきなり世界か。お前もすごいな。」


 「例えばだよ。」


 ヤンは笑う。


 「まずは、大和一を取りたいもんだね。まあ、そのためにも己を磨かないといけないがな。」


 「そうだな。」


 世界歩兵戦か・・・。集団でも行動にはあまり興味がないな。ヨシキはそう思った。


 「やっ、ヨシキ君」


 「おはようございます。」

 

 そのとき、女子学生2人からあいさつをされる。


 もちろん、その2人のことはヨシキは声でわかった。サユリと美由紀である。


 ヨシキは振り返りながら答える。


 「やあ、2人とも。」


 「崎興さんもおはようございます。」


 「ああ、おはよう。おい! お前は何もないかよ?」


 「あら? いたのね。影が薄くてよく見えなかったわ。」


 「はあ!? 俺は結構身長だって高いほうだぞ!」


 「ヤン、影に身長は関係ないぞ。」


 ヨシキは2人の会話からヤンにそう突っ込みを入れたかったが、流石にこれでは、ヤンがかわいそうであると思い。いいとどまる。


 相変わらず2人は、言い争いをしてはいるが、別に険悪な雰囲気であるわけではなく。どちらかというとじゃれている雰囲気である。まあ、これに関してはヨシキの主観なので、事実はどうであるかはわからないが。


 「2人は、今日の見学はどれをみていくの?」


 見学は、あらゆるところでやっていて、数が多いので自主的に見て回る制度になっていた。何がどの時間にやっているかはあらかじめ、学校から配られた資料に書いてある。頑張れば、すべての授業を見ることができる。(時間をずらして、何日にもわたって何回もすべての授業が行われるため)


 「私は、瞬間移動系かな。現代の魔術じゃ完璧な瞬間移動は実現できていないけど、私は将来、それを実行できたらと思っているからね。」


 「私は、サユリちゃんと一緒にそれを見てから、午後に魔術書系の授業を見たいと思っています。」


 「へえ、新木さんは、将来研究系を目指していんだね。」


 雰囲気からして、体を動かす系だとヨシキは思っていたのでつい好奇心で問いを発してしまった。


 「そうよ。意外? 私はね。ロマンを追い求めているのよ。」


 「へっ! 何がロマンだ。気持ちわりい。」


 「これだから、あんたみたいなのはだめなのよ。だから女心もわからない。」


 「なんだと!」


 2人のそんなやりとりがまた始まったので、それを尻目にヨシキは美由紀に話しかける。


 「山本さんは、何でまた、魔道書の授業を? あまり将来には関係をしてこない気がするんだけど・・・。」


 ヨシキの問いを発するのも仕方がない。昔ならいざ知らず。今は、高位の魔術師であれば、魔道書などいらなくても、魔術を発動できるし、今は科学の発達で、詠唱などを組みこめるデバイスも出てきている。それに、より有能な魔石のよる魔術式の埋め込みも成果を出している。


 もう昔ほど、魔道書の有能性はない現代である。


 美由紀は、ブロンドの髪をなびかせて答える。


 「私は、自分で魔道書を将来つくりたいんです。昔、家で呼んだ魔道書がまるで、それにすべてが書かれているかのようなお宝に感じました。なので・・その・・・、私もロマンを求めているんですよ。今の時代魔道書なんて売れないですからね。」


 「そうなんだ。俺はいいと思うよ。」


 少しかなしそうに苦笑する美由紀に、ヨシキはそう笑みを向ける。


 そんなやり取りをしていると、学園の校門が見えてきた。


 まだ、やりあいをやっているヤンとサユリの2人を見て、ヨシキはやれやれといった風にして言う。


 「2人とも、もう学校だから、今日はその辺にしとこうか。」


 「ちっ、わかった。」


 「ふー、わかったわよ。」


 それを受けて、二人がそれぞれに、返事をする。


 ヨシキは、ヤンや、サユリ、美由紀の話を改めて聞いて、今の四人が一緒にいるのは、もしかしたら類は友を呼ぶというものなのかもしれないと思った。全員が、己の目指すものをしっかりと見定めている。しかも、それぞれが他の人間に馬鹿にされてもいいものだ。


 「どうしたんですか?」


 自分の考えに笑みがこぼれていたヨシキに美由紀が話しかけて来る。


 「いや、おもしろいなと思ってね。」


 「ああ、2人ですか? そうですね、意外に息が合っているのかもしれないですね。」


 「そうだね。」


 ヨシキが考えていたこととは違う意図で取られたが、今の流れではそうなるであろう。


 四人は一緒に校門をくぐる。

 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ