悲しき元凶
俺達は森の捜索を開始した、アンデットがわんさか居るようなこの場所だ。
正直、犯人を見つけるのは結構至難の業だろうな。
でも、見つけないと被害は拡大する一方だし、それだけは避けないと。
「がらぁ!」
「邪魔よ!」
アンデットはどうやらあの熊以外にもわんさか居るようで。
何度も俺達に奇襲を仕掛けて来る。
その度にミナが場所を知らせ、先生がそれを撃破している。
流石は衝撃魔法だ、一撃正確に当てるだけで、アンデットが一撃なんてな。
それに、ミナがいると不意打ちにめっぽう強くなるからな。
「ぐがらぁ!」
「またアンデットね・・・数が多くて本当に厄介」
「頭を破壊すれば良いんですよね?」
「えぇ、アンデットも頭は弱いから」
「じゃあ、一気に掃除します!」
俺は弁当箱の中から木刀を取りだした、基本的に木刀を使うことは無い
今は扱い方の練習をしている段階だからな、だが、アンデットに直接触れるのは
正直遠慮したいからな。
素振り用に持ってきていて本当に良かった。
俺は自分の時間を3倍に加速させた。
「おらぁ!」
「相変わらず早いわね」
「私も援護するよ!」
数が多くても、自分の時間を加速させれば、周りの動きがスローに見えるからな。
でも、そんな状況でも結構な速さで攻撃してくる奴も居るから怖いもんだ。
それに、後方は見えないからな、でも、そこはルーリアが何とかしてくれる。
あいつは俺の動きに合わせたり、支援するのが本当に上手いからな。
「よし」
「あんなにいたのにあっさり全滅ね、あなた達は単体で強い相手以外には勝てるんじゃないの?」
「そうでしょうね」
「まぁ、一撃で倒せない相手だと難しいんだけどね」
「ルーリアさん! 後ろから凄い速さで来てる!」
「え!?」
急いでルーリアの方を向いてみると、確かに凄い速さで飛んでくる狼のアンデットがいる!
この距離だと俺は間に合いそうにない!
「これは私の出番ね!」
「ぐがぁ!」
アースさんが後方から飛んできた狼の頭に強力な拳を叩き込んだ。
すると、狼のアンデッドは地面に叩き付けられ、動かなくなった。
「ふぅ、どんなもんよ」
「ありがとう」
「私もあなた達には負けられないからね」
やっぱり、アースさんは頼りになるな、しかし、あの人はアンデットを拳で
ぶん殴っているけど、平気なんだろうか。
「あの、アースさん? アンデットを直接殴って平気なんですか?」
「平気よ、そもそも触れてないし」
「え? どういうことですか?」
「衝撃を流し込んでるわけだから、接触しないでも当るのよ」
「なるほど、だからアースさんの手には血が付かないんですか」
「そういうことよ」
でも、それだと拳で殴るような動作をする必要はない気がするような・・・
もしかしたら、拳の方がやりやすいのかもな。
「あ! アンデットと違う気配を感じます!」
「本当!? 何処!?」
「こっちです!」
ミナは近くの洞窟を指さした、そこにこの騒動の元凶がいるのか。
「よし! 行くわよ!」
俺達はその洞窟の方に進んでいった、そこにはハッキリとは分からないが、人間の様な姿を確認できた。
「あなたね! この騒動の原因は!」
「あ・・・」
俺達に気が付き、少し動いたお陰で、容姿がハッキリ分かった。
「その容姿、もしかして稀に生まれるって言うウェアウルフ?」
その子は白い耳に白い髪の毛、そして、尻尾のような物が見える。
それに、服装は、白いシャツに、青い長いスカートを着ている。
しかし、その服はもの凄くボロボロで、腹の辺りと、肩は破れている。
「動かないでね」
「近寄らないで!」
女の子はその弱々しい状態で、大きな声を出し、そう言った。
その言葉を聞き、アースさんはゆっくりと説得をしながら近寄った。
俺達は刺激をしないように、少し離れた場所で見ている。
「別に取って食おうって訳じゃないわよ?」
「駄目! こないで! お願いだから! こないで!」
「なんでそんなにいやがってるの?」
「や、止めて・・・私は・・・もう・・・誰かを殺したくないから!」
「は? どういう・・・く!」
アースさんは何かを感じたのか、後ろに素早く下がった。
「どうしたんですか?」
「いや、何だか力が一瞬抜けたのよ、それで嫌な予感がして下がったわ」
「お願い・・・近寄らないで・・・」
女の子が泣きそうな声でそう言った。
いや、もう泣いているな、あの子の目の辺りから輝く何かが見える。
「一体、何をしたの?」
「分からない・・・分からない・・・僕には何も分からない・・・」
女の子は泣きながらそう必死に訴えかけている。
「何がどうなってるの?」
「俺が近寄ってみます」
俺はゆっくりとその女の子の方に近寄ってみた。
「止め・・・て・・・近寄らないで・・・」
「大丈夫だって、何もしやしない、少し話を聞こうと、くぅ!」
確かにある程度近寄ると、もの凄く力が抜けた、俺もアースさんと同じ様に、後方に下がった。
「はぁ、はぁ、一体何で・・・」
「皆・・・皆・・・死ぬの、皆死んで・・・お化けになるの・・・僕に近寄った人は・・・皆・・・
狼さんも・・・小鳥さんも・・・友達も・・・家族も・・・皆・・・皆・・・」
この子が言うお化けって言うのは多分アンデットの事だろう。
だが、この子が無事な所を考えると、多分そのアンデットはこの子を襲っていない。
「近寄った人が死ぬ? そんな話を何処かで聞いたわ」
「そうなんですか!?」
「えぇ、あくまで噂話よ、光属性に強い適性を持つ人間がどうしようもない絶望を受けた場合
デンジャーゾーンという、周囲の生物の命を奪う魔法が発動してしまうってね」
「そんな魔法が・・・止める方法はあるんですか?」
「そこまでは知らないわ、でも、デンジャーゾーンは魔力の暴走だって聞いた
だから、魔力を押さえる道具を使えば、もしかしたら・・・」
魔力を押さえる道具か・・・あるじゃないか、魔力を押さえる手錠が。
「アースさん、手錠はありますか?」
「手錠、ここにあるけど、どうするの?」
「それを使えば、もしかしたらあの暴走を止められるかもと思いましてね」
「無理よ、デンジャーゾーンは生命力をすごい勢いで吸い取るわ
ここからあそこは間違いなく間に合わない、絶対にね」
「俺に任せてください」
「絶対に駄目、いくらあなたが速く動けようと、限界があるわ」
このままだと平行線だな・・・そうだ、考えてみれば、手錠は必要ないじゃないか。
むしろ、この方法の方が確立は高い、直接接近するのと、射程内に入れるじゃね。
「分かりました、手錠は諦めます」
「それが良いわ、さて、あの子をどうしましょうか」
「でも、あの子を止めるのは諦めてませんよ」
俺は自分の時間を現状加速できる最大の速度、10倍まで加速させた。
そして、その勢いで女の子に接近した。
「あ!」
「駄目!」
俺は一瞬の間に女の子に至近距離まで接近し、女の子の時間を止めた。
しかし、あの一瞬だけだったのに、かなりヘロヘロになってしまったな。
「はぁ、はぁ、はぁ、ふぅ、これでどうですか?」
「どうですかじゃ、無いわぁ!」
「いってぇ!」
俺はもの凄い勢いで近寄ってきたアースさんに頭を全力で殴られた。
「な、何も叩くこと無いじゃないですか!」
「お兄ちゃんの馬鹿ぁ!」
「もしもの事があったらどうするつもりだったの! ソール君のアホォ!」
そして、その後からやって来たミナとルーリアにも散々文句を言われた。
「な、なんだよ! 結果成功したんだから良いじゃないか!」
「うっさい! この馬鹿! 自分の事を考えてよ!」
「考えたさ、で、その結果出来るかなって思ってやったんじゃないか」
「それでも駄目! 無茶ばっかりして! 少しは私達の事も・・・うぅ・・・」
「馬鹿ぁ・・・お兄ちゃんの馬鹿ぁ・・・うわぁーん!」
「な、なんだよ! 散々起った後は泣くのかよ! お前ら泣くなよ!」
2人は散々怒った後、長い間泣き崩れた、なんでこんなに泣くんだよ・・・
「女の子を泣かせるなんて感心しないわね、全く、もう無茶は駄目よ」
「わ、分かりましたよ」
「うわぁーん!」
「良かったよぉ!」
2人は俺に抱きつき、それでもまだ泣いている。
くそぅ、何もこんなに泣かないでも良いのによ。
「あなたは2人の相手をしなさい、私はこの子に手錠をかけておくわ
それにしても、完全に止まってるわね、動きも魔力も、まるで時間でも止まってるように・・・
うすうす感じてはいたけど、やっぱりソール君の魔法は時間操作?」
「え、あ、あの・・・」
「隠さないでも良いわ、もう分かってるから、弁当箱でうすうす感じていたからね
大丈夫よ、誰にも言わないから、その方が私としても楽で良いしね」
アースさんはそう良いながら、さっきの女の子に手錠をかけた。
しかし、かけたのは片腕だけで、両腕に手錠はかけていない。
「なんで片腕だけなんです?」
「魔力を押さえるだけなら片方だけでも効果はあるからよ、じゃあ、2人が泣き止むまで少し待つわ」
「ありがとうございます」
「うわぁーん!」
「ヒック! ばかぁ!」
いつ頃泣き止むんだろうな、この2人、あぁ、服が2人の涙でべちゃべちゃだ。




