生まれ変わったら
はぁ、あはは、今日も駄目か…就職活動を始めてもう5年か。
ずっと仕事を探してもあなたは不合格ですってな。
理由を考えても考えても分からない。
それに、親から家を追い出されそうになっている。
このままだと俺の一生は無意味に終わってしまう。
それだけは避けたくても、それが出来ない。
「…そろそろ、あの会社の合否通知が来るはずだが」
最後の賭けとして、俺は超が付くくらいのブラック企業にも挑戦した。
もうこうなれば四の五の言ってる場合じゃない、もう後には引けないんだ…。
「郵便です」
来た! 家に来る郵便なんて、それ位しかない!
俺は急いで郵便を受け取り、その合否を見てみた。
結果は・・・・合格! 明日から来て欲しいと書いてあった。
「よっしゃぁ!」
俺は最後の賭に勝ったんだ! これで俺は人並みに生活することが出来る!
「今日からお世話になります! 岡本 颯太と申します!」
「はい、自己紹介は良いから、速く仕事して」
「あ、はい!」
それから、俺は3年間も仕事を行えた、しかしこの会社はキツいな
1日12時間以上の勤務は当たり前、だが、俺は折れるわけにはいかない、これは俺の最後の希望だ!
「颯太、熱が酷いんだろう? 大丈夫かい?」
「大丈夫だ、ゲホ! 休め無いから・・・今日も仕事に行ってくる」
「颯太!」
そして、俺は今日も仕事だ、いつも通り、この道を渡って・・・
しかし、今日はいつも以上にやばかった、意識も朦朧として・・・周りがかすんで・・・
くぅ、おかしい、熱は38度5分しかないのに・・・
「あ、すみませ・・・!」
誰かに後ろからぶつかられた・・・あ、駄目だこれ・・・足が動かない・・・
俺は体勢を立て直すことが出来ず、道路の方に倒れていった。
「きゃぁ!」
大きなブレーキの音、そして、俺は何かに強く当たり、飛ばされた。
痛みは無い・・・あれ? これって、もしかして・・・あぁ、そうか、最悪だ。
「・・・・・か」
空が青くて、でも、少しずつ赤くなってる、あ、暗くなり始めた・・・
これで死ぬか・・・・そうか、何だか無意味な一生を終えたようだな・・・
・・・はは、最後は無意味に死ぬ・・・俺が1番、嫌だと思ってたこと・・・
世界を救うような英雄になってみたいなんて、子供の頃は思っても・・・
結果は無様な最後、誰の役にも立てない、邪魔しか出来ない・・・
そんな事を思っていると、感覚が殆ど無くなった目に、少し温かい物を感じた。
涙か、今まで枯れてたと思ってたが・・・あったんだな、俺にも涙が・・・
「は、は」
俺の視界は完全に真っ暗になった、それは死を意味するのだろう。
……今まで、誰も叶え様としなかったあなたの願い。
その願いはあなたが最後に願う、最初の願いとなるでしょう。
私はあなたの最後の願い、そして、最初の願いを叶えてあげましょう。
あなたがなりたかった英雄になるチャンス。
今度はしっかりと、その手に掴んで下さい、あなたは才能がある。
そんな声が聞えた気がする…最後に願う最初の願い…よく分からない単語だ…
最後なのに最初なのか? そんな馬鹿な…俺はこの願い意外にも色々な願いをした。
1度だって…本気の願いは叶った事なんて無いけどな。
何だ? さっきまで真っ暗だったのに視界がいきなり明るく…
「産まれたぞ!」
「っはぁ、はぁ」
「おい、カリーナ! 産まれたぞ! 俺とお前の子だ!」
体は動かない、目もぼやけて見えない、口も動かない、声も出ない…
でも、耳だけは聞える、男の人と女の人の声だ。
「良かった…良かったわ…無事に産まれてきてくれて、ありがとう!」
「この子が産まれたのは奇跡ですね、本当に危険な状態だったんですから」
「はい、本当に! この子とカリーナが頑張ってくれたお陰です!」
「ふふ、良かったですね」
殆ど何も無い感覚だが、少しだけ温もりを感じた、何だか懐かしい、こんな温もり…
少しずつ霞んでいた視界はが晴れ、日本人の服装では無い男の人と女の人が見えた。
この感覚からして、俺は抱かれてるんだ…この男の人に…
もしかして…俺は生まれ変わった!?
「あ、あう…」
「何かを喋ろうとしているのか!?」
「あ、うあ、ぁ」
「泣かないから心配しましたが、どうやら意識はあるようですね!」
「はい、良かった!」
声はやっぱり出ない…あ、赤ん坊か…赤ん坊から元の意思がある状態で生まれ変わるのか。
生まれ変わりというのは始めて体験したが、こんな感じなんだな…
いや、もしかしたら夢かも知れない、でも、暖かさを感じるならやはり現実?
あ、頭が混乱してきた…一体どういう事なんだよ…
「おい、カリーナ、この子の名前、どうする?」
「じゃあ、前から考えてた、ソールはどう?、ソール・フィルス」
「そうか、じゃあ、この子の名前は今日からソールだ!」
ソール…それが俺がこの世界に生まれ変わって付いた名前か
じゃあ、今度から俺はソール・フィルスとして、生きないといけないのか
意識を明確に持ったままでの転生…新しい命を拾ったと
最後で最初の願いって言うのは、こういうことか。
もうすでにあの声の主は…俺を転生させていたんだな。