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頭の中身が騒ぐのを僕は感じた。
沸騰石を入れない水みたいに、いつ暴発してもおかしくないくらいだ。
「かかって来いよ、ヤク中共。」
挑発気味に呟いた。
眼前には最早、人が人である為のなにかを棄てた獣が蔓延っている。
『ウヒはハハは!!!」
狂った獣が鳴いた。
嫌に耳障りで、僕は唾を吐いてパイプでそいつを殴り飛ばした。
コンクリの壁にぶつかって、動かなくなった。
「酷いことするねぇ。ニンゲンだぜ?」
軽い口調で、彼が言った。
「治療と言えアホ。やらなきゃヤラレんのはこの世の理だ。」
まぁな、と彼は苦笑して死体をつつく。
『そちらの状況は?オーバー。』
無線から彼女の明るい声が聞こえた。
『相変わらず汚染者しかいねえ。オーバー。』
『こっちは一人生存者を見つけたわ。オーバー。』
『了解。直ちに帰投する。オーバー。』
『了解。待ってる。』
「あ゛ー!疲れた。帰ろうぜ?」
「おっけー、了解。」
肩を並べて歩く彼等を、漏れた薬品のガスで緑色に染まった太陽が照らしていた。