正しい月の過ごし方なんて
「まったくもう」
この言葉を聴いたとき、僕はビクリと驚いてしまう。
彼女を怒らせたときの合図である。ボクシングの試合を始めるゴングのように鳴り響く。
「あれほど言ったのに」
僕はコタツに入ってミカンを食べていただけなのだ。テレビを楽しく見ていただけなのだ。
それにもかかわらず、
「だいたい、もう正月は終わったんだから、しっかりしないと」
「いや、だって、三が日って言うけど……」
こんな時、男は弱い。ひたすら聞くに徹するしかない。もう白旗を上げてなお攻撃してくる。逃亡もゆるされない。
ここは戦場だった。
「隊長! 弾薬が底を尽きかけています!」
「えぇい、節約してつかえ!」
「て、てきが多すぎます!」
雪が降っていた。
辺り一面銀色の世界だ。
いつになったら暖かくなるのだろうか。冷たい風が体を芯まで凍えさせる。
「だらだら過ごして」
最初は機銃掃射で優しいと思わせておいて、後々迫撃砲や野砲で砲弾を撃ち込んでくる。
一面焼け野原。
夜景の綺麗な場所に連れて行って機嫌を直すしかない。
「寒いのは、ちょっと……」
さてさて機嫌を直す手段を断たれてしまった。
寒いといわれたら、外出は封じられてしまう。
家の中ですることなど、コタツに入ってテレビを見る。
これしかない。
やっぱり、これなのだ。
「じゃあ、テレビでも見るか」
「何か面白い番組やってる?」
「知るか」
これぞ、正しい過ごし方なの……かな?
そして、彼女が一言。
「番組つまらないのばっかり」
僕はどうしたらいいのだろうか。