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異世界で奴隷生活始めました:Retake  作者: 海峡 流
第零章 奴隷が主人を得るまで
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牢獄にて

「ほら歩け!」


 簀巻きをされている状態でどうしゃかしゃか歩けと…


 あ、どうも。辻占彼方です。今絶賛連行中なんですが同情しないでくれるとありがたいというかいっそ笑ってくださいですはい。


 ちなみにあの広場っぽい場所から歩かされてから今は体感時間で二十分ほど。


 普段運動なんてしていない俺は既に足が痛い。息も結構切れている。まぁ愉快な山賊の皆さんにとってはこの程度の運動は日常茶飯事らしく、けろっとしていたが。


 ちなみに山賊の人数は四人。一人はいかにもボスっぽい。


 あと、冷静になって考えてみると…

(なんでこいつら日本語をしゃべってんだ…?)


 そう。日本語である。聞こえてくる会話は日本語なのだが…違和感があるのだ。

 そしてその違和感は盗賊どもの口元を見ると氷解した。


(あぁ…こいつらの口の動きが日本語じゃないんだ…)

 なぜ?ふと俺の頭に【異世界】という単語が横切る。小説でおなじみの翻訳こんにゃく的ロジックのご都合主義のアレだ。…わかるだろ?


 たしかに、そういうことなら説明はつく。【異世界】なら山賊なんて職業(職業でいいのかな?)もあるにはあるだろうし【奴隷】なんてのに至ってはテンプレ中のテンプレだろう。

 

「お!見えてきやしたよ!」

「結構な遠出だったなぁおい…まぁ金のなる木は見つけたがな!ガッハッハ!」


 なんてことを考えていたのだが品のない笑いによって俺の意識は現実(とは思いたくない現実)に引き戻された。


 どうやらアジトについたらしい。


 どうやら洞窟をアジトにしているらしく、その入り口にはいかにも山賊といった体の男が二人、見張りとして控えているようだ。

 そのうちの一人がこちらに歩み寄ってきた。


「お前ら!帰ったぞ!あとこいつは道中見つけた【堕ち人】かもしれんヤツだ。明日奴隷商に連れて行くからそこらの牢屋にぶち込んどけ!扱いは一応丁重にな!」

「了解です、ボス」


 何事もなく俺の身柄は見張りへと引き渡され、そのまま洞窟の中へと連行される。


 洞窟内を少し下ると、両脇に鉄格子が並んでいた。

 洞窟の突き当りには鉄の扉があるが…おそらくその奥にこいつらの居住区があるのだろう。メイビー。


 そんな風に洞窟内を観察していたら突然、手前から二番目、右の牢屋に蹴りいれられる。


「っつ…」

「ヒャハハ!てめぇがどこの誰かかはしらねぇがイイざまだな?精々てめぇを奴隷に落とす俺らを呪い続けてみろよ?まぁ?呪ったところでなんにもできねぇだろうがな!ヒャハハ!」


 …こいつからは酒のにおいがする。あと…ラリッてんのか?まぁどうやら俺をいじめてストレス発散でもしたいらしいが。


 てかモヒカンとか…神様、ヒャッハー!とか言い出しそうなんですけどまさか俺世紀末に飛ばされたんじゃないっすよね…?

 

 それもここがどこかなんてのは今の状況を考えれば些細な問題か…

 てか本当に俺をこんな目に合わせた神様がいたら事情説明をしてもらいたいぐらいだ。


 本日何回目になるかもわからないため息をつき、独房を見渡すが…


「…ないわー」


 あったのはぼろきれが一枚。もちろん床なんかは岩がむき出しで、この上で寝ることを考えると憂鬱になる。


 とは言っても仕方がないものは仕方がないので、ぼろきれをまとい、床へと横たわった。

 寒い。


 しかし、どうしようもない現状から目をそらして眠ろうとしたとき、ぱっと思いついた。

 もしもだ。もしもここが異世界とかでよく異世界モノなんかであるような主人公補正がかかっていれば…!


 とは思ったものの、それを確かめる術がない。いやはや、困ったものだ…

 いうなればカメラ本体だけを買って、メモリースティックを買うのを忘れてたみたいな…


 ……

 たとえが微妙すぎたな…どうやら俺の残念な人格は異世界に飛ばされたぐらいじゃ改善されなかったらしい。ショボーン…


 まぁなにはともあれ寝よう。少々疲れてしまったみたいだ…

 そして俺は体が痛くなることを覚悟しつつ、微睡まどろみに身をゆだねた。

 

*********************

「おい起きろやぁ!」


 汚いだみ声が俺を気持ちのいい眠りから引っ張り起こした。

 しぶしぶと体を起こす。


 やけにでかい声だなぁと思っていたら盗賊の下っ端が牢屋に入ってきていた。


 今が朝かどうかはわからないが睡眠は十分にとれている気がするので朝なのだろう。ここで生活してると健康リズム狂いそうだわー…


 まぁそんなものに縁がある世界ならいいんだけどな。


 チラッと盗賊を見る。盗賊は明らかに何かの獣の皮らしきもので作った鎧を着ていた。帯鎧バンデット・アーマーとでも言うのだろうか…胸、肩、腰などにだけ鉄の鎧がついている。んでもって腰には山賊刀マチェーテ


 これがドッキリならこれ以上ないくらいのリアリティだが…

 それはないように思えた。


「おい立て!」


 と言われたので立つ。あーもう…どうにでもなれ!

 うじうじと考えるのをやめて、さっさと出て行った山賊を追う。


 あとこんなことは見なかった方がよかったんだろうが、俺の牢屋より入り口に一つ手前の牢屋にはいつの間にか女の子が入っていた。


 髪はブロンドのベリーショートで、髪の色は全く違うにも関わらず俺はその姿に妹を見た。

 急に、不甲斐なさが胸の奥から湧いてくる。今はまだかもしれないがこの少女はいずれ山賊にけがされ、売られ、碌でもない人生を送ることになるんだろう。


 それを指をくわえて見送るのはちょっと違う気がした。


 でも、残念ながら俺に力はない。


 今すぐこいつら全員を殺して少女を救えるほどの力あれば…

 ないものねだりばかりが頭に浮かぶ。そんな自分に怒りさえ湧いた。


 ああいいさ。俺は決めた。

 いつか、いつか俺にこんな屈辱を味あわせた盗賊どもを皆殺しにしてやると…


 結論から言えば、その機会は随分と早くに訪れることになる。

 

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