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異世界で奴隷生活始めました:Retake  作者: 海峡 流
第零章 奴隷が主人を得るまで
1/43

夢に堕ちる

 「異世界で奴隷生活始めました」のリメイクバージョンです。設定等が若干違います。大筋の流れは一緒です。


 また、「異世界で奴隷生活始めました」の方が完結してない点については本当に申し訳ありません。自分の未熟さ故です。折を見て完結させようとは思います。

 

 今回は書き溜めているので一週間に二回程度の更新を予定しています。

 水曜と土曜ですかね、今のところ。


 二回目の正直です。それではどうかよろしくお願いします。


 

「く…ぅ…ここは…」


 俺、辻占つじうら彼方かなたはむくりと起き上がり、あたりを見回した。


「これはまた…」


 苦笑いが思わず浮かぶ。なにかのタチの悪いどっきりなのだろうか…

 見渡す限りの緑、緑、緑。

 あれですよね。知らないうちに富士の樹海に放り込まれたとかいうことじゃないですよね?もしくは太平洋上のどこかの孤島とか…


 …まぁ確かに、俺はツイテない方だと思う。

 

 ちなみに顔立ちはまぁいい方なのだがその不幸さが顔にもにじみでてしまっていて…

 いや待て。こんなことを考えている場合じゃない。


「そもそもどうしてこうなった…」


 こうなった原因を探ろうとし、頭をフル回転させる。

 時はだいぶ前に遡る…


******************

 十一月十一日。俺は高校が終わり、いつも通り家に帰ろうとしていた。

 いつもはバスで帰るのだが、その日は終礼が長引き、いつも乗るバスは乗り過ごしてしまったはずだ。

 次のバスは一時間後。何かをするならまだしもただ待っているだけでは長すぎる時間だ。家までは四十分ほどの距離なのでたまには歩いて帰ろう、と思い家の方へと(きびす)を返した。


 十分ほど歩くと、中学生の妹が通っている学校が見えてくる。歩くときはなぜかかなりの確立で妹と遭遇するのだが…


「あ、おにーちゃん!今日は歩きなんだね!」


 いきなり、下校途中の女子学生が俺に声をかけてきた。つややかな黒い髪はショートで揃えられており、えくぼが目立つ愛嬌のある顔をしている。


そう、こいつこそが俺の妹、辻占つじうら真理まりである。『真理』なんて頭のよさそうな名前をしているくせに頭は残念な感じで、根っからのスポーツ少女だ。

 というかホントに遭遇率高いな…


「やぁ真理。今日は部活ないのか?」


 真理は陸上部に入っている。やたらめったら速いらしく、エース的立ち位置なんだとか。


「今日はないよ!ていうかおにーちゃんっていつも私の部活が無いときに歩きで帰ってるよね!エスパー?それともストーカー?」

「益体も無いことを言うなよ…偶然だ、偶然」

「えー…残念…」


 …ちなみに少しブラコンのきらいがある。昔は可愛げもあったもんだが今ではすっかり生意気になっちまって…

 そして俺たち二人は帰り道へとついた。


「そういえばおにーちゃんてぜんぜん彼女できないよね!モテないの?」

「あのなぁ・・・こんなに冴えない俺がモテると思うのか?」


 事実、高二にもなって女の子と付き合った経験は皆無だ。家族からも男友達からも「顔はいいよな。顔は」って言われる始末だし。


「ふぅーん…えと…えーとね!スウェーデンなら妹とも結婚できるらしいよ…?いや、深い意味なんてないんだけどね!」

「は?でもあれって異母とか異父とかじゃないとできないだろ?」


 そもそもする気がない。まったく…いつになったら俺離れをするんだか…


 そんな他愛もない(?)会話をしながら帰っていくところまでは普通だったんだ。そこまでは。


「あれ?おにーちゃん?そっちは違う道だよ?」

「え…?あ、あぁそうだったか?」


 どうやら無意識のうちに違う角を曲がってしまったらしい。疲れてんのかな…

 なんて思い、道を引き返そうとしたのだが…


「え…?」


 意思とは裏腹に、なぜか体はその道を進んでいく。


 頭の中がハテナでいっぱいになった。どういうことだ…?

 しかし足は歩みを止めようとしてくれない。まるで誰かに操られてるみたいだ…


 混乱した。何をどうすればいいのかわからない。

 だが、この時俺は何故かこの超常現象をどうにかするより、妹に面倒をかけたくないと思った。


「ま、真理!ちょっと用事を思い出したんだ!先に行っててくれ!」


 そういってその道を歩き出す。


「えー!そんなぁ…もう!今度アイスおごってもらうんだからね!」


 妹は昔から聞き分けがいい。やれと言われればやるし、断らない。本当に人を疑わないヤツだ。将来悪い男に捕まらないか心配だが…

 なんて思いつつ、どうにかなるだろうと思ってその異常事態に身を任せた。


 しかし、これが今生の別れになるなんて、俺はおろかこの世界の神様も思わなかったに違いない。


 一時間後。未だに俺の足は止まらなかった。

 道はアスファルトで舗装されていたものから山道に変わってしまっている。山道とはいっても傾斜は緩やかできついというほどでもなかった。

 はぁ…早く解放されないかなぁ…なんて場違いなことをかんがえる。普通の人なら怖くて大声で泣き叫んだりするんだろうか?するんだろうなぁ…

 そういえば今日の晩御飯はなんだろう。今日は確か母の作る日だったので最近凝ってる中華料理かな…?でも腹にクルんだよなぁ…油っぽくて。

 そうしているうちに段々と遠くに建物が見え始めてきた。

 あれは…教会だろうか…?こんな山奥に?

 その疑問は近づくことによって確信へと変わった。正解は『朽ちかけの』教会だ。教会のくせに十字架はどこにも見当たらないが。

 そしてその扉を押し開く。


 果たして、そこには『穴』があった。深く深く、底が見えないほどの。

 そして俺の足が止まることはない。


「おいおいまじかよ…」


 そして俺の歩みはついに虚空へと踏み出し、その穴の中へと落ちて行ったのだ。

 その先の記憶はない。



*****************

 まぁそして今に至ると。

 ただこの荒唐無稽な内容を鑑みるに夢である可能性は高い。というか夢以外でありえんだろこれ…

 ただ結果としてその記憶を最後に今に至るらしい。

 まぁなんというか…

「ついてないよなぁ…」


 そうつぶやいたその瞬間。ガサガサっとあたりの茂みが揺れた。

 びくっとして、その茂みの方へと目を移す。が…

(なにもいない…よな?)

 そう思い、これからどうしようか考えようとすると…

 

 今度はあたりの茂みがすべて音をたてはじめた。

 しかもこちらに近づいてくる!?

 

 まて。落ち着くんだカナタ、ビークール。

 野生動物なら今この時点で声を上げても問題ないだろう。まぁ種類にもよるが。

 というか日本内の森林で集団で狩りをする動物って何だ?イヌか?

 

 だが…


「こっちです、お頭!たしかもう少しで光ったところにつくはずですぜ」

「本当に何かあんだろうなぁ…まぁおもしろうそうだからいいんだがな!ガッハッハ!」


 と、いう会話が聞こえてきた。耳を疑う。

 え?お頭って?とび職化何かか?というか今時ガッハッハなんて笑う奴がいるのにびっくりだよ…


 まぁ何はともあれこれで助かった…

 声を上げないでもここが目的地のようだ。気づかれないはずもないだろう…

 

 だが、結果としてこの逃げない、という判断は失敗だった。

 しかしいったい誰が想像できるだろう。いきなり《山賊刀マチェーテ》を鉈代わりにしながら森の中を進む、見るからに山賊な奴らが出てくるなんて…!


「お頭!人ですぜ!」

「マジか!こんな山奥で、しかも光った所にいたってことは【堕ち人】かもしれねぇなぁ…奴隷商に高く売れるかもしれないから捕まえておけ!」

「了解っす!おいお前ら!囲め囲め!」


 そんなこんなで俺は声をあげる暇もなく、簀巻きにされてしまった。

 ホント俺の不幸、ここに極まれりだよ…どうすんだよこれから…

 ちなみに簀巻きになる前に制服だけはぎ取られた「いい生地だな!」なんて言って親方とやらの所有物になる。危うくシャツもはぎ取られそうになったが「商品が病気をしても困る」とか言われてはぎ取られなかった。商品って文言はヒジョーに気に入らなかったがな!

 

 ということで、この状況が俺に教えてくれることは二つある…

 どうやらここは俺が元いた日本じゃないらしいことと…あと【奴隷】なんてものが存在する世界らしいことだ。


 

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