帰り道2
「シェルリーナも確かその場所にいたから聞いてたよね」
「はい、勇者様召喚の儀式には有力な者は呼ばれていましたから」
今更ながら、まざまざと思い出す。
確かあの日は、いつも忙しい弟が珍しく家にいて
『よーし、お姉ちゃんが弟のためにおいしいご飯を!』なんて張り切って
テーブルで向かい合って他愛もないことを話しながら食事をしようとした時に
一瞬、暗くなって。
いつの間にか2人一緒に、見たこともない場所にいたんだっけか。
「私たちもびっくりしたんですよ、勇者様召喚で2人現れたんですから」
「そこんとこはアバウトだったんだね、ほんとに」
「大体の位置しかわかりませんでしたから…それに」
「肝心の勇者がどっちかはっきりしないとか…」
そう、完全な食事ゆったりスタイルで食卓と一緒に呼ばれた私と弟に
『どちらが勇者様ですか?』と神官が問いかけて、
どちらも答えないものだから周囲がざわつき始めて。
あんまりに突然の事だったから、私もどうしていいかわからないままだったんだけど
急に弟が胸を押さえて前かがみに屈んでしまって。
何よりもこの状況をどうにかしないといけない、と思って
「私が勇者です!」と思わず。