帰り道1
少しだけ心地よい風が吹いて、焚火の炎を揺らしていく。
体育座りでそれをじっと見つめる。あたりは闇に包まれている。
ああ、炎って暖かいものだったんだなあ、なんて改めて思う。
たぶんずっと知らないままだったのかもしれない、自然の偉大さとか…
「考え事ですか?」
とりとめもない考えは、柔らかな女性の声で遮られた。
「勇者様は考え事が多いんですね」
私の隣に同じようにして座る女性…シェルリーナは笑いながら微笑んだ。
「んー、よくまあ頑張ってこれたなあ、なんて思って」
「それは勇者様のお力です、努力のたまものです」
「…べた褒めしないで、恥ずかしいから」
シェルリーナの言葉に思わずうつむくと
「そんな控え目なところも素晴らしいんです!」と
横からぎゅっと抱きしめられた。
「恥ずかしいです」
「女の子同士なんですから」
「私、女の子って歳…」
「女の子なんですから間違ってません!」
思わす笑いだす。…こういうのガールズトークっぽいなあ、私の年齢等々はおいとくとして。
抱きしめた姿勢のままシェルリーナが話し始めた。
「やっぱり、還ってしまうのですか?」
「うん、そのつもり」
それは決めていた事、王様の前でお願いした事。
「……寂しくなります」
シェルリーナの声のトーンが落ちたことに気がつかないふりをして
私は話を続ける。
「私は弟と元の世界に還るよ」