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静国 -Silent Dominion-  作者: はやぽん


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第26話 最初の技術者 Part2 更新

読み込みが終わる。

《例外運用》

《更新記録》

最初に表示されたのは、個別事例ではなかった。

《運用区分》

《説明可能性基準未達》

《限定的暫定運用》

《再評価必須》

《自動更新 不可》

悠真は最後の行を見る。

「自動では延びないんですね」

「はい」

技術者が答えた。

「期限に達した時点で、そのまま継続されることはありません」

「毎回確認する?」

「技術条件と行政上の必要性を再確認します」

画面が切り替わる。

《更新時確認》

《入力記録の追加確認》

《再計算》

《説明生成再試行》

《実施済み対応の確認》

《新たな不利益の有無》

《解除条件への到達確認》

《行政側継続判断》

「解除できるなら解除する」

悠真が言う。

「それが前提です」

「説明できるようになったら?」

「通常運用へ戻せる場合があります」

「予測が変わったら?」

「例外運用そのものを終了する場合があります」

「本人の状態が変わったら?」

「その状態を含めて再評価します」

技術者は資料を送った。

《更新 ≠ 同一判断の維持》

《更新時点の情報で再判断》

「前回と同じ結論になるとは限りません」

「でも、同じなら続く」

「必要と判断されれば」

悠真は頷いた。

仕組みとしては、相川市で扱っていた保留案件とそれほど違わなかった。

期限がある。

一度条件を置く。

情報が増えれば、また見る。

違うのは、扱っているものだった。

「個別記録を見ます」

技術者が言った。

画面の上に表示範囲が出る。

《急落事象関連》

《例外運用記録》

《担当者向け概要》

《個人識別情報 非表示》

《行政判断理由 非表示》

悠真は最後の行を見る。

理由は出ない。

今日確認するのは、運用の形式だけだった。

「Case-04ですか?」

悠真が訊いた。

「はい」

技術者が答えた。

画面が開く。

《Case-04》

《初回状態》

《再計算結果 一致》

《初回要因説明 生成されず》

《説明可能性基準 未達》

その下。

《通常処理》

《追加検証》

《説明生成再試行》

《行政利用 保留対象》

悠真はそこで一度止まった。

「保留対象」

「はい」

「本来なら止める」

「通常基準では」

次の項目が表示される。

《例外運用》

《適用 あり》

《運用範囲 限定》

《再評価期限 設定》

《本人選択可能性 保持》

《生活支援 実施》

悠真は画面を読む。

説明できなかった。

通常なら行政利用を保留する。

それでも、例外運用が適用された。

「ここで支援が始まった?」

「この記録上はそうです」

「区分変更も?」

ミライ庁の担当者が答える。

「生活支援区分の処理と、個別支援の実施は分けて記録されています」

画面が少し下へ動く。

《生活支援区分》

《変更済み》

《本人向け通知》

《実施済み》

《支援候補提示》

《実施済み》

《本人確認を要する項目》

《個別確認》

「本人が全部受けたわけではない?」

「その情報は今日の表示範囲では確認できません」

「少なくとも、本人確認が必要なものは勝手に確定してない」

「はい」

これまで見てきた運用と同じだった。

例外だからといって、本人確認が消えたわけではない。

「じゃあ、例外なのは何です?」

悠真が訊いた。

技術者は少し考える。

「説明可能性が通常基準を満たしていない予測を、行政判断の一部として扱ったことです」

「支援のやり方じゃなくて」

「そこではありません」

「使い始めたこと自体」

「はい」

悠真は画面を見る。

《初回要因説明 生成されず》

その下では、

《生活支援 実施》

になっている。

技術者が次へ進めた。

《初回適用》

《四月十八日》

《再評価期限》

《設定》

日付の下に、

《更新履歴を表示》

という項目がある。

「これがさっきの?」

悠真が訊く。

「はい」

開く。

縦に記録が並んだ。

《初回適用》

《四月十八日》

《技術再確認 完了》

《行政継続判断 完了》

《次回再評価 設定》

次。

《第一回更新》

《五月二日》

《再計算 一致》

《説明生成 基準未達》

《新規重大異常 なし》

《例外運用 継続》

次。

《第二回更新》

《五月十六日》

《再計算 一致》

《説明生成 基準未達》

《例外運用 継続》

第三回。

《五月三十日》

第四回。

《六月十三日》

第五回。

《六月二十七日》

六回目。

《七月十一日》

すべて同じ形式だった。

細かな確認内容は折り畳まれている。

開かなくても、結果だけは分かる。

《再計算 一致》

《説明可能性 基準未達》

《例外運用 継続》

「昨日も?」

悠真が訊いた。

「更新されています」

ミライ庁の担当者が答える。

「調査整理と並行して、定期再評価が行われています」

「毎回、説明できないまま?」

技術者が画面を見る。

「この概要では、通常基準を満たした記録はありません」

「でも再計算は一致する」

「はい」

「それで継続」

「再計算一致だけを理由に継続している、という意味ではありません」

技術者はすぐに付け加えた。

「行政側の継続判断には別の確認があります」

「その理由は今日見ない」

「はい」

悠真はそれ以上聞かなかった。

画面には六回分の更新が残っている。

二週間ほどごと。

四月。

五月。

六月。

七月。

暫定。

その言葉から悠真が想像していたより、長かった。

「最長期間って決まってないんですか?」

悠真が訊く。

「一律には決めていません」

「何で?」

「事例ごとに解除条件が違うためです」

「じゃあ、条件に届かなければ続く?」

「更新判断が認められる限りは」

「半年でも?」

「制度上はあり得ます」

「一年でも?」

技術者は少し間を置いた。

「長期化した場合は、更新頻度や運用方法そのものを見直す規定があります」

「でも、自動的に終了はしない」

「はい」

悠真は一覧を上へ戻した。

《初回適用 四月十八日》

《第六回更新 七月十一日》

その間に、設備側では支援後の需要変化を何度も確認している。

住居。

交通。

地域施設。

生活時間帯。

すでに現在の需要予測へ組み込まれている。

「もし、今ここで例外運用を終了したら」

悠真が訊いた。

「生活も元に戻るんですか?」

技術者は首を横へ振った。

「行政上の例外運用を終了することと、本人の生活を以前の状態へ戻すことは別です」

「支援で仕事が変わってたら?」

「新しい就労状態を前提に、その後の支援を検討します」

「引っ越してたら?」

「転居を取り消す理由にはなりません」

「本人が選んだことなら」

「はい」

技術者は資料を切り替えた。

《Reversible》

《行政判断を再検討可能にする》

《本人が行った生活上の選択を自動的に巻き戻すものではない》

悠真はその文章を見る。

「戻せるって、全部戻る意味じゃないんですね」

「そうです」

「一度支援を受けて生活が変わったあとに、元の予測が違ったかもしれないってなっても」

「その時点の生活から再検討します」

「前の日には戻れない」

技術者は一度だけ頷いた。

「時間は戻せませんから」

特別な言い方ではなかった。

当たり前のことを答えただけだった。

悠真は画面を見る。

Reversible。

再検討可能。

予測は見直せる。

支援も変えられる。

区分も更新できる。

それでも、その間に本人が選んだ仕事や住居や生活まで、同じ形に戻るわけではない。

「だから、なるべく限定する?」

「それも理由の一つです」

技術者が答える。

「例外運用で大きな不可逆性を作らないために、本人の選択可能性と再評価を残します」

「選んだ結果、本人が生活を変えることはある」

「あります」

「それは止めない」

「本人が希望するなら、止める理由はありません」

悠真は少しだけ黙った。

Case-04の本人が、何を選んだのかは表示されていない。

今の生活をどう思っているのかも分からない。

設備記録には、変わった結果しかない。

技術者が言う。

「次へ進めますか?」

「はい」

画面が更新される。

《Case-04》

《例外運用状態》

《継続》

《直近再評価 七月十一日》

《次回再評価 七月二十五日》

その下。

《更新回数》

悠真は数字を見る。

《六回》

誰も何も言わなかった。

技術者は次の資料を開いた。


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