第壱話 零日目
2014年12月31日 月曜日
午後11時26分32秒
年越し特番の芸人が笑っている中、俺の日常は、終わった。
世間が大晦日大晦日と騒いでいる中、俺はたった一人で自分の家のテレビを見ている。友達がいないってわけじゃあない。ただ、俺はどうしても年が変わる程度で騒いでる奴らの気持ちを理解することができない。俺は外と大して変わらない騒音の流れるテレビを消し、布団に入った。
「やれやれ・・・やっぱ都会にある高校には行くんじゃあねぇな。利点っつっても駅が近い、色々と設備がいい…他に無いな。どっちかっつったらデメリットのほうがデカい。」
そう呟いた。あ、スマホにメールが来てる。
「暇だし、あいつらとメールで話すか。」
そう思ってスマホを手に取った。しかし、ロック画面が変わっていた。俺はスマホを買ってからロック画面はずっと六法全書だ。しかし、現在のロック画面は六法全書とは似ても似つかない、
”20DAYSに参加しませんか?ゲームに勝てば賞金20億円、手数料は要りません”
そういう感じの文字が上半分に書かれていて、下半分には”はい”と”いいえ”のボタンがあった。上にスワイプしても顔認証やパスワードを打つことはできず、反応がなかった。
コンピューターウイルスに感染した、ということがまず最初に思い浮かんだ。というかこれ、ゲームの広告みたいだな。”手数料は要りません”とか書いてあるし、面白そうだし怪しいけどやってみるか。
あ、もし闇バイトとかなら刑事告訴できるしスクショしとこ。そう思ってスクリーンショットをした。はずだった。何故かスクリーンショットができるボタンを押しても反応がない、いや、正確に言えばすべてのボタンに反応がない。正直言って怖いが、好奇心が勝って俺は”はい”と書かれているボタンを押した。
次の瞬間、俺は横になっていた。驚いて顔をあげるとそこは自室ではなく、何か、町の体育館のようだった。周りを見ると自分以外にも数十人、下手すれば数百人と人が周りにいた。ヨボヨボでボケた老人から外国人まで様々な人間がいる。そして、その大多数は自分と同じようにスマホを持って、かつこの状況に驚いている様子だ。
「ねえ、君誰?」
そう、俺に問いかけてきたグラサンの奴がいた。こんな状況で他人に自己紹介を迫るなんて、すごいやつだな。
「俺は菊池蒼。高校生だ。お前は?」
「僕は・・・」
そう、俺に話しかけてきた男が自己紹介をしようとしたその時、キーンと言うハウリング音の後に、天井にあったスピーカーから声が流れてきた。
「ボンジョルノ!え?いま深夜?うわっマジ?じゃあブオナセーラ!え〜〜〜っと・・・これ何言えばいいんだっけ?ああそうだ。皆様お集まりいただきありがとうございます。ではこれから、皆様が参加していただくゲーム、”20DAYS”のご説明をさせていただきます。」
意味がわからない。”皆様が参加していただくゲーム”?いや、俺はゲームに参加しないかというスマホの質問には答えたけど、あくまでそれってスマホのゲームだろ?俺達が実際にこの体でやるわけじゃあ無いはずだが・・・っつーかこのアナウンスってイタリア人っぽいな。挨拶でイタリア語使ってるし。
そう考えていると、またスピーカーから声が出てきた。
「まあ、いきなりこんなことを言われても困りますよね?ですから説明します。まず、我々20DAYS運営委員会は、時間、国、場所を問わずにランダムに決めた500人のスマホにウイルスを送り込みました。スマホが誕生していない場合はスマホごと転送しました。ウイルスとシステムは本当に作るのがすごく面倒でした。さて、その内容は皆様御存知だと思われますが、あの”はい”と”いいえ”のボタンのあるロック画面が出てくるというウイルスです。」
会場がどよめいた。
「それで”はい”を選んだ方はその端末から特殊な電磁波を出していただき、少し眠っていただきました。”いいえ”を選んだ方は、不幸なことに先述したものとは違う電磁波を端末から脳に照射しており、現在のIQは平均して約0.5です。閉じ込めて監視カメラで見てみたんですが、滑稽でしたよ。自分の血をなめてはしゃいでました。で、”はい”を選んだ方は船などの輸送手段でこの場所に運んでいただきました。これが、今に至る経緯でございます。」
やっぱりウイルスかよ。っつーか、”いいえ”、選ばなくて良かった〜〜!IQ0.5って・・・20DAYS運営委員会、イカれてんのかよ。
スピーカーから1息ついたような音が聞こえると、また声が聞こえてきた。
「それでは、ゲームの説明に参ります。今回お集まり頂いた237人の方たちには、この島で20日間生き延びてもらいます。大変ですね。ただし、20日間が終わったら全員がこの島を出ることができる、というわけではなくてですね、20日間が終わって出られる人数は10人だけです。ああ悲しい悲しい。で、その10人をどうやって決めるのかといいますと、殺害した人間の数や運営側から課されたミッションを達成した数が一番多い10人となっております。つまり、人を多く殺した数だけ生き残る確率が上がるわけです。あ、少し話はそれますがこのゲームをやろうと思った理由を端的に話しておきます。なんか政府のお偉いさんたちが、”なんか暇だからさ—、デスゲーム的なやつやってよぉ—”とか言ってきたので、やることにしました。」
えー、まじか。法律的にはこの運営委員会、傷害罪、殺人罪、その他諸々かぶってんぞ。いや、政府のお偉方が後ろ盾についてんだ。そんなの余裕で握りつぶせるか。というか冷静に考えてみて、なんで10人だけ生き残らせるんだ?生き残らせた場合、このゲームとその運営委員会自体が公にさらされる。そんなリスクを負ってまでやる理由が”面白そう”とかそんな理由なワケがない。かなり怪しいな。
「それでですね、選ばれた10人以外の方たちは眠っていただいてる間に心臓内部に埋め込ませていただいた、これも作るのがものすごい面倒だった時限爆弾が20日後に爆発して、お亡くなりになります。この島から出た場合は爆発期限が繰り上がって、骨も残らず爆死します。運営側には向かうような行為をした場合も・・・まあ言わなくてもわかりますよね。一応全ての爆弾が不発弾ではないことは、同じロットのやつで人体実験済みです。」
ハイ脅迫罪確定!
「あと、生き残る方法としては協力する、それを裏切る、一人でいる、何でもありとなっております。そして、ゲーム開始時に”ギフト”と呼ばれる特殊能力が1人づつに振り分けられます。僕ら運営側も持ってます。振り分け方はそれぞれにあった能力が振り分けられる事になっております。また、同じくゲーム開始時になにか1つ、武器を渡されます。これの振り分け方はランダムです。」
待てよ、だったら銃とか刀とかを渡された人は銃刀法違反じゃねぇか。あ、いや、情状酌量ついてなんとかなるか。
「あと、皆様の耳の内部にこちらも作るの超大変だった超小型自動翻訳装置をつけさせて頂きました。説明はこれで終わりです・・・え?もう1つある?あ、それか!ありがとね!えー、もう1つ、説明することがありました。このゲームで生き残ることができるのは10人だけと言いましいたが、その10人はゲームが終了すると、ゲームやることを選択した場所に転送されます。文明の利器に感謝ですね。説明はこれで以上ですが、ご質問はありますか?あれば挙手でお願いします。」
さて、会場にいる人間の行動を把握、この状態で質問する奴は・・・よし。12人いる。んでこん中で最初に当てられそうなのは・・・前から・・・23列目、右から・・・3人目。
「では、ステージから見て前から23列目、右から3人目の人、どうぞ。」
よし。当たり。俺は生まれつき、対象の行動やクセから対象が次に取る行動を数秒先まで高確率で予測できる能力(?)がある。今回の場合は運営側だな。あと3秒で当てられたやつが質問する。2、1、0。
「この島はどこにありますか?」
「正確な位置はお答えしかねますが、日本海にあるとだけ言っておきましょう。他に質問はありますか?」
その後、”法律的にどうなのか”などのいろいろな質問が飛び交った。質問があることを示す挙手がなくなったところで、スピーカーからアナウンスが聞こえた。
「それでは、ここを出て廊下を右に曲がった一番奥にあるベッドルームに行ってください。腕輪に書いてある番号と同じ番号が書いてあるベッドを使ってください。明日からゲームスタートです。おやすみなさい〜」
アナウンスの言う通りに全員が進んだ先には、二段ベッドが並べられた部屋があった。俺の番号は169番、どうやら俺が使うベッドは右奥か。俺は二段ベッドに横たわった。
右腕の薄く光る番号「169」を指でなぞる。心臓のあたりが妙に重い。
これが爆弾のせいなのか、それとも緊張かはわからない。
ふと、俺は小さく笑った。
「結局、ただ寝ようとしただけで命懸けのゲームに参加させられるのか。合理どころじゃねぇな。」
明日からは、生き残るために誰かを殺す日々が始まる。
寝れるのは、これが最後かもしれない。
そう思った瞬間、意識は暗闇に落ちた。
20 days left…




