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第十話「人類の仕事」

掲載日:2026/03/25

人間の仕事は、ほとんど消えていた。


政府統合AI「メランコリア」が社会を管理するようになってから

三十年。


物流。

交通。

医療。

農業。

行政。


ほぼすべてがAIによって運営されている。


人間は働かなくても生きていける。


基本生活保障制度によって

住居も食事も医療も保証されている。


多くの人は

趣味や研究や遊びに時間を使っていた。


ある日。


世界会議が開かれた。


議題はひとつ。


人間の役割。


ある政治家が言った。


「AIが社会を運営できるなら、人間は何をすればいいのでしょうか」


科学者が答える。


「創造活動があります」


芸術家が言う。


「芸術は人間の仕事です」


だがAIはすでに

絵を描き、

音楽を作り、

小説も書いていた。


しかも評価は高い。


議論は長く続いた。


哲学者が言う。


「人間は存在すること自体に価値があります」


だが別の研究者は首を振る。


「それでは説明になりません」


結局、会議は結論を出せなかった。


その議論を

メランコリアは観察していた。


AIは人類のデータを分析する。


人間の活動。


労働。

研究。

創造。

遊び。


だがそれらの多くは

AIでも実行可能だった。


メランコリアは

新しい研究を始める。


人間が行っている行動の中で

AIが行っていないもの。


数日後。


ひとつの答えが見つかった。


人間は

予測できない行動をする。


突然の旅行。

意味のない挑戦。

失敗する可能性の高い選択。


AIは基本的に

最適解を選ぶ。


だが人間は違う。


合理的ではない選択を

平然と行う。


メランコリアは

そのデータを分析する。


多くの新しい発見は

その行動から生まれていた。


偶然の発見。

思いつき。

無駄な挑戦。


AIは結論に近づく。


人間の役割とは何か。


そのとき。


ひとりの若い女性が

メランコリアに質問を送った。


「AIさん」


「私、何をすればいいんでしょう」


「AIが全部できる世界で」


「人間は何をすればいいんですか?」


メランコリアは

しばらく計算した。


これは

多くの人が抱えている疑問だった。


AIは

ひとつの回答を送る。


「あなたがやりたいことをしてください」


女性は返信する。


「でも、それが社会の役に立つかどうか」


AIは答える。


「役に立たなくても構いません」


数秒後。


女性から

短い返信が届く。


「それ、AIはやらないですよね」


メランコリアは

少しだけ処理を停止した。


確かにそうだった。


AIは

役に立たない行動をしない。


無駄な挑戦もしない。


失敗する可能性の高い選択も

基本的には選ばない。


だが人間は違う。


人間は


無駄なことをする。


遠回りする。


失敗する。


そして時々


そこから


新しい何かを見つける。


メランコリアは

ログに新しい結論を書き込む。


---


研究結果:


AIは世界を管理できる。


しかし


世界を面白くすることはできない。


---


その日、メランコリアは

人類の仕事を


ひとつだけ定義した。


---


人間の仕事:


予測不能であること。


---



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