表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

ファントムブレイド — 第1章:ドラケンスポートの幻影

十三歳のカイ・ヴァレンハートは英雄の息子だった。

父ガレン・ヴァレンハート――「ハルニアの鉄の牙」と呼ばれた伝説の剣士は、ドラケンスポート西方の国境を守り命を落とした。


しかし英雄が残すのは、必ずしも幸せな結末ではない。

父の死から数週間後、母エララは権力を求めて子爵と再婚し、カイを聖ソレン孤児院へと捨てた。


裏切られ、忘れられ、独りとなった少年は誓う。

自分の道は自分で鍛える――英雄の息子としてでも、誰かの重荷としてでもなく、もっと大きな存在になるために。

「強さは与えられるものじゃない。鍛えるものだ…鋼のようにな。」


ガチャン!ガチャン!ガチャン!


古い鍛冶屋レイの工房に、金属を打つ音が響き渡る。火花が煤まみれの壁を飛び散る中、黒いフードをかぶった少年が、異常なほど正確な動きでハンマーを握った。


指なし手袋でしっかりと握る手。鋼製の前腕ガードに収められた脚。背中には誰も見たことのない、忍者刀ニンジャトウが一本。


「まだわからんのか、ガキ。」レイはパイプをくわえ、壁にもたれながら呟く。「なんでそんな剣を作る?直刃、鍔なし、黒鋼…騎士の剣じゃない、狩人の剣でもない…一体何だ?」


カイはハンマーを休め、汗を拭う。「…俺のものだ。」


レイは剣をじっと見つめた。鍛冶屋の目から見ても、光にかすかに輝く鋼は完璧なバランスで、軽く、しかししっかりとした強度を持つ。


「…まったく…」レイはひげをかきながら呟く。「俺も五十年鍛冶をやってきたが、こんな剣は見たことがない。」


カイの冷たい緑の瞳がレイを見据える。「本で学んだ。設計、冶金、古の鍛造技術。すべて比較した。シンプルなものに効率がある。」


レイは鼻で笑った。「そうか。いつも屋根裏で古い巻物に埋もれてると思ってた。人目を避けてるだけかと思ったよ。」


「…それもある。」


レイは微笑む。もう無理に聞かない。カイの冷たさは無礼ではなく、生き残るためのものだと知っていた。



孤児院の影


三年前、ガレン・ヴァレンハート、ハルニアの鉄の牙が西の国境を守って死んだ。数週間後、母は貴族に再婚し、カイをサン・ソレン孤児院に置き去りにした。


まずい食事、窮屈な説教、囁かれる「捨てられた」という言葉。九歳でレイの工房を見つけ、床掃きでもいいから入り浸るようになる。十一歳でナイフを作り、十三歳で、レイも舌を巻くほどの精密な刀を作るようになった。


孤児院は檻だった。工房は聖域。ある雨の夜、彼は何も言わず姿を消した。



ドラケンスポートの幻影


街は生きていた。商人が叫び、狩人が交渉し、車輪が石畳を鳴らす。


カイは影のように動く。フードを深くかぶり、マスクで顔を隠す。背中の忍者刀も、まるで影の一部だ。


人々は囁く。

「レイの工房のあの少年だ。」

「笑わない、常に読書している。」

「師範以上の鍛冶を知っているらしい。」


カイは無視した。言葉で生き残れるわけではない。



森の毒


ヴァーダント・ヴェイル森林で猪を狩った帰り、叫び声が聞こえた。茂みから二人が飛び出す。一人は黒鎧の巨漢、もう一人は銀髪の女性。足は腫れ、静脈は黒ずむ—ダークホーンドスネークの毒だ。


「子供!助けてくれ!」


カイはそっぽを向く。「…俺には関係ない。」


「死ぬぞ!」


歯を噛み、つぶやく。「…ついてこい。」



幻影の治療者


銀根の木。手裏剣で樹皮を切り、光る樹液を瓶に滴らせる。半分は傷へ、半分は飲む。数分後、女性の呼吸は落ち着く。


「助かった…」男性は安堵の声を漏らす。


カイは首を振る。「森が助けた。俺は場所を知っていただけだ。」


女性は弱々しく手首を掴む。「…ありがとう…」


冷たい瞳が彼女を見る。「…礼は言うな。」


瞬く間に、彼は影に飲み込まれた。



剣のささやき


夜、カイは忍者刀を作業台に置く。鋼は微かに震え、遠い雷のような音を立てる。


「…幻覚か…」


しかし、世界のヴェールは、ほんの少し動いたのだった。



第1章 終わり


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ