ファントムブレイド — 第1章:ドラケンスポートの幻影
十三歳のカイ・ヴァレンハートは英雄の息子だった。
父ガレン・ヴァレンハート――「ハルニアの鉄の牙」と呼ばれた伝説の剣士は、ドラケンスポート西方の国境を守り命を落とした。
しかし英雄が残すのは、必ずしも幸せな結末ではない。
父の死から数週間後、母エララは権力を求めて子爵と再婚し、カイを聖ソレン孤児院へと捨てた。
裏切られ、忘れられ、独りとなった少年は誓う。
自分の道は自分で鍛える――英雄の息子としてでも、誰かの重荷としてでもなく、もっと大きな存在になるために。
「強さは与えられるものじゃない。鍛えるものだ…鋼のようにな。」
ガチャン!ガチャン!ガチャン!
古い鍛冶屋レイの工房に、金属を打つ音が響き渡る。火花が煤まみれの壁を飛び散る中、黒いフードをかぶった少年が、異常なほど正確な動きでハンマーを握った。
指なし手袋でしっかりと握る手。鋼製の前腕ガードに収められた脚。背中には誰も見たことのない、忍者刀が一本。
「まだわからんのか、ガキ。」レイはパイプをくわえ、壁にもたれながら呟く。「なんでそんな剣を作る?直刃、鍔なし、黒鋼…騎士の剣じゃない、狩人の剣でもない…一体何だ?」
カイはハンマーを休め、汗を拭う。「…俺のものだ。」
レイは剣をじっと見つめた。鍛冶屋の目から見ても、光にかすかに輝く鋼は完璧なバランスで、軽く、しかししっかりとした強度を持つ。
「…まったく…」レイはひげをかきながら呟く。「俺も五十年鍛冶をやってきたが、こんな剣は見たことがない。」
カイの冷たい緑の瞳がレイを見据える。「本で学んだ。設計、冶金、古の鍛造技術。すべて比較した。シンプルなものに効率がある。」
レイは鼻で笑った。「そうか。いつも屋根裏で古い巻物に埋もれてると思ってた。人目を避けてるだけかと思ったよ。」
「…それもある。」
レイは微笑む。もう無理に聞かない。カイの冷たさは無礼ではなく、生き残るためのものだと知っていた。
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孤児院の影
三年前、ガレン・ヴァレンハート、ハルニアの鉄の牙が西の国境を守って死んだ。数週間後、母は貴族に再婚し、カイをサン・ソレン孤児院に置き去りにした。
まずい食事、窮屈な説教、囁かれる「捨てられた」という言葉。九歳でレイの工房を見つけ、床掃きでもいいから入り浸るようになる。十一歳でナイフを作り、十三歳で、レイも舌を巻くほどの精密な刀を作るようになった。
孤児院は檻だった。工房は聖域。ある雨の夜、彼は何も言わず姿を消した。
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ドラケンスポートの幻影
街は生きていた。商人が叫び、狩人が交渉し、車輪が石畳を鳴らす。
カイは影のように動く。フードを深くかぶり、マスクで顔を隠す。背中の忍者刀も、まるで影の一部だ。
人々は囁く。
「レイの工房のあの少年だ。」
「笑わない、常に読書している。」
「師範以上の鍛冶を知っているらしい。」
カイは無視した。言葉で生き残れるわけではない。
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森の毒
ヴァーダント・ヴェイル森林で猪を狩った帰り、叫び声が聞こえた。茂みから二人が飛び出す。一人は黒鎧の巨漢、もう一人は銀髪の女性。足は腫れ、静脈は黒ずむ—ダークホーンドスネークの毒だ。
「子供!助けてくれ!」
カイはそっぽを向く。「…俺には関係ない。」
「死ぬぞ!」
歯を噛み、つぶやく。「…ついてこい。」
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幻影の治療者
銀根の木。手裏剣で樹皮を切り、光る樹液を瓶に滴らせる。半分は傷へ、半分は飲む。数分後、女性の呼吸は落ち着く。
「助かった…」男性は安堵の声を漏らす。
カイは首を振る。「森が助けた。俺は場所を知っていただけだ。」
女性は弱々しく手首を掴む。「…ありがとう…」
冷たい瞳が彼女を見る。「…礼は言うな。」
瞬く間に、彼は影に飲み込まれた。
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剣のささやき
夜、カイは忍者刀を作業台に置く。鋼は微かに震え、遠い雷のような音を立てる。
「…幻覚か…」
しかし、世界のヴェールは、ほんの少し動いたのだった。
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第1章 終わり




