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数億年後の君へ  作者: 櫛名
第一章
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星空の下で


「ようやく見つけましたよ。セリフィア様」


丘の上、空は雲一つなく、風も吹いていない。まるで時間そのものが止まっているような、満点の星空の下。紅茶の入ったカップを傾け、優雅に楽しむセリフィアの横に現れた、若い女性が言う。


「見つかってしまいましたか」

「えぇ。大変でしたよ、探すのは」


セリフィアはやはり振り向かない。しかしそれは、声だけでそこに居るのが誰かは、初めから分かっているという証明でもあるのだろう。


「そろそろ何処にいるかくらいは話してもらわないと困るのですが......」

「忘れてました」

「そうだろうと思ってはいましたが......」

「見つけられたのです。それでいいでしょう?ミルシー」


何もよくはないと喉まで出かかったが、ミルシーは飲み込んだ。その代わりにこちらの苦労も少しは知ってくれと視線を飛ばすが、セリフィアはその視線を受けても紅茶を飲むことをやめない。


「まぁ......もういいです。ところで、何を見ているのですか」

「貴方も見ますか?」

「えぇ」


セリフィアが指を鳴らす。直後、空間が揺れ、投影されたのは二人の青年の様子であった。


「この二人は、人類ですよね?」

「そう」

「......今度は何をするのですか」


ミルシーは頭に手を当て、うつむいた。いつも突拍子の無い事で振り回されるため、ある程度、慣れてはいるがそれでも自重してほしい。


「いいえ、特には。ただ、隠れていても彼に声をかけられたので」

「え......」


そう静かに笑うセリフィア。その様子を見て、ミルシーは頭痛にも近い感覚を感じる。


「お願いですから、軽率な行動は慎んでください」

「分かってます」


返事をしてくれたのなら、多少は効力がある。そう信じて、ミルシーは何も言わなかった。


「ねぇ」

「なんでしょう?」

「君は、この二人のような関係の子はいるの?」

「ここまで仲のいい人物はいませんね」

「そう」


セリフィアの瞳が一瞬、揺れた。淡く、脆いものを見るように揺らいでいた。


その光景は表面だけ見れば、静かに紅茶を飲む少女という、何処にでもありそうな光景、しかし淡いその目は見た目以上に距離があるように思えた。



しばらくして、人類は一人になり寝室で眠りについた。その男性が風邪をひいていた事を見ていたセリフィアは、「これくらいは、しないといけませんよね」と言い、指を回す。


「本来であれば、あまり特別視をしてはいけませんよ」

「ええ、分かっています。これは私からのお茶会のお礼と謝罪です」


こういう事なら文句はないでしょう?と告げられ、青年に目を向ける。


青年は先ほどまで息が少し荒かったが、今は軽い寝息に変わっていた。

その様子を見てセリフィアは安堵したような素振りを見せ、投影を解除し、お茶菓子に手を伸ばした。


紅茶を飲み、星空を見るセリフィアを見て、ミルシーはセリフィアに一礼し、紅葉の葉が落ちるその場を立ち去ることにした。セリフィアの捜索は最優先ではあるが、他にもやることがあるのだ。



セリフィアに背を向け数歩、歩きだす。その背後でセリフィアの「一人のために魔法を使ったのは、いつ以来でしょうね」という独り言を聞いて、もう一度釘を刺しておいた方が良いのでは?と、後ろを振り返る。


しかし彼女は何も答えるつもりも、聞くつもりもないのか紅茶を机の上に置き、夜空を見上げながら目を閉じていた。


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