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数億年後の君へ  作者: 櫛名
第二章
33/37

帝国の裏切者


律達三人は道中に居た啓示派の戦闘員を掃討しながらポイントAZに移動していた。途中第二班と合流し共に進んでいたのだが、明らかに様子が違う道が目の前に出現しその場で全員周囲を警戒しながら立ち止まる。


白い柱に大理石の下地。先ほどまでの工場のような道とはまるで違う、まるで神殿の一部。もしくは大教会の廊下を模したような作りをしている。


「律少将どうやらここがポイントAZらしいぞ」

「そうなのか?なんかやけに近くなかったか」

「そ、それはお二人の進むスピードが速すぎるだけでは......」


息を切らしながら半目でフリンズそう訴えかけてくるが、残念ながらそこまで飛ばした記憶はない。むしろ人数が増えたため速度は落としていたはずだ。


「ひとまず一班が来るまで待つか。少ししたら来るだろ」

「そうだな、補充したいものもあるし」

「そこにいる班長に要求してくれ、大抵のものは持ってるはずだ」

「分かった」


とぼとぼと歩いて班長の元へ向かうルージュ。その後ろ姿を見つつ、律も装備を確認し一息つく。


「小隊長、少しよろしいでしょうか」

「何かあったか?」

「啓示派から押収した書類をまとめていたのですが、こちらの書類は危ない匂いがしまして。お目通しいただけないでしょうか」

「分かった」


重々しい声で語りかけてきた小隊員に視線を向け、差し出された二枚の書類を受け取り文章を読んでいく。


書類の内容は魔道砲の開発に関する書類のようだ。こんなものを残しておくなんて、裏切者を特定してくれと言っているようなものだ。どうして残しているのか、疑問すら感じる。


一枚目を読み終わり、二枚目に突入したのだが、そこで先ほど見ていた動力炉の開発情報提供者名を発見する。


「ロス博士。なるほど......。それなら納得がいく」


ロス博士、3年ほど昔ではあるが帝国大規模兵器開発部に在籍していた教授だ。現在は軍の研究室で新型兵装を担当していただろうか。


「確かにこれは危険でしかも重要な証拠だ。厳重に保管しとけ、あ、その前に......。ルージュ殿来てくれ」


ルージュは律の呼びかけに反応してこちらを向いて戻ってくる。


「どうした大声でお前らしくないぞ」

「物が物だからな、これ見ろ」


ルージュにロス博士の名前が入った紙を渡す。彼は食い入るように書類に目を落とし読み終えたのか目を閉じて書類を小隊員に渡す。


「......理解した。これは丁重に保管してくれ」

「分かりました。失礼します」


二枚の書類を持ち、箱に入れる姿を確認した後。律は思わずため息を着く。


「やっぱり科学者って何でもできるほうが楽しいと感じるのかね」

「まぁ、それはあるかもしれないが、別の理由じゃないか?」

「別の理由?」

「例えば、俺一人が手を貸したところでなんの心配もないだろうっていう危機意識の欠如とか?」

「なるほど」


確かにあるかもしれない。母数が多くなればなるほど個人の力は小さく見えてしまう物。科学者がそれでは困りものだが、どうせ作れないから大丈夫、とでも思ったのだろう。


確かに普通なら大丈夫かもしれない。しかし相手は啓示派、人権なんてガン無視、人的資源が少なくなっても湯水のように使う連中なのだ。侮ってはいけない。


「まぁいい、ところで何を要求してたんだ?」

「え?あぁ、グレネード」

「......なぜ」


恐らくあと残っているのは司祭と取り巻きだけだ。戦闘員はほぼいない。


「一応聞いておくが、使用用途は?」


顔を引きつりルージュの方を向くと、彼はこれ以上ないほどの満遍の笑みを振りまいていた。


「少し夢だったんだよな、啓示派の少し偉い人にグレネードを全力投球するの」

「あぁ、そうですか......司祭だったら自由にしていいぞ」

「おう」


なんとも物騒な夢である。しかし半ば強制的に連れてきたため、卑下にもできない。何とも扱いづらい暴走者だろうか。そうルージュの扱いを悩んでいると一班の班員が姿を現す。


「律少将、一班到着しました」

「......分かった。準備は出来ているか?」

「はい、すでに完了しております」

「じゃあ、行くか」

「待っていたこの時をっ」

「はいはい」


腰にグレネードを携えつつ、準備運動をするルージュを横目に律は動き出す。


「さて小隊員諸君、最後の仕事だ。準備は出来てるよな?」

「もちろん」

「さっさとこんな気色悪い場所抜け出しましょう少将」

「いい加減眠いですぜ」

「分かった分かった」


それぞれに文句を言う小隊員、すでに我慢の限界だったらしい。ここに集まってからそんなに時間がたっていないのだが、実にせっかちなやつらである。


「ルージュ殿いくぞ」

「悪い悪い」


ルージュは律の左横に立つ。通常彼は小隊員の前で肩を並べることは無いのだが、今回は気持ちがどうも先行しているようだ。


「最後に確認だ。司教の場合は捕虜に司祭の場合は、まぁ好きにしてくれ」

「話が早くて助かるぞ」

「言っとくが早い者勝ちだからな」

「つれないな......」


ルージュが肩をすくめて半目でこちらを見てくるが、あえて知らぬふりをする。


「では小隊員諸君、さっさと終わらせて帰るぞ」

「「了解」」


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