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数億年後の君へ  作者: 櫛名
第二章
32/37

違和感


「妙だな」

「あぁ、そうだな」


啓示派を掃討しながら三人は先に進んでいたが、律とルージュは違和感に襲われていた。それは未知への不安というよりも相手に対する半ば呆れに近い感情だったのだが、それでも二人は冷静に周囲を警戒していた。


「何が妙なのですか?」


不思議そうな表情と共に顔色を伺ってくるフリンズ。どうやら彼は分かっていないようだ。


「敵の配置が雑過ぎる。異常なほどに」

「単純というか、カモフラージュ目的とも思えない。まったくの素人が配置したような感じを受ける」


戦闘員の配置、角に人を置いたり上にスナイパーを置いたりするのはまぁ、理解できる。しかしそれはルージュの魔法で迎撃可能であり無駄である。普通は魔法対策用に何かしらの防御手段を持っているのが普通なのだが、一撃で終わっている様子を見るとそれも持ってないと暗に予想できてしまう。


「まさかとは思うが、ここまで攻められるとは思ってなかったなんてないよな」

「いや、いくら何でもそんなことは無いだろ」

「そうだよな......。ということはこの先に罠があると考えたいんだが」


フリンズに視線を送り、探知機を使い調べさせる。


「この探知機で探れる範囲内では、ないですね......」


......なんなのだ、この拠点は。


侵入者対策用の罠はほぼなく、戦闘員も貧弱、装備もろくにつけていない。外面だけ頑丈な鉄の山としか思えなくなってくる。


律は頭を抱えため息をつく。思わずその場で目を覆いたい気持ちが先行したが、直前でルージュがこっちに来てくれと、手を振って合図をしているのを目視したため、急いでそちらに向かう。


「なぁ律少将。この道魔道砲のメインシステムにつながる通路じゃないか?」

「まさかこれが原因でトラップなしなのか?」

「そう考えるのが妥当ですね。そうでなければただの通路ですし」

「なんかそういう感じでもなさそうだが、ひとまず行くか」

「分かった」

「承知しました」



□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇



大量のパイプが天井に張り付いている通路を抜け、三人は魔道砲の基幹部分。制御室へ足を入れる。


「ルージュが言った通りメイン制御室だな」

「あぁ、間違いない。しかしなんだこの光景、流石に俺でも引くぞ」

「そうだな」


目の前の光景は、動力炉本体と魔力吸収装置。メインシステムとそこまでは普通の光景だ。しかし啓示派の研究者や専門員らしき人影はなく、その代わりに足元には武装していない子供や若い男女、老人に至るまで多くの人が倒れていた。


「まさかな......」


その場に倒れていた者達の脈を複数確認するが、皆一様に冷たく脈も動いていなかった。


「死んでるな。多分ここに倒れている全員」


律の一言に、フリンズは驚愕の表情を浮かべ目を見開く。


「なんてむごいことを......」

「ここは啓示派の拠点だぞ。これくらいは平気でする」

「あぁ、そうだな」


死体に外傷はなく奇麗なまま、恐らく眠らされた状態で無理やり魔力を吸い取られたのだろう。魔道砲の発射が妙に早かったのも、これで説明がついてしまう。


律は視線を死体からルージュに向ける。


「ルージュ殿、一応聞くがお目当ての人物はいたか?」

「お前、なんでそう言うところ察しがいいかな......」

「わざわざ情報部が出向いてくるんだ、おおよそ要人の子供でも誘拐されたんじゃないのかとな」

「お前に隠しても無駄か、まぁ具体的には言わないがそうだ。要人の子供が一名誘拐されている」

「大丈夫なのかそれ...」

「俺の知ったことじゃない。しかし皇帝は人事の変更はしなかった。つまりそういうことだ」


重々しいため息を着きながら子供の顔を確認していくルージュ。どうやら皇帝の決定に納得がいってないようだ。


「よし、ひとまず死亡は確定してないようだな。まぁ当然と言えば当然だが」

「そこまで啓示派もバカではないだろ。どうせ書類関係も全回収するんだろ?」

「もちろん、フリンズ殿も手伝ってくれるか?集めて持ってくるだけでいい」

「承知しました」


部屋の中を警戒しながら周り書類を全て回収する二人。その姿を見つつ律は動力炉本体に目を向けていた。


(これ、どう見ても試作2号機がモデルだよな......。なんでこれを啓示派が作れるんだ?)


一号機ならまだしも、二号機は帝国が開発を白紙にする前に作った最後のモデルだ。啓示派の技術力ではどうあがいても作れないはずの物。明らかに異物である。


「どうした?律少将」


手ぶらで律の肩に触れながら話しかけるルージュ。全く気付かなかった、想像以上に考え事に浸っていたようだ。


「お前書類は?」

「もう全部回収したぞ、圧縮魔法でポッケの中に入ってる」

「便利なものですね。圧縮魔法、僕も後で使えるようにしておきます」


顎に手を当てながら真剣な表情でフリンズはそう言う。どうやら真面目に覚えるようだ。気軽に使える人物達は羨ましい。


「魔法っていう便利な物。俺的には少し加減をしてもらいたいんだがな」

「お前魔法使えないもんな」

「......そうだな、悲しいものだ」


実際はセリフィアのおかげて魔法自体は使えるようになっているのだが、まぁ黙っていてもいいだろう。わざわざ言いふらすことでもない。


「でもその代わり魔法切れるじゃないか。そっちも十分反則だと俺は思うぞ」

「そうですよ。その能力で皇帝とタイマン張れるじゃないですか、十分反則です」

「そうは言うけどな......。日常の快適さが、なぁ......」


魔法が使えるのと使えないのでは、楽ができる部分と出来ない部分が多すぎる。実際に使えるようになってからそれはますます実感しており、もしセリフィアに魔法を取り上げられたら生活がめんどくさ過ぎると思うことは間違いないだろう。


「まぁいいさ。グダグダ言っても変わらない、そろそろ一班と二班が大体攻略してるだろ。ルージュ通信頼めるか」

「分かった、少し待ってろ」


ルージュが杖を取り出し魔法で各班長につなぐ準備を始める。


ルージュの腕を持ってしても杖を使わないといけないという制約があるが、即時情報通信はそれを補うだけのメリットがある。それにこの魔法が使えるだけでも軍内では特別給付がつく。一般兵士から見れば羨ましいものだろう。


「準備できたぞ、律少将」


ありがとうと一言送り、杖の近くによる。


「こちらメインコントロール応答せよ」

「一班了解」

「二班了解」


返事をする各班長、どうやら敵の攻撃を受けた間抜けな班長はいなかったようだ。


「状況を説明せよ」

「一班、すでに地下地上含めた敵拠点の4割を掃討完了。ネズミは逃がしておりません」

「二班、こちらもすでに3割の掃除を完了しました。ネズミはおりません」

「結構。では全員その場の掃討が終わり次第、ポイントAZに集合せよ。残りはそこだけだよな?」

「あぁ、彼らの説明が正しければそこのみだな」

「では各員、健闘を祈る。あ、一つ言い忘れていたがもしも班員で間抜けが出た場合は、その班長奢りで後日祝賀会を開催する。破産したくなければ十分留意せよ」

「一班了解」

「二班了解」


これで少しはやる気も出るだろう、集まった時が非常に楽しみだ。


「なんか班長達の声揺れてなかったか?」

「気のせいだろ、間抜けなんているわけがない」

「まぁそうだろうけど......」

「なんというか毎回班長達大変そうですね......」


呆れたような感心したような視線を二人は向けてくる。ルージュはともかく、フリンズは見慣れているはずなのだが何故だろう、視線が少し痛い。


「フリンズなんだその視線は、もしかして班長になりたいのか?」


フリンズの視線を540度くらい歪曲して飛ばしてみると、頭をすごい勢いで横に振り否定してくる。


「それは断固お断りしますね」

「ありゃ......まぁフリンズはまだ入ったばかりだから当面先だ。安心しろ」


流石に入隊直後の人物に班を任せることは無い。実力で上がって来ていてもある程度、班員の了承が得られなければ団体行動も無理だろう。


ただ、まぁそれでもいつか来るかもしれない。それがこの小隊なのだが、彼ならなんとかするだろう。


「律少将や、そろそろ行かないか」

「それもそうだな、さっさと行ってさっさと終わらすか」


正直もうすでに帰りたい欲は大きいのだが、最低限給料分の仕事はしなければならない。まして今回は責任者でもあるのだ、最後までやらざるを得ないだろう。


ルージュとフリンズの準備が完了したのを確認してから前を向く


「んじゃ行くか、まぁ司祭が居るくらいだろめんどくさい」

「まぁ、司祭ならいいんじゃないか司教なんて居たら捕虜にしないといけないし」

「それはそうなんだが、大体ろくでもない奴だからなぁ......」

「仕方ないだろ仕事なんだから、我慢しろ」

「はいはい」


ため息を着きつつ、魔道砲の制御室を出る。正直乗り気ではない、それどころかもう部下に全て丸投げしてもいい気すらしてきた。


確かに司祭ならまだいい、その場で首を跳ねて終わりだ。しかし魔道砲の件と言い、この外面だけは立派な拠点と言い、司祭が管理しているのは少し規模として違和感を覚える。


「どうせ、こういう時のいやな予感は大体当たるもんなんだよな......」


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