白い影は唐突に
「ひとまずケーキは保存室に置いておくか」
雪がぽつぽつと降る外を見ながら、律は台所でセリフィアとの夕飯の準備をしていた。
「こんな日はこれが食べたくなるよな」
今日の献立はグラタンとパン、少々量が少ないかもしれないが十分と言えば十分だろう。セリフィアがどの程度食べられるかはまるで未知数だが、前回の彼女の表情から察するに足りていないということは無いと思われる。
(というか、そもそも神霊種は食事の必要があるのだろうか......)
ふと浮き出た疑問にふむ、と首をかしげながら鶏肉や牛乳、バターなど必要な物を持ちながら律は調理台に向かう。
「にしても、セリフィアと会う日は毎回雪景色だな」
彼女のことだ、もしかしたら意図的に雪を降らせているのではないだろうか。むしろそうであっても何ら不思議がないのがおかしいのだが、少し疑ってしまう。
「何ともおかしい話だな」
「何がおかしいのですか?」
......?
律は聞き覚えのある声がしたリビングへゆっくりと目を向ける。するとそこには白髪の髪をなびかせる少女の姿がいつの間にかあった。
「おじゃましますね」
「......すごいナチュラルにあらわれるな」
この上なく自然に現れたセリフィアに呆れたような、感心したような半目を思わず向けるが、彼女はその視線を望んでいたのか苦笑する様子を見せる。
「なんですか、派手な演出でも出した方がよろしかったのです?」
「いや、それはごめん被る。何をされるか分かったもんじゃないからな」
彼女の派手がどこからかは分からないが、どちらにせよろくなものではないのは確かなので非常にやめていただきたい。
セリフィアは律の反応に満足したのか、一瞬微笑み暖炉の傍から浮いて台所に視線を落とす。
「まだ終わっていませんね」
「そうだな、悪いが少し待っていてくれ」
「分かりました。暖炉近くの椅子お借りしますね」
「それは構わないが、いつも通り浮かないのか?」
浮いていた方が自分の体に合うと思うのだが、不思議なこともあるものだ。と不思議そうに見ていると、視線に気づいたのかセリフィアはこちらを向いてただ一言「えぇ」と返す。
どうやら一概に楽という訳ではないようだ。
「暖炉の火に一応気を付けてくれ、椅子が燃えたら弁償してもらうからな」
「私を何だと思っているのですか。安心してください」
不満そうな表情と共に、セリフィアはジト目を飛ばしてくる。おそらく抗議の意思だろうが、その表情によってさらに幼く見えてしまい、思わず口元が緩んでしまう。
「まぁ、心配はしてないさ。一応というものだよセリフィアさん?」
「そうですか」
律がわざとらしく肩をすくめれば、セリフィアは小さなため息をつきつつ暖炉の方向にすーっと向かって行く。様子を伺っていると椅子に腰かけ暖炉の方に足を向けたと思えばにこやかな笑みを浮かべる。
(今日は少し機嫌がいいな?)
おそらく本人は無意識なのだろう、しかしあまりにも分かりやすい。今までこんなことがあっただろうか、何か恐ろしい事が起きる前兆でないことを祈りたいものだ。
「とりあえず、グラタンを完成させるか......」




