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数億年後の君へ  作者: 櫛名
第二章
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啓示派


セリフィアと約束をした翌日。律はいつも通り出勤するや否やすぐに大臣秘書官に呼ばれ、会議室に移動を促される。たまにあることではあるが、それでもなかなか慣れることではない。しかしだがうだうだ言っても変わらないであろう。


律は秘書官の誘導に従い会議室に向かったのだが、秘書官に通されたのはいつもの見慣れた会議室ではなかった。



「やけに機嫌悪いな律」

「お前この状況でよくそれ言えるな」


第一会議室、威厳と歴史を感じさせる重要な部屋でのルージュの軽口に、律は思わず周囲の顔色を伺う。実際律の機嫌が悪いのは正しく、それはこの部屋に事前通告なしで通されたからなのだが、それにしたって今それを言うかと思ってしまう。


目の前には財務大臣、その右隣りには総務大臣、左隣には防衛大臣の国家三大臣。対してこちらは律を中心に、情報部代表ルージュと、諜報部代表の人物が一人。


「なんでよりによってこのメンツなんだよ......。何も知らされてないぞ」

「仕方ないだろ上からの指示なんだから」


それはそうだが......ルージュが来ること自体、つい先ほどまで知らなかったのだ。どうせ情報部の指揮官が仕掛けたのだろう。相変わらず食えない男である。


律は頭を抱え、ため息をつく。その様子を見たのか財務大臣が少し笑い律に対して、孫を見るような目を向ける。


「まぁまぁ律殿、我々は気にしないので」

「そうですぞ、有意義な会議が出来るのならだれが来ても問題などない」

「そう言ってもらえると非常に助かります」


こんなおちゃらけな奴でも仕事自体は出来るのだ。代表代理としても問題ないだろう、そう信じてルージュをチラ見すると、ルージュは視線に気づいたのか親指を立ててくる。


(本当に大丈夫か......?)


何とも言えない不安に駆られるが、今更後戻りはできない。


「ではこのまま始めようか、律殿」

「えぇ......。そうですね」

「では皆様お手元の資料をご確認ください」


総務大臣の言葉に全員が資料をもう一度確認する。会議室に入る際に配られ一通り目は通しているが、それにしても中々に分厚い。


「では説明させていただきます。先月、律殿が管理者を討伐してから東門側で啓示派の活動を確認。どうやらまたあの道化師どもは何かを企んでいるようです」

「それについてはこちらからご説明させていただきます」


手を挙げたのは諜報部、見ない顔だがここに居るということは元々もかなりの立場なのだろう。


「啓示派の目的は、東門地下に連絡通路を作成し、検問を必要としない通路を作ることの様です」

「なるほど、んで指揮官はどいつなんだ?」

「そこまでは分かっておりませんが司祭の様です」

「司祭...。確実にまだ何かありますな......」


確かに何かがおかしい、そんな助祭にでも任せればいい事を何故、司祭がやっているのか。しかし陽動というには司祭は大物......。アンバランスだ。


「えぇ、ですがそこは情報部から土産があると聞いております」

「ほぉ?土産とな?ルージュ殿説明を」

「分かりました。現在情報部にある啓示派の拠点座標を確認、整理しておりましたところ、東門からさらに東に行った山のふもとに、啓示派の大規模拠点があると推測、また情報部の偵察部隊が確認したところ400人規模の人影を確認。地下もあると思いますので潰しに行く価値は大いにあるかと」


本当にルージュなのか?いつもふざけた姿しか見ていない分何故だか気持ちが悪く感じる。


「潰す価値が十分にあることは分かった。先ほどの東門はいったん置いておこう、拠点が優先だ」

「そうだな、最悪コンクリートを流して生き埋めにしまえばいいだけだ。どうとでも調理できる」


いやそれはそれでどうなのだ?


律は思わず防衛大臣に、生暖かい目を送ってしまう。防衛大臣は「言い過ぎたな」と咳払いをする。


「ともかく、問題は誰が行くかなのだが......」


相手の戦力を考えれば中途半端な戦力ではむしろ、返り討ちにされかねない。ここは多少の犠牲を覚悟しても精鋭を送る方が得策だろう。しかしそれでは新兵がいつまでたっても育たない。やはり新兵も入れるのだろうか......。


律は周囲を確認する。しかし律の考えとは裏腹に、ルージュや各大臣はすでに誰を行かせるかを決めているようで一様に律の方を向いていた。


「まさか俺ですか?」


目を見開き、引きつった笑顔で言葉を発すると、全員にこやかな笑顔を返してくる。


(これは、はめられたな......)


律はルージュを睨む。しかし意に返さぬ様子でまた、親指を立ててくる。


どうやら、ルージュは知っていらしい。恐らくこの会議が始まる前に一度集まっていたのだろう。結論が決まっているなら、代理人がいてもおかしくはない。それにルージュを配置することで逃げ道も潰しているのだろう。


律は額に手を当てため息をつく。


「良いですけど、新兵とうちの兵士も持っていきますからね」

「新兵はどの程度持っていきたいんだ?律殿」


流石に最低四百人規模の拠点だ。内部戦力はその倍と見積もった方がいいだろう。取り逃すことは無いと思うが、それでも最低1000は欲しい。しかし練度なども考慮するとそれ以上欲しい物だ、倍では足りない。


「新兵は3000程度要求します。俺たちが打ち漏らした時の補助要員と周囲の包囲用です。あとは実戦を見てもらうのが目的でしょうか。若手を育てなければいけませんし」

「ごもっともだ。ではそれで確定で行こう」

「では次に、作戦決行日程はどうするのかね律殿」

「そうですね。四日後でどうでしょう」

「だいぶ早いのだな。ルージュ殿問題はなさそうか?」

「えぇ問題はないと判断します。諜報部的にはどうです?」

「こちらも問題ないと判断します。早ければ早いほどいいですしね」


どうやら話しはまとまったようだ。かなり融通を聞かせてもらった気もしなくはないが......あちらが先に指揮官を決めていたのだ文句は言うまい。


「では防衛大臣としてここで命令をだそう。玖重 律大佐、四日後に啓示派の拠点を襲撃し、もし司教以上の者が居た場合には、捕縛拘束し持ってこい」

「承知しました」


このやり取りは久しぶりだ。ここ最近は皇帝印の命令書によるの指令が多かった、何とも新鮮な気持ちである。


「ともあれ、別にもってこれなそうであればその場で始末してしまっても構わん。どうせゲスだろうしな」


大きな笑い声をあげる防衛大臣。その様子に律やルージュ、財務大臣に至るまでそれ言っちゃいます?という半目で見るのであった。

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