取引
「そういえばセリフィア、お前って魔法の師とかいるのか?」
夕飯の片づけが終わり、律は一息つくために暖炉近くの椅子に座って、セリフィアに問いかける。彼女は珍しく椅子に座って本を読んでおり、いつもとは違う不思議な光景が広がっていた。
いや、正確には浮いているのが当たり前すぎて違和感があるだけなのかもしれない。
「いえ。いませんよ」
「あれだけのことが出来て?」
どれだけ努力をしても使えなかった自分とは正反対である。やはりこれが才能の差なのかもしれない。
「そもそも人類の魔法とは違うのですよ。私が使う魔法は魔法式というめんどくさい手順を必要としませんし」
「そうなのか......」
「と言いますか。貴方、魔法を切れるのに何でそんなに魔法関係の知識が乏しいのですか?」
「いや......俺魔法使えないし」
「え?......あぁ。なるほど」
セリフィアは律を一瞬凝視し、何かに納得したのか口を少し開ける。
「何か分かったのか?セリフィア」
「えぇ。分かりましたが、教える義理はありません」
確かにそれはそうだ。セリフィアは律が魔法を使えなくても、困ることは何もない。さらにあの力だ、そういった相談事も多く引き受けているのかもしれない。
しかし律はどうしても理由が知りたかった。そのため真剣なまなざしで椅子に座っているセリフィアを見る。
「そこを何とか教えてくれないか?」
「どうしてそこまで使いたいのですか......。大体貴方は魔法くらい使えなくても不便ではないでしょう?」
律はセリフィアから一瞬呆れた視線を返される。やはりだめらしい。ここまで拒絶するのならそれ相応の理由もあるかもしれないが、言葉を鑑みるにただ説明をするメリットがないだけかもしれない。ならばそれ相応の物で釣るしかないようだ。
「なら取引といかないか?」
「取引ですか?」
「あぁ、セリフィアからは俺が魔法を使えない理由を出す、そしてできれば魔法を使えるようにする。俺からは君がこの前惹かれていたケーキ屋の新作を2つ提供しよう。」
「なるほど......考えましたね。ですがその場合でもいくつか変更点があります」
何を変更するのかは分からないが......。ひとまずテーブルには立ってくれるらしい。
「私は貴方の魔法を使えない理由を、正確には分かりません。しかし使えるようになる方法は分かります。そして強制的に使えるようにもできますが、それをする場合は追加の報酬を請求します。それでよろしいなら取引に乗りましょう」
どうやらセリフィアにも、正確には分からないらしい。しかし魔法が使えるようになるというのは大変魅力的だ。
「それで構わない」
律は即断する。その即断ぶりにセリフィアは少し驚いた表情をし、手を口元に当てた。
「取引成立ですね」




