日常とは
「いよっ」
夕暮れ時、律は仕事が終わり小隊長室を出ようと荷物をまとめていたところ、よく知っている声に引き留められる。
「ルージュ、お前仕事は?」
「今終わったところさ、途中まで一緒に帰らないか?」
「それはいいが......今日はついでに買い出しに行く予定だぞ」
「おっいいねぇ、俺も切らしている物があったからちょうどよかった。一緒に行こうか」
律の言葉に軽く乗るルージュ。ここまですんなり乗ると、それはそれで違和感がある。そのため律はルージュに怪しむような目線を送ったその視界の端で、ルージュの隣に誰か立っていることに気づいた。身長はルージュより少し高いだろうか。眼鏡越しの視線も鋭く、整った緑髪の青年は、その立ち姿だけでエリートの称号に相応しい雰囲気を醸し出していた。
「ルージュ。隣の人は誰だ?」
「ん?あぁ、彼はカーター・フォルテ。お前が心配していた俺の部下だぞ」
「初めまして律様。ルージュさんの部下、カーター・フォルテです。」
「あぁ......お疲れ様です」
律はフォルテを見て憐れむような視線を送る。そしてその視線を感じたのか、フォルテは少し引きつった笑顔を律に向けた。やはりルージュは部下に無理をさせているようだ。
「何かあれば何でも言ってくれ。」
「おい、俺には絶対そんなこと言わないだろ」
「お前は別だからな」
律は、ルージュの「まぁそうか」という言葉を聞きながら小隊長室を出る。少し寒く、夕焼けの色をした通路で二人の様子を見ると、もうすでに退勤してるようで片手に荷物を持っていた。
「情報部に寄る必要はなさそうだな」
「おう、とりあえず買い出しだったよな。いつもの街か?」
「そうだな。フォルテさんは?」
「そうですね、私も同行します。あと、呼び捨てで構いませんよ律様」
「ん?そうなのか、じゃあ俺の名前も呼び捨てで大丈夫だぞ」
「いえ、私はあえてつけさせていただきます。そうしないと後々何か起きそうなので......」
その含みの回答に、律は首をかしげるがルージュが一時期、周りから冷たい視線で見られていたという現象を思い出し、「あぁ......」と思わず声に出てしまった。
ルージュは二人のぎこちない空気を察したのか、律の腕を引っ張る。
「とりあえず、行こうぜ」
「それもそうだな、って......ちょ、転ぶって」
「このくらいで転ぶようなたちじゃないだろお前」
「うっせ、おら、放せっ」
ルージュと律のやり取りは、まるで男子学生のように見えたのだろう。くふっと、その光景を見ていたフォルテが笑っていたのだから。その笑っている様子を見た二人も、何かおかしく感じ共に笑ってしまった。
ひとしきり笑い終わったあとで、律は一歩前に出る。
「んじゃ、ぼちぼち行こうか」
「んだな」
「そうですね」




