時代背景説明(任意)
※これは歴史背景であり。各種族の解説です。
物語を読み進める上では、必須ではありません。
気軽に楽しみたい場合は、次の話から読むことをお勧めします。
惑星識別番号 01101111 01101110 01100011 01100101 00100000 01110100 01100001 01101100 01100101
解説者 e7 ac ac e4 ba 8c e5 89 b5 e9 80 a0 e8 80 85より
この星には三つの種族がいる。
一つは神霊種。彼らは総数72体のまごうことなき絶対者である。一体一体が圧倒的な武力と防御力を有し、軽い一つの島くらいであれば、簡単に作り変えることが出来る絶大な魔力を持っていた。気性は穏やかで来るものを拒まない、しかし火の粉が舞ってくるときは、その力を出し惜しみすることは無い。まさに仏と鬼を合わせた性格とも言えるだろう。
次に精霊種。彼らは大地を、空を正常化し、星そのものの均衡を保つ役割をしている。一体一体の力こそ弱いものの、数千、数万の数が合わされば人類には永遠に到達しえない大魔法をも使うことが出来る。何とも面白い種族だろうか。
最後に人類。この星の人類はそれなりに科学技術が発展しており、魔道具を作る以前は産業革命を経て、近代化に成功していた。他の星の人類と比べれば争いごとも比較的少なく、平和と言ってもいいだろう。
各種族は国家規模においては、相互不干渉を確約しのどかに暮らしていた。戦争も起きることはなく政治的腐敗が起きたわけでもない。理想郷に近い環境といっても、過言ではなかっただろう。
しかし、そんなのどかなこの星に突如現れた異質な存在管理者。彼女たちの来訪により自然に廻っていた軸が傾き始めてしまったのだ。
彼女たちは星の外から来ており、この世界。もしくはそれより大きな括りから捉えても、その名に恥じないほどの絶対的な武力と権限を有していた。
曰く、帝国を作り初代皇帝に知恵を授けた。
曰く、精霊種や神霊種でも救えない瀕死の大地をその場で癒した。
曰く、列強と呼ばれた、絶対的な国家を一夜にして滅亡させたなどなど。
どれをとっても国家や神霊種でさえ、冷や汗が止まらない。現実離れした偉業が伝承として伝えられている。
通常、伝承は伝承であり、そんな超常的な存在が居るわけがないと思うだろう?
だが、管理者が存在し、伝承に記載されているくらいは容易くできてしまう事実は、この星に生きている者なら誰もが知っていた。
何故か......。
理由は明白。この星は、管理者陣営と戦争状態にあるからだ。
通常ならばどのような手段をもってしても、そのような規格外と戦いたくはないだろう。いくら無知だとしても伝承によっては、目の前で起きたことをそのまま書いたと記されている物もある。最低限の警戒はして、不干渉とするのが一番だ。
しかし、戦争は起きてしまったのだ。
なんと悲しい事だろうか。人類はおろか神霊種や精霊種すら何故、それを止められなかったのか。そう思うだろう?
ではその原因を紐解いていくために、この世界の歴史を説明していこう。
ーー歴250年(統一歴1年)人類は、統一国家クエイシア帝国を建国。
初代皇帝は、一代にして人類初の統一国家を築いた暴君であった。
統一言語の制定、貨幣の統一など、統一国家に不可欠な要素を補いつつ、帝政なのに言論の自由を保障し評議会を設置するといった、かなり意外性のある統治をしており。帝国臣民からはかなり評価が高い皇帝であった。
しかし、正当な手段では無理な課題。主に、土地の条件問題などは力業で解決している記録があり、やはり暴君と言われるだけはあったらしい。
その他にも宗教だけはどうやら因縁があったようで、旧宗教の重要文化財や聖地などをひとつ残らず破壊し、宗教を丸ごと作り替えたなど、とても独裁者らしい記録もある。
その影響で、僅かではあるものの一部人々からの憎悪は非常に大きく、後に啓示派と呼ばれる組織が作られ、国内外に潜む最大の闇となってしまった......。
神霊や精霊は、人類が一つの国家に集まることに拒否感を示さず。むしろ、今までのように多くの王や大統領などに挨拶をしなくて楽と、冗談を交えて笑っているくらいであった。
統一歴、一年の終わりごろ、突如として管理者と自称する者たちが人類や神霊、精霊の前に現れた。少女の形をとった二名の管理者達は、それぞれの種族を見てわずかに微笑み。各種族の代表者をその場に集めるように要求した。
通常ならそんな不明瞭な存在に合うことなど、各種族の代表者はしない。しかし、偶然その近くでアイスを食べていた神霊種が彼女たちの異常さにいち早く気づき、その神霊種の一声で各種族の代表者は会うことに決めた。
彼女達は各代表者と会談し、有益な時間を送っていた。管理者が聞いてきたのはこの星の知能を持つ種族の数や互いの種族をどう思っているかなど、多岐にわたった。
時間がたち、一通り知りたいことを知れたのか。彼女たちは椅子から立ち上がり、右指でパチンと一回指を鳴らして「次は100年後にまた来ます。」と言葉を残し、消える。
各代表者はその様子に困惑しつつも、「不思議なこともあるのだな」と互いに肩をすくめて領地に帰っていったのだ。
その後、分かったことであるが神霊種にすらお手上げと言われた、複数の問題が解決しているという報告が各種族の代表者の頭上に雷鳴となって轟く。各種族の代表者たちは報告を聞いた瞬間に彼女達のやったことだと直感し、今後の対応などを決めるためしばらく会議室にこもる生活になってしまったそうだ。
ーー統一歴100年
皇帝は二代目となり、管理者がやってくると言っていた日が近づいていた。
初代皇帝が崩御した際、局所的な暴動が起きたこともあり、皇帝は管理者が来るこの日を、最大限警戒していた。
初代皇帝時代から、帝国そのものに憎悪を向けていた啓示派が、何かアクションを起こしてくるのでは、という恐怖心があったのだ。
しかし皇帝が感じている本当の恐れとは啓示派のことではなく、どちらかと言えばその先、彼らが動くことによって連鎖的に起きる、不毛な抵抗に恐怖していたのだ。
賓客として迎え入れる存在に、内々のいざこざを見せつけるようなことがあってしまえば、皇帝の面目丸つぶれである。そのため厳重な警備体制を引き、皇帝や各責任者は額に汗を流しながらその時を待った。
そしてついに管理者が現れると、帝国臣民は歓迎一色に、兵士は極度の警戒と緊張に沈む。外から見れば相反する二つの空気が、一つの場に混ざり合っている特異な光景だった。
管理者は皇帝の誘導で宮廷に招かれ、談笑をしながら晩餐会に出席する。各大臣や、他種族の外交担当者とも会話をし、各員様々なことを聞いていた。
その光景は、他種族がお互いを尊重し合い、そのうえ今いる場所のルールに従っている。非常に公正でフェアな正しいグローバル環境だったとも言える。非常に統一国家らしいおもてなしともいえよう。
ひとまずは成功だなと皇帝も安堵し、持ち場をいったん離れ挨拶周りに向かって行った。そして、時は順調に進み。皇帝が想定していたような事は、杞憂で終わると思われた。
だが、午後になり午前にはなかった影が徐々に落ち始めていた。兵士たちは常に、警戒状態。そのため当然疲労を感じ始めており、警戒の網が少しずつ綻び始めていたのだ。
皇帝もそうなるであろうと予想はしており、前もって兵士を交代制にしていた。そのため午後の兵士への入れ替えを、徐々に進めていたのだが、その入れ替えが終わる直前。
ほんの僅かな怠慢、警備責任者の僅かな安堵を縫うように、啓示派の銃口から放たれてしまった鉛玉が、管理者に当たってしまったのだ。
一瞬の動揺と静寂。皇帝は唖然とし、関係者も呆然とその光景を整理するのに手いっぱいであった。
一方啓示派はその状況を利用し逃走を図る。人混みをかき分け一般人に紛れ込もうとする。しかし憲兵隊が彼の予想以上に早く動き出し、その男性は取り押さえられる。
だがその場で口の中のカプセルを割り自害。証拠も証言も目的も、何も得られずただ管理者に鉛玉が当たってしまったという事実だけが残る。
皇帝は憲兵隊の動きを見て、はっと我に返り銃弾が当たった管理者のほうを向いたが、彼女はすでに姿が消えていた。
周辺を見ても、管理者が居たはずの場所を見ても血痕など無く、初めから何も居なかったと、空間そのものが囁いているような、不気味な自然さがそこにあったのだ。
翌日、皇帝は神霊種と精霊種の代表を緊急招集し、事の顛末を話す。
かなり責められると覚悟して向かったのだが、意外にも神霊種と精霊種は責め立てず、次の対策や方針を明確にしたほうが良いと諭されるにとどまった。
その後。神霊、精霊、人類の話し合いが終わり、小休止を挟もうとした瞬間、管理者サイドからの手紙が目の前に現れる。手に取るとその紙はひとりでに開き、内容が浮き出てきた。
そこに書かれていた内容はこうである。
「後日、事情を聞きに参ります。もし、その場でも本日の様なことが起きた場合は、それなりの対応をさせていただきます。」
半ば脅迫じみた物ではあるが、各種族は応じるしかなかった。それが許された唯一の選択肢なのだから。
様々を考え2回目の会談は人類、神霊種、精霊種の代表者と各大臣、補佐のみで行われた。
途中までは何も問題がなく会議と、謝罪が行われたのだが、終わる直前。外務大臣が袖の下に仕込んでいた銃で管理者を発砲する。
安全な臣下だと思われていた大臣ですら、啓示派の一員だったのだ。それも後に分かったことだが大司教と呼ばれる、啓示派のトップに近い存在だったのだ。
さらに流れ弾に運悪く当たってしまった総務大臣が死亡し、啓示派であった外務大臣は、その場で自害と考えられる中では最悪とも呼べる結果になってしまった。
また管理者が居たはずの場所も、1回目と同じように消えていた。
そしてその後の、第三回、第四回も啓示派の妨害を受けてしまい。
ーー統一歴102年
ついに、管理者サイドは交渉不可と結論を付け、外交の最終手段である戦争状態へと至ってしまったのだ。
このような歴史がありこの星の全種族連合、神霊種、精霊、人類は管理者と戦争しているのである。
ーー統一歴124年
この時は神霊種が管理者を討伐していた。人類上層部は神霊種頼りの状況に遺憾の意を示しつつも、人類の科学兵器では管理者にかすり傷一つ与えることは叶わず、また管理者からの魔法攻撃に有効な防御手段がなかったことは事実として受け止めており、現状では仕方ないと割り切っていたのだ。
しかし人類とて黙って見ている訳にもいかなかった。
目の前の魔法攻撃は超常的であるが、そんなふざけた能力で人類が数千年、積み上げてきた科学という武器が否定されてたまるか、と内心では思っていたのだ。
そして皇帝の勅命と、大臣からの無制限の予算配分を受け完成した最高の化学兵器。後にツァーリと名付けられたそれは、人類の希望の象徴として臣民に歓迎された。
帝国臣民は、実験結果の乗った新聞を片手に、これなら管理者もひとたまりもない。と確信を皆が抱き、その場でエールとワインを持ち祝杯をあげていた。それだけにとどまらず賭けごとの対象にもなり、管理者が生き残るという結果を予想する者は逆張りをした者のみで、オッズは360倍になっていた。
軍上層部も、臣民と同じ結論を出しており。管理者が生き残るということをすでに思考から放棄していた。いくら強かろうと、人工恒星に耐えられる者など神霊種にも存在しない。そう考えていたのだ。
そしてその兵器を管理者にぶつける機会が、クリスマスにやってくる。人類の上層部と、神霊種達は観測モニターを見つめる。
皇帝の命で神霊種には来てもらっており、万が一の保険としての側面もあった。神霊種はその対応に、少しの不満こそあれど人類の威信をかけた化学兵器というのは興味があったらしく。二つ返事で許可してくれた。
時が経ちツァーリが空中から投下される。管理者の真上を捕らえ、確実にあたるように。確実に討伐できるように。人類の希望は管理者に向け自由落下し、炸裂する。
その瞬間に帝国臣民や、帝国上層部は勝ちを確信する。数千万度以上の熱と衝撃波に耐えられるはずがない、そう思っていたのだ。
しかし、現実は残酷だった。
人類の希望は、最高の化学兵器は、管理者に傷一つ与えることができずただの照明弾になってしまったのだ。
モニター越しで見ていた皇帝や帝国大臣達は唖然とし、その中継を見ていた臣民も同時に言葉を失った。グラスから酒は零れ落ち、瞳孔を開いてモニターを呆然と見つめる無音の空間。
だが、すぐに無言の空間は管理者が中継用カメラを鬼の形相でのぞき込んだことにより崩れる。
人類はその視線に恐怖し、その場で混乱する者、発狂する者、金切り声を上げて気絶する者。様々な反応を見せた。
さらにそれは神霊種ですら、視線の圧だけで片膝を付かせるに足るものだった。
管理者の次の行動に最大限警戒をする神霊種。目の前で数千年の科学の結晶が真正面から否定され、意気消沈する大臣と皇帝。空間は見事に分断されたが、神霊種は人類を見捨ててはいなかった。人類の全滅だけは阻止すると彼らはその場で決意したのだ。
管理者からの本気の反撃が来る。
光線というには生ぬるい。空間そのものが捻じ曲げられ、中心から外側に向けて帯のような圧縮空間が形状を槍に変えている。天は空間ごと裂けているが、地は不自然なほど自然に存在している。
その異常な光景に、神霊種6体は覚悟する。これは受け止めきれないと。良くて逸らすのが限界であると。
呆然とする大臣や皇帝をその場に置き去りにし、彼らは人類のため管理者と帝都の間に一直線で整列する。すべてを悟ったように、こうするしかないというように。笑いながら彼らは並んでいたのだ。
皇帝は、神霊種の行動を見て放心状態から復帰する。何が起きたかはまるで分からないが、一つだけ確かなことは皇帝も分かっていた。彼らは人類の愚かさを諫めることも無く、最悪を回避するという結果だけを求めて、自らの犠牲を前提に行動している事実。それだけは分かったのだ。
何が理由でかは分からないが管理者を怒らせてしまったのは人類だ。そして目の前の天変地異そのものを向けられているのも人類だ。
神霊種。彼らは人類の救いようのない愚かさに怒りを向ける権利がある。本来なら人類など庇わず、その場から逃げることに専念した方が良いのは分かっているはずだ。しかしそれでも庇おうとしているのだ。
管理者が槍を放つ。それは音速よりも圧倒的に早く、槍の通った場所は深い渓谷のように捲れあがっていった。
やがてそれは六体の神霊種の元に突き刺さる。
一体目の神霊種は、槍の先端に当たる場所に全ての力を集約させ自らの肉体をも使い最強の盾を作る。二体目はその盾をさらにコーティングし、三体目に託す。
三体目は槍の先端に真横の力を加えそのまま逸らそうとする。しかし槍は直進した。そのため三体目は胴体に槍をもろに受け、四体目に力を受け渡す。四体目は再度横方向に力を加え、かろうじて数ミリ逸らすことに成功する。しかし腕に槍を受け右手が吹き飛んでしまった。
五体目と六体目はさらに横方向に力を加え、さらに軌道をずらす。
しかし結果は、帝都に直撃は防げたものの、完全に逸らすことは叶わず。西門付近は完全に壊滅してしまうことになった。
西門付近に住んでいた人類は蒸発するか、体の一部が溶け落ち阿鼻叫喚の地獄と化していた。住んでいた家や、仕事場は消滅、運が良くても焼野原となっており。とても復興など見込める状況ではなかった。死傷者は人類1億5200万人にも及び、最終的に神霊種の消滅が確認されたのは4体であった。
ーー統一歴125年
年が明けてすぐに、とある神霊種の視察団が人類の西門に到着した。彼らは人類を咎めに来たわけではなく、ただ同胞が命を張って守った人類の様子を確認しに来たのだ。
しかし当時の人類は、悲惨そのもの。特に西門付近の人物は軒並み世界に絶望していた。管理者の理外の攻撃が当たってしまったというのもあるが、それ以上に大切な者を失くしてしまった喪失感、絶望感がその場に沈殿していたのだ。
その様子を見て、遅かれ早かれ滅亡の道へ行くだろう。そう考えた一体の心優しい神霊種が居た。
......いや、正確には違う。その神霊種たる彼、バラムは親友たるロノフェが命を張ってまで守った人類が今している沈鬱な顔に、どうしても耐えられなかったのだ。
親友のロノフェが居なくなり、その表情をしたいのはバラムも同じなのだ。その感情をぐっとこらえ視察団に混ざっているのだ。
だが、実際に視察に来てみたらなんだこの惨状は。人類は守られたにも関わず、皆俯き、今にも死にそうではないか。
我が親友が命を張ってまで守ったのに、これでは無駄死にになってしまうではないか。
と、彼は怒りにも近い感情を抱いていたのだ。
バラムは怒りに任せながらその場で考え、一つの結論に至る。
「もう人類を全面的に守るのはやめよう。その代わりに自分たちを最低限、守れる武器を与えればいい」
彼は行動が早かった。視察中ではあったのだが、その場で大魔法を考案し発動しようとする。
しかし彼がやろうとしたことは、人類にも魔法を使えるようするという。創造者の作ったシステムに、真っ向から喧嘩を売るという、出来てしまえば大魔法と呼ぶにもおこがましい、超位魔法と呼ぶにふさわしいものだった。
彼は管理者との戦闘では、魔法の耐久力と、事象改変が得意なために問題なく勝ってきた。それゆえ魔法の上書き能力では絶対の自信があったのだ。そのため今回は相手が創造者ゆえに書き換えるのは苦戦はするだろうが、可能ではあるだろうと、そう思っていた。
しかしバラムは、目の前で創造者の作ったシステムを一瞥した瞬間に理解する。
これは書き換えられるものではないと。
創造者のシステムはペンを入れようとしても、おそらく所有者以外どのような存在でも弾かれると思える。圧倒的な魔法耐久力を有していたのだ。まるで変えられる物なら変えてみろと、嘲笑っているように。
バラムは一度諦めそうになった。しかし目の前の人類どもの子守でこれ以上同胞が死んでほしくない。そう思ったバラムは今一度奮起する。遠くで嘲笑っているであろう創造者に、引導を渡す覚悟で挑んだ。
その結果、彼は命を落としてしまった。
しかし、彼は世界の法則を一部書き換えとまではいかないが追記することに成功したのだ。
人類は彼の功績に心から感謝をし、それを永遠の物にすべくバラムという神霊種を魔法の開祖とし、祀り上げた。
人類は魔法を使えるようになり帝都の活気が戻り、強者も現れるようになった。絶滅に一直線と思われた種族は見事に持ち直したのだ。この事により神霊種の手助けがなくとも、管理者ともある程度数をそろえれば足止め、もしくは撃退できるレベルとなり、彼の望みも果たされたのだ。
ーー啓示派
啓示派と呼ばれているが、正確に言えば帝国誕生以前から存在していた、旧教団の残党である。
帝国建国以前、存在しないものを神として崇める宗教団体は、数多くあった。しかし帝国が誕生し、統一国家の皇帝となった2か月後。すべての宗教団体に向けて、一言無慈悲に言い放つ。
「証明なき虚無を拝するよりも、実在しながら人類の人智を超えしものを崇める方が、はるかに理にかなう。」
その皇帝の宣言により帝国では統一歴1年以降、宗教は必ず実際に存在している神霊種を神とし崇めている宗教のみ、存続が許された。
そしてそれを拒否した宗教は施設や聖地、ご神体も含め全て憲兵によって破壊されることになってしまった。
目の前で、今まで数千年祭ってきた物が破壊されるさまは、当時の宗教家には非常にドラスティックに映っただろう。目を見開き、口をあんぐりと開ける者。泣き始める者、やめてくれと叫ぶ者など様々な様相をしていた。
そして、それを見て笑い転げる初代皇帝。現地に居た旧宗教の信者や宗教家は怒りを覚え、その場で皇帝暗殺を決意した人物もいた。
しかし、その決意はすでに遅かったのだ。皇帝が宗教団体に向け言葉を言った時、この時点で全宗教団体の資産を一時的に全て凍結していたのだ。流石に施設は破壊しないだろうと高を括っていた宗教団体も、後になって皇帝の宣言が『確実に潰す』という、皇帝の意思表示であったことを痛感する。
宗教軍を結成しようにも武器を買おうにも資金などがなく、世論誘導や、お得意の買収行為もでできない。完全に手詰まりといえよう。抵抗しようにも抵抗する武器を最初からおられているのだから。
さらに新しい宗教団体が次々と誕生し、旧教団と今すぐ歴史の本に書かれ信者に見捨てられてもおかしくない、そんな状況である。資金や武器はなくても最悪抵抗はできるが、心まで離れてしまえばそれはもうただのカルト集団でしかない。
しかし、それでも旧宗教家達は雑草のごときしぶとさで皇帝に、刃を突き立てようとしていたのだ。
かつて互いに相容れなかったが、帝国と呼ばれる共通の敵が現れたことにより、旧宗教家の上位神官や司教など、彼らは手を取り合う事がかなってしまう。そして、かつて最大の信者数を誇った宗教が筆頭となり、スローガンを打倒皇帝、打倒帝国とし、新しくまとめ上げられた組織が啓示派と呼ばれる存在なのである。
ーー管理者
管理者とは、この世界を作った創造者が、創造した人型の代理人である。
創造者の権能を一部、またはほぼすべてを借り、自由裁量権のもとに行使することが出来る存在だ。創造者により任命された500名が名乗っている組織名でもある。
管理者には、500位までの明確な序列が決まっており裁量権や強さもそれに比例する。
基本的に管理者は、形式上議会制を採用しており序列5位以上の管理者によって構成されている最高評議会で出た結論に従っている。そのため創造者が不在であっても、『本来なら』円滑な管理、監督が出来るのだ。
また、管理者と創造者で協定のようなものもあり。
1条 管理者は創造者から与えられた権能を他の者に譲渡する際、必ず創造者の許可がなくてはならない。
2条 創造者は管理者が管理、監督している場所での地形変更、殺傷行為は事前に知らせる必要がある。
3条 創造者に危害が及ぶ場合は、2条の効力はなくなり、自由にすることが出来る。
と、このように最低限の協定ともいえる。
さて、管理者についておおよそ分かってきたであろう。
そして、こう思うであろう。
管理者側は何故戦争を早期に終わらせなかったのか、と。
実のところ管理者側も問題を一つ抱えており、それは管理者側が宣戦布告をした翌年、創造者の行方が分からなくなったという。なんとも言えないものなのである。
創造者は、おおよそ管理者1位から3位までの人物と一緒に住んでおり。これは創造者が与えた権能を悪用していないか管理者を見張るため、ではなく管理者が創造者を見張るためであった......
創造者は基本的に、気まぐれでアクションを起こすため、味方であるはずの管理者陣営も時々顔が引きつり、ひやひやさせられる。
例を出すと、
「景色がいい、海辺を作る。」と言った翌日には、新しい恒星と3つの惑星が生まれ、何だ何だと管理者たちが急いで調査しに来たら浜辺で優雅に涼んでいたり、「これ、いいな。」と呟いたと思ったら、1時間後には家に謎の扉が出来ており、その先に入ると美しい造形をした戦艦と保管するための施設が、丸ごと異空間として出現していたりする。
そんな誰よりも自由人でありまた、思いついたことを実際に再現、または作る事が出来てしまう厄介さ。そして常識外れの規模感。それらが合わさって、管理者陣営ですら創造者を警戒せざるを得なかった。
そのため管理者陣営は、現在創造者の捜索が最優先であり戦争など、正直眼中になかったのである。




