私って実はチート?
いつ霊力が戻るのか、という質問に対してこの秋月のど正論。
しんどい。
要するに、霊力って一度空になると戻るのに時間がかかるってこと。
粦が私のねていた布団を持ち上げて部屋から出て行ってから、それじゃあもう一つ気になることを聞いてみる。
「目を閉じると棒が横たわってるの。なんか黄色い棒。ゲームのゲージみたいな」
「それはよくわからない」
「ええ……秋月にもわからないの……?」
「ゲームのなんとかってことは、前世の記憶? のある君だから見えるものなのかもね」
「そ、そうなんだ。……私だけに見える……」
この世界がゲーム、と思っている私だから見えるってこと?
そもそもこのゲージはなんのゲージなんだろう?
HPとかMPとか書いてないの?
『宵闇の光はラピスラズリの導きで』で、主人公にあったゲージといえば体力ゲージと霊力ゲージ。
一応戦闘のあるゲームだったから、体力・霊力のゲージが設定されていたのだ。
それを思い出したら、なんか怖さが薄れて来た。
目を瞑って、よーく集中してみる。
[体力]100
[霊力]ー32
「あ」
「どうかした?」
「文字ちっっっさっ……!」
「文字?」
ゲージの一番手前にめちゃくちゃ小さな文字でそう書いてあるのに気がついた。
これ本当に体力ゲージと霊力量ゲージかよおおおお!
不安になって震えていたのに!
っていうか、霊力マイナス!?
マイナスになることとかあるの!?
嘘でしょ!?
「なんか体力と霊力量が数値で見える棒だったみたい。でも霊力がマイナスになってるんだけど!? 霊力ってマイナスになるものなの!?」
「普通はならないかな……? そのげーじというものがどういうものなのかわからないから、僕でも説明ができないのだけれど」
「そ、そうだよね。秋月にもわからないよね……」
文句を言ったところで秋月にもどうすることもできない。
ただ、秋月に言わせると「君は霊力が高いから、この世界をゲームだと思っている君の願望がそういう形で現れたのかもね」と言う。
なに? どういうこと?
霊力ってそんなこともできるの?
それはさすがに嘘でしょ?
……それとも、この世界をゲームだと思っているから私は霊力の使い方が特殊なのかも?
特殊な使い方ができる、的な?
……なにその変な方向のチート能力……。
っていうか、その理屈だとゲームのシステムを霊力で具現化できるみたいな感じじゃない?
やばくない? それ。
本当にチート能力じゃない。
だ、大丈夫なの? これ。
「霊力ってそんな使い方ができるの?」
「世界の理を変えることもできるものだからね。解釈次第で、君も反転巫女のように世界を変えることができるかもしれない。彼女の場合は――絶望、失望からの反転だけれど」
「感情や考え方次第で、私は世界を変えてしまえる……?」
「君がこの世界を『ゲームの中』と思えばそうなるのだろう。君の霊力量はそれを“実現させる”に十分な量だから。ただ、君自身が生理的にそれを拒んでいるように見える。この世界を維持したい。ただ生きたい。死なないために努力をしたい、と」
その通りだ。
私は死にたくない。
理不尽を許せない。
生きるために知名度を上げる。
そのためにVtuberになる。
死なないために努力する。
私の霊力はそのために使う。
――ああ、なるほど……目を閉じるとゲージが見えるのは……私が私を死なせないために霊力を使った結果なのか。
多分、お祓い動画でゼロにした霊力を、さらにそこからこのゲージ表示のために使ってマイナスにしてしまった。
だから通常なら多少復活する霊力が復活しづらくなっている。
そのぐらいの無茶をした。
……死にたくないから。
本末転倒だよぉ。
「少し、わかった気がする。私はこの世界の人間ではないという意識があるから、変えたくない……変えちゃいけないって、思っているのかも。自分が生きるために頑張るのは、当たり前のことだし」
「そうかもしれないね」
もしも、私の霊力が本当に世界のシステムに影響するのなら、気をつけなければ。
だって、反転巫女みたいに世界を変えてしまう力。
それはプラスではなくマイナスになることの方がありえるってことだもの。
っていうか、自分で“作り出した”ということは、この瞼を閉じれば出てくるゲージ、消せるんじゃない?
とはいえ、一度マイナスになるほどに霊力を使ってまで作り出したゲージを消すのにも霊力を使うのだとしたら、今はやめた方がいいよね。
まずはマイナスをゼロに戻して、プラスにするしか。
「私の霊力を元に戻すには、やっぱり食べるしかない?」
「そうだね。食事を摂る。睡眠を摂る。軽い運動を行い、体内の気を活性化させる。気の流れを感じ、陽の気を取り込んで己の中で高めて霊力として変換する。そのくらいかな」
「あ、結構選択肢が多い」
それじゃあ、今日は縁側で陽の気を取り込むのに集中しような。
修行にもなりそうだし。
「それじゃあ、粦のご飯を食べてから縁側で陽の気を取り入れようかな」
「あのねぇ? 君、僕がこの時間から来た理由忘れてない?」
「へ? なんで――あ」
本家に日和が行くって話してた!
本家から誰かが私を連れ戻しに別邸に来る可能性があるから、今日だけ逃げろって伝えに来てくれたんだ。
やばい! 完全に忘れてた!




