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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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正論で殴られる


 (りん)は私のために朝食をたっぷりと作ってくれた。

 しかし、買い込んであった一週間分の食料を使ってしまったので『今日買い足しに行きます』と言われてしまう。

 わ、私、一週間分の食料を食べ尽くしたってこと……!?

 え、えぐい……!

 

「お嬢様はお家で待っていてくださいね」

「わ、私も買い物をお手伝いする!」

「暑いのでお家にいてくださいませ。朝食を食べても霊力が戻らないようでしたら、お外で動けなくなってしまうかもしれません」

「う」

 

 ド正論。

 たしかに昨日のように動けなくなったらただのお荷物でしかない。

 それでなくとも大荷物を抱えてこなくてはいけないのに、私がお荷物になったら一番邪魔じゃないか。

 

「は、はい。待ってます」

「今日はパソコンのお仕事をせずに、テレビでも見ながらゆっくりなさってくださいね。お昼寝するだけでもきっと効果があります。禊も本日はお休みしましょう」

「い、いえ。禊は秋月との約束でもあるから」

「ダメです。海の中でへにょへにょになってしまったらどうするんですか。溺死しちゃいますよ! そんなの秋月様だってお望みにならないでしょう!」

「あ……確かに……」

 

 匍匐前進になるような状況で海に入ったらそりゃあ危険だ。

 それでなくとも波にさらわれそうになる私が、昨日の状態になったら確かにそのまま沖に流されそうだな。

 秋月にも昨日『霊力が戻るまで修業は禁止』と言われたし。

 ああ、秋月は『禊も含めて修業は禁止』という意味で言っていたのか。


「はい……おとなしく家にいます……」

「約束ですよ」


 (りん)にわざわざ小指を絡めるほどの約束をさせられてしまった。

 ゆびきりげんまん。

 わあ、なんか、こんな約束の仕方、本当に小学生ぶりかもしれない。

 私の命を心配してくれているからこそなので、もちろん言う通りにするつもりだ。

 だって死にたくないから頑張ってきたんだもん。

 その頑張りがこういう形で跳ね返ってくるとは思わなかったけれど。


「よろしくお願いしますね! 秋月様!」

「はいはい。ちゃんと相手をしておくよ」

「秋月……!? 朝から来て大丈夫なの!?」


 スッと背後から現れたのは秋月。

 でも、昨日来た時よりもなんか半透明。

 どうかしたの、と聞くと渋い表情をされる。


「身を二つに分けて、分霊を本家に残して来ているんだよ。朝から大離神(おおりかみ)家の式神がうろうろしているんだよ。昨日の夜に大離神(おおりかみ)家から連絡が来ていたとかでね、家の中がバタバタしている。どうやら大離神(おおりかみ)家の跡取りが来るらしい」

「ええ……!? 大離神(おおりかみ)の跡取りって――日和(ひより)……!?」


 まさか、あのヤロウあれだけ婚約の話を断って来たのに、本家に突撃してくるつもりなの!?

 ど、どうしよう!?

 連れ戻されたりしたら――!


「ど、どうしよう、どうしよう……日和(ひより)、なにを言うつもりなの……!? どうしよう、秋月……!」

「落ち着きなさい。おそらく婚約系の話ではない」

「え? ……じゃあ……なんの話……?」


 首を傾げる。

 秋月が(りん)に「食糧を買いに行くんだろう?」と言うが、「お店がまだ開いていないので、先にお布団を干します」と言い返されてがっくりうなだれていた。

 まるですぐに出かける流れだったのに。

 (りん)には聞かせたくない話……?


「夏祭りの時に攫われた、と聞いているんだけれど」

「あ」


 言ってない。

 言ってなかった。

 はい、攫われました。

 錫杖で殴って助かりました。

 ……っ、そういえば日和(ひより)のボディガードが式神に犯人に貼りつけたって言ってたよね。

 まさか――捕まえたの?


(りん)、秋月に話したの?」

「い、一応ご報告までに」

「う……ま、まあ、その……はい。攫われかけました」

「バカだなぁ。ちゃんと報告しないと、僕がびっくりするでしょう」

「ごめんなさい」


 そりゃあびっくりされるか。

 誘拐未遂だもんね。

 普通に大事か。

 でも、日和(ひより)が直接乗り込んでくる?

 私の家……ここの屋敷ね――は、知っているよね?

 なんでわざわざ本家?


「急に本家に行くなんて、どういうつもり? わ、私行った方がいい?」

「バカなことを言わないの。霊力切れの状態で本家なんかに戻ったらなにをされるかわからないでしょう。まあ、大離神(おおりかみ)家の話次第では使用人が連れ戻しにくるかもしれないから、どこか安全な場所に避難した方がいいかもしれないけれど」

「避難!?」


 避難ていわれても……ど、どこに?

 頭を抱えていると、真智の顔が浮かぶ。

 い、今からメールしてみる?

 今日一日だけ、お願いできないだろうか。


「ね、ねえ、秋月、私の霊力っていつ戻るのかな……?」


 避難、なんて聞いて一気に怖くなった。

 私、本当に、ちゃんと……元に、戻れるよね?


「それは大丈夫。君の霊力が多いから、戻るのにも時間がかかっているんだよ。そもそも成人男性の一日分を摂取しても一気に戻るような霊力量ではないんだよ、君。そんな体で食べられる量的に、成人男性一日分が盛大に頑張っても限界だろうって」

「ま――まあ……た、確かに……」


 それは、そう。

 そ……それは、そりゃあそうだぁ…………。

 言われるまで気づかなかったぁ。

 小学生女児がどれだけ頑張っても、即座に霊力に変換されたとしても、物理的な問題でいっぱい食べたところでってことかぁぁあ……!


「だから数日かけて回復させるべきなんだよ。あと、使い切らないのが普通ね。回復するのが大変だから。特に、霊力量が豊富な人間はまったくのゼロにするまで使わない。少量でも残っていれば、それを基に戻りやすくなる。……本当に、どんだけ霊力を叩き込んだのか……はあ……」

「二度とやりませんんん」




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