また一つ賢くなった
なんだろう?
また聞いたことのない単語が。
「ねえねえ、英、英。巴山さんって?」
「『六芒星』の家のどの家の派閥にも参加していない、いくつかの宗派を支援している名士ですね。そういう宗派や家があるのも救いになるのであればいいだろうと『六芒星』の家々で決まっているそうです」
「あーーー。なるほど、そっか。普通に考えてそうだよね」
この世界で『六芒星』の家の宗派だけが残って他の宗派がなくなってしまったら、それまでその宗派を信仰して残してきてた人たちの行き場がなくなるものね?
千頭山家は祈祷師、宇治家家は悪魔祓い……みたいに職種が分かれているけれど、さらにそこから宗派が分かれているわけで。
ある程度の統率はとっても、お取り潰しみたいなことまでする必要はないだろう。
むしろ、そういう人たちが各地に残って六家でも手が届かない端々を担当してくれている方が、健全というか楽というか。
しかし、その地域はお金がなくて浄化ができていないのか。
それって意味ないんじゃ……。
「でも結界の中で禁足地って放置したら危ないんじゃ……」
「はい。ですが、『六芒星』の家が禁足地を浄化しようとすると巴山家が口を出してくるのです。うちの管轄に手を出すな、と。巴山家は『六芒星』の家同様、政界、財界とも繋がりのある家なので無視はできないんですよね。御愚間家と同様に国外とも繋がりが深いので、対立が深まってもいいことがないですし」
「なんか難しい関係なのね」
「ええ、そうなんです。信仰の自由の観点から、『六芒星』の家が統一するのも……ですし。新しい宗教が生まれても土地を穢すモノであれば本末転倒ではありますが、逆に『六芒星』以外の宗派が日和並の浄化ができるようになれば、ありがたくもありますしね」
「そっか」
ダメな方に転んだら最悪だけれど、いい方に転んだら世界浄化が一気に進む可能性もある。
確かに。
日和みたいな浄化能力のある手法が開発されたなら、世界の浄化もスピードアップするものね。
まあ、それはそれでかなり、難しいことだろうけれど。
――それにしても、ゲーム内では出てこなかった話がたくさん出てくるなぁ。
巴山家なんて、ゲームに出てこなかった。
「そろそろ第一段階の結界解除が行われる時間帯だね。見に行くかい?」
「第一段階の結界解除?」
「結界は第一段階から第三段階で解除され、溜まっていた浄化の気が外へと放出されるんだよ。一気に放出したら、危ないからね」
「電波を遮断するほどの気が溜まっているので、調整の意味も兼ねて第一段階から第二段階、第三段階と分けて放出されるのですよ」
「そうなんだ」
確かにここまで溜めた気を一気に出すと磁場が狂う。
結界のおかげで平行感覚が保てているけれど、普通だったら歩けなくなっているだろう。
溜まった気を三回に分けて放出し、集まっている浮遊霊や盆帰りの霊を浄化。
波紋のように広がっていく陽の気で、悪霊や悪魔を弱体化させ、二回目以降の波でトドメを刺す感じか。
かしこっ!
「気の流れを感じる修行になるから、十夜と真智くん、真宵ちゃんも目を閉じて集中してみるといいわ」
「それはいいですね。真智、やってごらん」
「わかった! やってみる!」
「はーい! 僕もやってみるねぇー。マヨイちゃんも一緒にしゅぎょー、やろー」
「うん!」
もちろん英も誘う。
英はまだ開花していないから、なにもわからないかもしれないけれど……こういうのは参加することに意味があるのよ。
真智、十夜と並んで目を閉じて気の流れを感じてみる。
すると……驚いた。
結界の効果で地面に渦巻く陽の気が、外側に向けて移動して流れるのがわかる。
こういうの、集中しなくてもわかるようなりたいなぁ。
それにはまだまだ修行が足りてないってことか。
そう考えると、私ってまだ伸び代あるんだなぁ!
「あ、すごい流れてる!」
「ケッコー速い!」
「確かに」
沈黙の英。
俯いて、落ち込んでいるように見えた。
真智と十夜は生まれつき霊感がある、私と同じタイプ。
だから英が劣等感を抱く必要はない。
英の場合はこういう感じる機会そのものに触れる機会が必要なのだ。
そう言って背中を叩くと、微笑み返される。
英は絶対に霊能力に開花するのだ。
だってゲームの中でそうだったのだから!
だからそんな顔をしないで。
「すげーなぁ。陽の気って本当にぽかぽか! 日向ぼっこしてるみてぇ!」
「本当だぁ。夏の暑い感じとは違うねえー」
「確かに。なんだか春の陽気みたい。……ぬくぬくするのよ。それに、やっぱり浄化の力が強いから、気の流れが変わってそよ風に吹かれているように感じるの。想像してみて」
「は、はい」
英が想像しやすいように、私や真智と十夜が感じる感覚を教えてあげる。
その方が英の霊能力が開花しやすいだろう。
想像して、その感覚を感じているような気になれば開花もしやすくなる。
霊感ってほぼ感覚の話だからね。
「英と真宵嬢が仲いいの、俺どっちに嫉妬したらいいんだろう」
「「さあ?」」
日和がなにか言い出したが、流した。




