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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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夏祭りって大事なんだなぁ


 グッズ展開も話し合いをして、いつの間にか夕飯時になっていた。

 テーブルには屋台飯が並べられ、真智がわざわざ呼びにきてくれる。

 あと三時間くらいで、結界の中の渦の速さは最高潮に達するらしい。

 

「食事のあとは盆踊りに参加しましょうか」

「盆踊り?」

「夏祭りや盆踊りは元々お盆に帰ってくる霊を慰めるために踊っているものなのよ。一般の人にもできる鎮魂ね。だからより多くの人が楽しく、長時間踊るといいの。夏祭りの櫓にはステージがあって、そのさらに周囲に盆踊りを踊るスペースもあるのよ。そこで盆踊りを踊ってくるといいわ。多分実感として感じることができると思う」

「へ、へえ……そうなんですね」

 

 グッズ展開の話で盛り上がっていたから、急に現実に引き戻された感じがする。

 そういえば会場の周りにもたくさんの浮遊霊がいたっけ。

 あれってもしかしてお盆の時期だから帰ってきていた霊?

 その割には会場に入ってこないのね。

 あ、いや、気の流れが早くて、結界の中に入ってこれないのか。

 携帯の電波も遮断するほどの気の流れだもの。

 霊は弾かれちゃうよね。

 

「お盆なんて今まで関わってこなかったので、実感が薄くて」

「え? 千頭山(せんずやま)家はお盆の儀式やらないのか?」

「私は参加していないだけかも……?」

「お盆って結構大イベントなのに?」

 

 十夜母に説明を受けていると、日和(ひより)が入ってきた。

 そしてそれはもう、盛大に不思議そうな顔をされる。

 そうか、お盆って一大イベントなのか。

 いや、霊が帰ってくるんだからこっちの界隈からしたら、そりゃあ一大イベントか。

 ……それもそうだな?

 なんで私の家はノータッチなんだ?

 

「お盆はなにをするんですか?」

「基本的に“お迎え”と“お見送り”ね。お迎えの時にお経を読んで、夏祭りなどで鎮魂を行い、お見送りのお経を読んだりね。まあ、大体は一年以内に亡くなった方が最優先。初めて亡くなって迎えるお盆だから、右も左もわからないだろうから、お盆の時の幽霊として過ごし方の指南、みたいな?」

 

 ああ……前世の世界とはかなり違うっぽいな……。

 生きている人間側が霊としてお盆の過ごし方を教えるんだ。

 そんなことあるんだ……。

 

「反転巫女の祟りが世界を冒してから、死後の世界も荒れ放題だからな。お盆に現世に帰ってきて浄化を受けてあの世に帰るんだよ。現世の浄化や鎮魂を受けた霊があの世に戻ると、御仏も清められて力を取り戻す。あの世とこの世の双方から浄化を進めなければ、祟りは悪化してしまう」

「ひえ……」

「死後の世界でも落ち着いて過ごしてほしいわよね。亡くなってからも荒れ荒んでいる場所で過ごしたくはないでしょう? それで現世に居座られるのも、転生ができないし」

「そ、そうですね」

 

 霊というか、仏道は輪廻転生の概念がある。

 解釈は派閥によって多少異なるけれど、大まかに『成仏』→『極楽で徳を積む』or『地獄で罪を注ぐ』→『転生』が、輪廻の巡り方。

 なお、妖怪になると現世で罪を許されるまで苦しみ、その後に『地獄で罪を注ぐ』に移行するので簡単に転生できないし、それらを終わらせて転生しても徳を積まなければならないので非常に苦労人の人生を送ることになるそうだ。

 妖怪になるということは、イコール転生後の人生もしんどい、ということなのだとか。

 やはり前世とは多少違うんだなぁ。

 そしてあの世にも反転巫女の影響はある。

 まあ、あるよね、規模的に考えて。

 そうか……私たちはあの世の浄化も考えなければならないのか。

 そしてお盆というのはあの世の浄化にも関わることができるチャンスなんだ。

 秋月も――本当なら穏やかに死後の世界で過ごすはずだったのだろう。

 でも悪鬼になるほどに恨みに染まった。

 いつか秋月も浮かばれることがあるのだろうか。

 

「じゃあ、やっぱり夏祭りは大々的に大盛り上がりした方がいいのですね」

「ええ。現世にいる霊たちのためにも、あの世のためにも必要なのよ。ただ――」

「夏祭りはその分、反転した時が危険なんだよね」

「反転?」

 

 なんか不穏。

 十夜母と日和(ひより)曰く、事務的な夏祭りを行った地域が誤って鎮魂を蔑ろにした。

 あまりお金のない地域だったせいか祈祷師や霊媒師を呼べなかったのも大きい。

 地元のヤンキーが夏祭りを馬鹿にしたように盛り上げたため、効果が反転。

 現在は『禁足地(きんそくち)』――人が足を踏み入れてはいけない、いわゆる“あの世”となっている。

 それって……。

 

「結界の外のようになってしまったということですか?」

「そうよ。そういう禁足地は結界の外のような場所になったということ。生きている人間の立ち入れない場所。禁足地に立ち入れば、なにか取られる(・・・・・・・)

 

 ごくり、と生唾を飲み込む。

 なにか取られる。

 命を取られる場合もあるが、苦しいのは手や足、内臓を取られる時。

 一部を取られて、そのまま寿命尽きるまで生きていかなければいかない。

 そして、その“取られる”が自分のことならまだいい。

 親、親類、恋人、伴侶、あるいは――我が子。

 運勢が取られるのもつらい。

 人生になんの楽しみもなくなる。

 だから禁足地には、入ってはいけない。

 ――取られるから。

 

「その禁足地は今も禁足地のままなの? 俺が行って浄化してくる?」

「依頼もないのにいけませんよ、大離神(おおりかみ)家のお坊ちゃん。あそこの地域を治めている巴山(はやま)のお家はご自分の派閥でやりたがっておりますからね」

「ああ、またそういうのか。そんなことで二の足を踏んでいる間にも人が住めなくなるというのに」



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