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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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夏祭りの意味がだいぶ違う世界


「夏祭りって、夜だよね? 私が出かけても大丈夫かな?」

「む……確かにそれは難しいか」

善岩寺(ぜんがんじ)家の皆様とご一緒したらいかがてすか?」

「は、は? な、なんで十夜の家?」

「おとなの方が一番たくさんいらっしゃいますから」

 

 (りん)、突然の十夜推しになったのかと思った。

 しかし、理屈は理解できる。

 あの一家と行ったら誰かしらおとなが近くにいてくれそう。

 それに真智の家は家族団欒の邪魔になりそう。

 (すぐる)は一緒に連れていくとして……それならやはりおとなが多い方がいいか。

 

「聞いてみるね」

「はい! た、楽しみましょうね!」

「修行にそんなことを考える必要はないわよ」

 

 まっとうなことを言ったつもりなのだが、(りん)には悲しい顔をされてしまった。

 あまり気にしないでほしい。

 なんなら(りん)も当日は友達と遊びに行ってほしい。

 

 

 

 カレンダーを見ると、うちの近所の神社で行われる夏祭りは今週水曜日。

 具体的に言うと明日。

 ノートPCからメールで善岩寺(ぜんがんじ)家にお願いメールを送ってみる。

 やはりこの世界でも、法的に午後21時以降は成人の同行が必須という法律があるそうだ。

 特に〇時以降は隠の気が高まる時間帯。

 十五歳以下は外出禁止、罰則ありになっているという。

 資格有段者以外も〇時以降の外出は推奨しない、になっており、居酒屋やバー、レストラン、キャバクラ等の飲食店も23時までの営業が法律で定められているという。

 それ以降の営業は、結界と防犯、防火の一定基準を超えていなければ許可されず、違法営業として検挙対象。

 かなり厳しいが、この世界で隠の気が活発化する時間帯はそのぐらい危険なのだ。

 まして、そういう水商売のようなところは隠の気との結びつきが強い。

 清く正しく生活している人間からは、想像もつかない世界。

 人間の汚い部分を隠す隠の気の時間。

 世界の闇が広がらぬよう、おそらく私の前世以上に潜っている。

 人間が集まればそういう闇も生まれてしまう。

 私たちのような者がどんなに活躍しても、隠の気の増殖の方が早い。

 そういう世界だからだ。

 そして、夏祭りはお盆で帰ってくる先祖の霊を慰めるために行われる。

 夜職たち日々増やしている隠の気を浄化するために、春夏秋冬で大々的に祭りを行い、プラマイをゼロにしようという試み。

 規制しようが検挙対象になろうが、人間が欲を抑えるなんてまず無理。

 社会の仕組み的にも、生まれ持った穢れた魂を持っていたりとどうしても堕ちていく人間はいる。

 そのもっともたる社会の敵こそが『呪い屋』だ。

 この世界において呪い屋はもっとも忌むべき敵。

 悪霊や悪魔なんて目ではないくらいに、世間から疎まれる存在。

 だってせっかく安全な結界の中を、呪い屋は穢すのだ。

 それでなくとも悪霊や悪魔が生まれやすい世界なのに、安全性の高い結界内で呪いを撒き散らし土地を穢して人や土地を呪う。

 その行動理念は崇高なものではなく、ただ目の前の憎い相手を呪う。これだけ。

 世界がどうなるかなんて関係ない。

 だって“今”苦しい人がいる。

 妬み嫉みで自分が妖怪に堕ちる前に、呪い屋に依頼すれば自分は救われる。

 そんなふうな考えの人間から金で依頼を受けて人や土地を呪うのが呪い屋。

『宵闇の光はラピスラズリの導きで』のラスボス、呪い屋の心眼坩堝(しんがんるつぼ)が語っていた呪い屋の在り方。

 彼に言わせると『呪い屋は救済』なのだ。

 誰にも言えない苦しみ、吐き出したい許されない感情を肩代わりして、人々を救っているのだそう。

 ゲームの中の理屈を聞いた時は『なに言ってるんだこいつ』と思っていたけれど、実際にこうしてゲームの中の世界にいると――実情を知ったあとだとその言葉にはものすごい重みを感じる。

 だってこの世界では、罪を犯した者は妖怪に堕ちるのだ。

 人間なんだもの、妬み嫉み怒り憎しみはどうしたって生まれる。

 それらの感情のままに行動すれば妖怪になるけれど、呪い屋がそれらの感情を代行して呪ってくれたら救われる人もいるだろう。

 呪い屋から見れば確かに“救済”なのだろうし、救われた人から見たら呪い屋は“恩人”。

 “犯罪”にはならない。

 しかも、被害を受けた人からすると犯人が誰だかわからない。

 呪いには多くの制限(ルール)があり、その中の一番ポピュラーで有名なのは『呪いの儀式を誰にも見られてはいけない』というのがある。

 もっというとこの悪霊悪魔怨霊がその辺に普通にいる世界で、『呪われたから不幸になった』とわかる人間は多くない。

 大概の人は『なにかまずって取り憑かれた』と思う。

 誰かの悪意で呪いという攻撃を受けたと考えたくない、考えづらいと先入観を含めて思うはずだ。

 まあ、わからんでもないでしょう。

 人から恨みを買っているなんて、普通に嫌だもの。

 信じたくないよね。

 それなら、自分がなにか悪いものを引き寄せて取り憑かれてしまった、と思った方が気持ちも楽だ。

 だから呪い屋の所業は表面化しづらい。

 安倍家や大離神(おおりかみ)家の一部分家は、そういった呪い屋を中心に対応を行う部隊があるとかないとか……噂だけれど。

 でもありそうだよねぇ、世界観的に。



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