林の悪霊編、完結!
「というわけで! 本日は林の悪霊と決着をつけることにしました! 師匠にも今の私ならいける! と、太鼓判をいただいたので……今日、林の悪霊編は完結! ……するといいな!」
オープニングを撮影し、準備を手短に終わらせて林の奥へと進む。
秋月の言っていた通り浄化が進み中心部に行っても悪霊以外の浮遊霊の気配も薄い。
ちなみに本日の同行者もも粦と英。
撮影は粦、荷物持ちは英にお願いしている。
「気配がしませんね」
「ね」
粦の声が入ったところはカットすることになる。
変なリスナーが粦に興味を持って、探しに来たり特定されたら困るからね。
まだ浄化していないところにお鈴を鳴らしながら進むと、中心部からなにかが近づいてくる気配。
向こうから来た!
「お嬢様……」
「迎え撃つわ。英さん、経本と清めのお水とお塩を用意しておいてください」
「了解です、お嬢」
すぐにトートバックの中から経本を取り出し、手渡してくる。
水とお塩もすぐに出してくる英が有能すぎるな。
お鈴を鳴らしながらお経を読み始めると、悪霊の気配が正面から斜め上、斜め右、左、下、と移動する。
こっちを翻弄しているつもりなんだろうか?
「居場所バレバレなんだよ」
『殺られる前に殺れ』精神を叩き込まれた私は戦闘モードってやつだ。
真上に移動してきた悪霊に、全身全霊で読んだお経の力を叩きつける。
『うああああああああああ! クソガキがああああああ!』
「あんたがどうして悪霊になったか知らないけれど、人に迷惑かけるくらいなら昇天して一からやり直しな!」
『うああああああああああああ』
断末魔はよく聞こえる。
願わくばあの悪霊がやり直しできますように。
私みたいに理不尽な目に遭って、恨みを抱いて悪霊になったのだとしたら……やっぱり多少は同情してしまう。
だから私みたいに、やり直す機会があの悪霊にもありますように。
そう願いながら――祈りながら、最後の浄化を行う。
この土地に安らぎが訪れますように。
ここからは、祈祷師の本領発揮といきましょう。
祈祷師の仕事は祈ること。
祈ってその場の気の流れを変え、正しい方向に変える。
なにに祈るのかって、御仏や菩薩や神様。
経本に霊力を乗せ、この場の淀んだ気を完全に浄化する。
仏様、どうかこの場を正常に戻してあげて。
そしてさっきの悪霊を正しい方向に導いてあげて。
どうかこの場にいた浮遊霊たちも救われますように……お導きください。
「っ」
目を閉じているのに眩しい。
目を開けると無数の白い手が黒い魂を掴んで包んで天に連れて行くところだった。
これ、きっと私にしか見えていない。
悪霊になった女性が私の祈りでちゃんと正しい方に導かれ、穢れを排除されていく。
よかった。
これで――。
「無事に悪霊は除霊できました。この林はもう安全です!」
そう宣言して、拍手するふりをする二人と一緒に林を出る。
カメラの撮影を止めて、三人で顔を見合わせた。
そして両手を掲げる。
「やったーーーー!」
「おめでとうございます、お嬢様!」
「お疲れ様です! これで課題は終わり、ですか?」
「いえ、あとは例の橋が……」
「あ、ああ」
とはいえ、一応この場所の浄化は鬼ババアに出された課題の一つ。
報告はしなければいけないだろうけれど……。
秋月が言っていたことが気になるんだよねぇ。
「ねえ、英さん。私の師匠が御愚間家なら私が使える錫杖があるんじゃないかって言っていたの。錫杖は地面を通して結界を張ることができるし襲ってきた霊を殴って退けることもできるから、橋の浄化に使えるから買えるのなら買うといいって。どうかしら? 私の身長でも使える錫杖ってありますか?」
「お嬢が使える錫杖ですか……!? ええ……!? あ、あるかな、ぁ……?」
と、私の身長を爪先から頭の上まで見下ろして見上げて、難しい顔をする。
だ、だよねぇ。
私の身長では使える錫杖、普通は売ってないよね。
「あ、でも丈の短い錫杖はあったはずですよ。元々祈祷師の方は短い錫杖を使うことが多かったので。何本かお嬢が使いやすそうなものを選んでおきますね。一度お店に来て、実際にご自分に合うモノをお選びいただいた方がいいと思います」
「う……」
「どうしました?」
「師匠に、できるだけ一人でお出かけしないようにと言われているの。本家の方で私の名前が出ていて、それがなんだか、ちょっと不気味な内容だからって」
「千頭山家の、ですか……。それは……」
英が難しそうな表情で顎に手をあてがう。
そしてすぐに「では、お嬢の都合のいい日に俺がお迎えにあがりますよ」と言ってくれた。
い、いいのー?
なんかさすがに申し訳ない、と思ったら「それでもおでかけが怖いようでしたら、いくつか見繕ってお持ちいたしましょうか」と言い出した。
もっと申し訳ないやつーーー!
「大丈夫! 大丈夫! そこまでしてもらったら申し訳ないから! 私、行くから! あの、あの、迷惑じゃなかったら英さんに迎えにきてもらいたい……」
「もちろんです! お嬢。それで、いつ頃来られそうですか?」
「宿題はもう終わったから、いつでも行けるよ」
「え……?」
なんだか絶望したような英の表情。
あ、さては宿題終わってないな?
「すぐ宿題終わらせて遊びたいタイプなの! 英さんも早く終わらせた方がいいよ」
「……が……頑張ります」




