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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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死亡エンド回避のために動き出す(2)


 五つある離れの中で、私の部屋のある離れの隣の離れに侵入してみる。

 私の部屋のある離れとはまったく違う。

 なんというか、畳は新しいし掛け軸や壺、箪笥もランクが違う。

 もしかして、来客用?


「誰?」

「ひゃっ!」


 後ろから聞こえてきた声に肩が跳ね上がる。

 着流しに大きめの羽織を肩からかけた、カフェモカみたいな長髪の優男が見下ろしていた。

 緑色の瞳が細められて、口の端がやや吊り上がる。

 誰?

 使用人って感じじゃない。


「あの……あの……私は……」

「中身が違うね」

「――――」


 バレてる。

 中身がゲームの千頭山真宵(せんずやままよい)ではないと。

 でも、それもそうか。

『宵闇の光はラピスラズリの導きで』はオカルト系ホラー。

 人の中身、念、魂、霊とかそういうものが見られる人間たちばかりが登場する。

 千頭山(せんずやま)家も代々続く祈祷師の名家。

 その屋敷にいる人なのだから、多分、この人も祈祷師なんだろう。

 ゲームには出てこなかったけれど、千頭山真宵(せんずやままよい)がゲームに出てくる時の年齢は十八歳。

 今の私は六歳だから、十二年後。

 攻略対象みたいなイケメンだが、シルエットにもこんな感じの人はいなかったと思うし、攻略対象ではない?

 

「誰かな?」

「えっと……」


 見抜かれている、のなら……ごまかさす意味がないかも。

 というか、この人は誰?

 この屋敷にいるってことは千頭山(せんずやま)家の人だよね?


「あ……あなたが、敵が味方か、わからないから……言いたく、ない」


 睨み上げながら言うと少しだけ目を見開き、スッと目を細めて手元の扇を開くとそれで口元を隠す。

 なんだか楽しそう。


「なるほどね。それならば君の味方になると約束しよう。僕の“名”に誓って」

「なまえに……誓う?」

「自分の名前に誓うということは魂に誓うのと同義。裏切れば魂に罪が刻まれてしまう。どうかな? 信じてくれない?」


 しゃがんで目線を合わせてくる。

 驚いて縁側の柱に隠れるが、所詮は縁側の柱なので体の半分は丸見え。

 このイケメン、信用していいのか?

 軽率に魂に誓うなんて、私のこと騙そうとしてない?


「名前も、知らないし」

「ああ、これは失礼。僕の名前は秋月(しゅうげつ)

「……私の名前は……千頭山真宵(せんずやままよい)。前の名前は……思い出せない」

「なるほど。では真宵と呼ぼう。僕のことは秋月と呼んでいい」


 秋月。

 やっぱりゲームには出てこない人だ。

 でもネットでは千頭山(せんずやま)家の攻略対象がいないのはおかしいから、多分シルエットの中に千頭山せんずやま家の攻略対象がいる説がずっと囁かれていた。

 この人……?

 いや、でも見た目二十代半ば。

 ゲーム開始時点で三十代半ばっぽい。

 ……いや、アリか?

 この人がシルエットの人……?

 でもこんな丸頭の人いなかった。

 全員短髪。

 この人は長髪……。


「それで、君は前の名前を覚えてないんだね」

「はい」

「敵が味方か、と聞いたけれど君の敵は誰?」

「鬼ババアとマザコン親父」

「――ああ、そういうことか」


 目を瞑って扇を閉じる。

 通じた?


「確かにあの馬鹿親子、わざわざ白刃家から娶った娘を自害に追い込んでいたね。珍しい神降ろしの体質を受け継ぐ家の娘なのに」

「髪下ろし?」


 自分の髪を掴む。

 確かに、小学生にしては長い髪。

 朝起きると自然に結んでいたけれど、それが関係してるのかな?


「ふふ、なるほどね。それで、君は敵と戦うためになにかを探していたのかな」

「そ、そう。たいこーしゅだんが必要なの」

「対抗手段か。庇護がほしい、とかではなく?」

「どうやって?」


 本来私を保護するはずの鬼ババアとマザコン親父は、むしろ私を死に追い詰めていく存在だ。

 ヒロインよりも鬼ババアたちから身を護る術を手に入れる方が先決でしょう。

 ゲームが始まる前に自分を鍛えて、自分の身を守れるようにしたい。

 ゲームのことは伏せつつ「強くなって、自分の身、自分で守る」と言うと興味深そうな表情。


「強くなりたいのだね?」

「そう。強くなれるはずだから」

「そうだね。君には才能がある。努力すればあの二人なんて軽く超えることができるだろう。いいね、その向上心。他者を頼らず自分の力で打開せんとする魂の輝き。真宵は強い魂を降ろしたんだね」

「?」


 頭を撫でられる。

 まだよく知らない人だけれど、イケメンに頭を撫でられて悪い気はしない。

 ちょっとなに言ってるのかはわからないけれど。


「では、僕が君の師匠になってあげようか」

「え?」

「僕はこう見えて結構強いよ。君を鍛えて、君が自分を自分で守れる力をつけられるように指導しよう。その代わり、僕の話し相手として時々茶を一緒に飲んでおくれよ。悪い話ではないだろう?」

「……秋月、さんは……この家の人、なんじゃないの……?」


 鬼ババアとマザコン親父の身内ではないの?

 じっと見上げると「違うよ。僕はこの家の人間ではないからね」と言われる。

 この家の人間じゃないの?

 名前しか名乗ってないから、てっきり千頭山(せんずやま)家の人間なのだとばかり……。


「別の家の人なの? 別の家の人がなんで離れにいるの?」

「うーん。子どもにはあまり教えたくない理由、かな」


 ああ、なんかアレな理由なんだぁ。

 まあ、あの鬼ババアなら子どもに言えない理由で成人男性を囲っていても不思議じゃない。

 下手したら自分の息子よりも年下の男をこんなところに囲ってるなんて、マジキッショいとしか思わない。



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