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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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三人目の攻略対象


「刃天様は結婚の約束していた男の人との間に赤ちゃんを授かっていたの。それなのに、男の人は婚約者である刃天様以外の女の人を結婚式に連れてきて、あまつさえ赤ちゃんのいる刃天様のお腹を蹴り飛ばしたんですって。あまりにも蹴られたお腹が痛くって倒れた刃天様は、お腹の中の子が天に召されたことをすぐに悟って……そして――」


 グロい。

 それは普通に許されない裏切りだ。

 よりにもよって二人の結婚式でやらかしたってこと?

 それは万死だわ、男。

 しかも、百年前でデキ婚って相当じゃない?

 前世では『授かり婚』とか呼ばれてそれなりに受け入れられる状態にはなったけれど、百年前って絶対許されないよね?

 妊娠させたらそりゃあ結婚、だよね!?

 しかも、婚約してたんだよね!?

 それなのに結婚式で他の女を連れてきて、自分が孕ませた相手の腹をけ……蹴った!?

 自分の子どもでしょう!? だって!

 それを、殺した!

 信じられない!

 ゴミ中のゴミ男すぎる!

 信じられない! 許せない!

 それは、許せなくて仕方ない!


「刃天様の身内、お相手の男の人のご家族、親族も、羽天様以外がみんな刃天様を責め立てたと伝わっているの」

「なんで!?」

「昔はね、男尊女卑、っていう文化が色濃かったのよ。それで、刃天様は巫女としてとてもとても優秀だけれど、妻としては未熟だった、と言いがかりをつけられていたんですって。羽天様だけが刃天様に寄り添ったけれど、赤ちゃんがいなくなった刃天様をお身内の方々は『母にもなれなかった出来損ない』と罵ったと言われているわ。それで……ね。刃天様は、反転してしまわれたのよ」

「ひどい……」


 あまりにも理不尽ではないか、そんなの。

 私、この世で一番理不尽が嫌い。

 百年前の男尊女卑。

 女性の人権があまりにも弱かった時代。

 そりゃあ、そんな理不尽なことになったら世界なんてどうなったっていいって思うよ。

 どうしてそれほど強い霊力を持つ女性とわかっていて、人間をやめてしまうほど追い詰めたの?

 理不尽に理不尽を返されただけじゃない。

 倍返しにされただけだよ。

 なんか一気に反転巫女が可哀想になったんだけど。


「それで何億人もの、なんの関係もない人々が亡くなってしまったことはとても許されないことだけれど――」


 ぐ……それはそれで理不尽だもんね。

 確かに……。


「反転巫女を祀るお社を建ててお慰めすることで、祟りを少しずつでも弱めていく必要があるのよ。あと何百年かかるかわからないけれど、いつかあなたたちの世代が海の向こうの人々を救えるくらいママたちがこの国の浄化を進めるからねー!」

「はーい! ぼくもがんばるー!」

「ほーりつでそーゆー“ムセキニン”な男、逮捕できるよーにした方がいいんじゃねーの?」

「一応法律で『赤ちゃんは結婚後』ってことになっているのよ。婚約者制度も推奨されているしね。だから真宵ちゃんはいつでもうちの十夜と婚約をしてくれていいからね! 大丈夫だから!」

「え……あ、いや……えーと……」


 答えづらーーーい!




 ◇◆◇◆◇




 諸々あった翌週の土曜日。

 十夜に誘われて御愚間(おぐま)家のお店に連れて行ってもらえることになった。

 最初はお断りしたのだが、身を守るための助けになるから、持っておいた方がいいと十夜両親から強く勧められた結果……折れた。

 貰えるもんは貰っておくか、という気持ちと無料(タダ)より高いものはねぇ……! という気持ちがせめぎ合っている。

 だって、なんか絶対諦めてはくれていない気がするんだよねぇ……善岩寺(ぜんがんじ)ご夫婦、私を十夜の嫁にするの。

 一応、あのあと車の中で一通り家庭の事情は説明したんだけれどねぇ。

 六歳児には、早いと思います!


「ここだよー」

「えっ。でっっっか!?」


 十夜の家の車に乗せられ、三十分。

 到着したからと十夜が使用人の開けた扉から出て、私に手を差し出す。

 こういうところ、子どものくせにさらりとやってのけるのが、なんというか……将来乙女ゲームのジャケットセンターを務める男って感じ。


「ありがとう」

「いいよー。こっち、こっち。おーーーい! すぐるちゃーん! 来たよー」

「す、すぐるちゃん……」


 それ、絶対攻略対象の一人、御愚間(おぐま)(すぐる)じゃん……!

 乙女ゲーム『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の攻略対象の一人、御愚間(おぐま)(すぐる)――。

 祓い家の家系。御愚間寺院、除霊道具などの道具販売店を経営。

 寺院には呪物が持ち込まれるため、常日頃から呪具の念に晒され続けている。

 ヒロインと知り合って、彼女を呪い屋から守るために奔走する中、家に預けられた呪具の扱いを誤り祟り神化。ヒロインに祓われる。

 ストーリーは公開済み……。

 ええ、やりましたともストーリー公開済みだからね。

 プレイ済み、攻略済みですよ。

 ぶっちゃけ、ストーリー公開済みの攻略対象の中で一番まともな常識人は十夜だけと言っても過言ではない。

 真智……真智はいわゆる『復讐者』だから常識人っていう括りに入れていいのか悩ましいので、もし『復讐者』が常識人枠に入れていいのなら真智も常識人枠だけれど……。

 やっべーのよ、十夜以外のストーリー公開済みの二人――御愚間(おぐま)(すぐる)と、 大離神(おおりかみ)日和(ひより)は……!

 そのやべー枠のうちの一人、御愚間(おぐま)(すぐる)の幼少期。

 不安しかない。

 大丈夫かなぁ……!?

 さすがに子ども時代は、まだまともかなぁ!?



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