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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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ちゃんとゲームと同じところがある


 さすがにゲーム内のアイテムショップはないだろう。

 なんだっけ? ゲーム内のアイテムショップの名前。

 なんか、攻略対象の一人が関わっていたような――。


御愚間(おぐま)家直営の道具屋で買い揃えることができるわよ。御愚間(おぐま)家宗家は祓い家をだけれど、本家と分家はほぼ道具の製造販売、物流が資本なのよ。御愚間(おぐま)家がいないと話にならないぐらいに、六家の中では重要な家ね」

「おぐまけ、すぐるちゃんのうち?」

「そうよー」


 す、すぐる!?

 御愚間(おぐま)(すぐる)!?

 攻略対象の一人じゃん……!


「だ、誰ー? 真智と十夜くんのお友達ー?」

「うん! 習字教室のお友達だよー!」

「三組にいるぞ。十夜と逆隣のクラス」

「お習字教室かあ……!」


 もしかして攻略対象全員習字教室繋がりの疑惑ない?

 でも、霊石が多く含まれたお鈴は普通にほしい……!

 経費で落ちないかなぁ!?


「その、御愚間(おぐま)のお店はどこにありますか? 私でも買えるでしょうか?」

「買うことは誰でもできると思うけれど……。真宵ちゃんくらい霊力の高い子だったら、オーダーメイドした方がいいんじゃないかしら?」

「オ、オーダーメイド……!? そんなお金……」


 ない、と、思う。

 Vtuberをやるために、これからもっとお金がかかるし。

 できるだけそっちにお金をかけたい――けれど、お鈴や聖水とかもちゃんとしたのがほしい。

 仕事道具だもん!

 ……待てよ?

 Vtuberを始めたら経費で落ちるんじゃないか?

 やはりまずはVtuberを始めるべきじゃない!?

 そうだよ、浄化する系祈祷師Vtuberになればありとあらゆる道具や消耗品が経費で落ちるようになるじゃん!

 Vtuberが最優先だわ!


「そうねぇ……幼年学部一年生で家とトラブルがあるようなら確かに難しいかもね……。あ、そうだ! 真宵ちゃん、誕生日はいつかしら?」

「はい? 誕生日……」


 誕生日? ……いつだ?

 悪役令嬢千頭山(せんずやま)真宵(まよい)の誕生日なんて公式プロフィールに書いてあったっけ……?

 記憶にない。


「わ、わからない……です」

「そ、そう……。えーと、それじゃあ……祝結界祭(しゅくけっかいさい)の時にプレゼントさせてほしいわ」

「え……祝結界……?」


 なにそれ?

 そんなイベント――あったぁぁぁぁあ!

 あった! あったな! あったわ!

『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の中で国を護る結界が作られた日〜って感じでさらりと入ってたけれど、そういえばあったぁー!

 なんかこう乙女ゲームあるあるの『デートのためのお祭りイベント』だ。

 あんまり気にしたことなかったけれど、ストーリー実装済みの善岩寺(ぜんがんじ)十夜(とうや)御愚間(おぐま)(すぐる)大離神(おおりかみ)日和(ひより)、それぞれのストーリーにそれぞれの色があってよかったんだよねぇ。

 あと、そのお祭りデートイベントの最後の選択肢がハッピーエンドかバッドエンドかの分岐点になっていた。

 あれ、選択肢が四つも出てきて一番ヤバい選択肢を選ぶともう一段階エグいバッドエンドになるとかならないとかなんとか……。

 私、それぞれの攻略対象を三周したけど見るからにバッドエンド選択肢すぎて一度も選ばなかったんだよね、確か。

 で、SNSでその『どう見ても絶対あかん選択肢』を選んだ人の話によると、ヒロインが呪い屋に闇堕ち、攻略対象は祟り神化、世界滅亡エンドだったというなんの救いもない超バッドエンドだったらしい。

 絶対やらねぇー、と心に誓った第四の選択肢。

 その分岐点がある――イベント『祝結界祭』……!


「祝結界祭、知らない? お祝いしたことないかな?」

「ない、です」

「「「ない!?」」」


 めっちゃ驚かれた。

 真智と十夜にまで……。


「な、な、な、な、ない……!? ない!? ないの!? 一度も!?」

「な、ない。ないです。し、知らない……」

羽天(うてん)さま、来たことないの!?」

「う、うてんさま……? な、なに? それ……」


 し、知らないなにかがまた……!

 なに、うてんさまって!


「羽天様も知らねーの? 羽天様は反転巫女の双子の姉! 反転した巫女の最初の封印をした人! もしも羽天様が最初の封印をしなかったら、世界は滅んでたかもって」

「反転巫女と、羽天様のお誕生日――七月七日は『祝結界祭』として毎年お祝いをするのよ。そうすることで反転巫女――刃天(はてん)様のお心を少しでも癒すのが目的なの」

「はてん様……」


 それが反転巫女の名前なのか。

 しかし、祟り神って神社で神として正しく祀れば善神になるみたいな話あったよね?

 日本三大怨霊だっけ?


「あ、あのー……」

「なぁに?」

「祟り神つて正しく祀ると、ちゃんと神様になるんじゃありませんでしたっけ? 怨霊が神社に祀られて、学問の神様になった話を、聞いたことがあるんですが……そういう神社があったりしますか……?」

「菅原道真様ね。ええ、天神様として天満宮に祀られているわ。今も全国に天満宮を祀る神社はたくさんあるぐらい。もちろん、刃天様も全国にお社を建てて、祀っているわよ。でも、それではまったく足りないの」


 マジか……。

 いったい刃天様を裏切った男って、刃天様になにをやらかしたのよ?


「刃天様は、どうしてそんなに絶望してしまわれたのでしょうか……」

「そうね……。真宵さんも強い霊力を持っているから、知っておいた方がいいかしら……。子どもに話すような内容ではないのだけれど……」


 そう躊躇しつつも、目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。

 そして話してくれる。

 子どもの私にもわかるように。




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