表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/60

家庭事情は六歳には早いです


 でもいつか、向き合わなければならないだろう。

 いつか私の中に強くこびりついたこのモヤモヤを、向き合ってなんとかなるのかはわからない。

 ただ、一つ確信して言えることがある。

 あの後輩は絶対幸せになんてなれない。

 自分の感情しか考えず、相手の気持ちを無視して自分を見てもらう努力として私を捧げることを選んだ。

 そんな努力の方向性になんの意味があるのよ。

 自分磨きをして自分が魅力的になることよりも、他人の命を奪う選択肢が正しいわけがない。

 まあ、あんな後輩女と巫女が反転して祟られたことで亡くなった人たちが同じとは言わないけれども。

 どう考えたって、理不尽な理由で殺されるのは納得いかない。


「まよいちゃん、すごいねー。ぼくわからないよぉ」

「十夜はまだ修行始めたばかりだからねぇ」

「お前だけなんか特別な修行してねぇ?」

「普通の修行しかしてないよぉー。始めたのが二人よりも早かっただけじゃないかな」


 ってことにしよう。

 いや、実際そうだと思うし? うんうん。

 十夜母に「どんな修行をしているの?」と聞かれたので「朝の禊を」と言われて「ほげっ」という変な声。


「禊の修行!? 朝から!? お父さんとお母さんはなにも言わないの!? そ、それともお父さんとお母さんと一緒にやってるのかな!?」

「あ、い、いいえ。し、師匠に……言われて」

「師匠さんが……!? か、過酷じゃない……!?」


 過酷なの……!?

 いや、冷静に考えると六歳児に早朝六時から冷水に浸からせるって控えめに言って鬼畜の所業だよなぁ。

 ゲーム内の鬼ババアは禊としてはあまり意味のない夕方の時間帯や、お風呂に入れずに夜に『風呂がわりに』と池に入れさせてはいたけれど……。

 意味のある早朝の時間帯に入るように指示されているだけましか?


「あの、最初はしんどかったですけれど、最近はお腹に気を入れることであんまり寒く感じなくなってて……だから大丈夫です」

「もうその歳で気をお腹に入れて使えるなんてすごい……! さすがは千頭山(せんずやま)家……スパルタなのねぇ……!」


 スパルタなのかぁ……。

 でもなんだろう、この……『千頭山(せんずやま)家だから』みたいな扱い。

 すごくモヤる。


「もしかして、浄化も自分でできたりする?」

「あ、はい! 簡単なやつなら! つい昨日、家の裏の林の周囲の浄化を一周できたんです!」


 それは自分の功績。

 自分がやったことだから、誇れる!

 めちゃくちゃドヤ顔すると、十夜母にはポカンとされてしまった。


「スパルタ……なのね……」

「え……そ、そんなに……?」


 そんなドン引きされるような、ほど?


「でもその歳で浄化の行程を完璧に行えるのは将来有望すぎるわね。ぜひうちの十夜に嫁いできてほしいわ。今から千頭山(せんずやま)家に申し込もうかしら? いや、でもなぁ……」

「そういうお話は私には早いので、お断りするよう師匠に言われておりますっ」


 嘘は言ってないぞ。

 秋月から『ないとは思うけれど、万が一結婚の話が来たらお断りしなさいね。本家に話がいくから』と釘を刺されているからね。

 本家に……鬼ババアに話がいくのは本当にまずい!

 あの鬼ババアは私をどう苦しめるか楽しく悩むような鬼ババアなのだ!

 婚約の話なんか持ち出されたら、『そうだ婚約させればいいんだ』となって幼女趣味の変態に私を売り飛ばすぐらいやる!

 秋月もさすがに中身が成人女性だとしても、これは言わない方がいいな、と思って『本家に話がいく』というやんわり言葉で留めたんだろう。

 この辺は鬼ババアとは違うおとなの余裕って感じというか。配慮というか。


「そうなの? まあ、さすがに早すぎるものね。でも安倍家や大離神(おおりかみ)家が知ったら絶対婚約話が来ると思うわよ」


 マジで!? 困る!

 どうしよう……真智の家には話だけれど、十夜の家にも話しておくべき?

 あまりベラベラ話す内容ではないし、どこから私が家のことを話しているか鬼ババアの耳に入るともわからない。

 鬼ババアのとこだから、私が家の事情を外に話していると知れば絶対に本家に連れ戻される。

 でも……婚約なんて話になったら……!


「あ、あの! 私、家の、おばあさまに嫌われているんです」

「え?」

「おばあさまが私のことをすごく、嫌いで……だから家に帰ると殺されるんです……師匠が助けてくれて、私は今別邸に住めるようになってるんです! 婚約とか、そんな話になったらおばあさまは怒って、私は変な人に売られるって師匠が言ってたので……だからどうかそういう話は家にしないでほしいです! 私、まだ死にたくないです!」

「え、え? ちょ、ちょっと落ち着いて? 大丈夫よ? どうしたの?」


 そうだよね、おとなからしたら突然そんなこと言われてもわからないよね。

 しかし、ここでまさかの助け舟。


「あのね、おばさん、千頭山(せんずやま)の当主の人、悪魔に取り憑かれてるんじゃないかって思うんだ」

「悪魔に……!?」

「おじさんも言ってたんだ。だから今が一番、マヨイは安全なんだって。ケッコンって家どーしの話だから、マヨイは怖いんじゃないかなって思う。おじさんもケッコンの話、危ないって言ってた」

「真智……!」


 ありがとう、真智〜!

 真智の叔父さんという後ろ盾、マジで助かる!

 やっぱ子どもの言うことって微妙なんだよ。

 おとなの裏づけがあるだけでかなり説得力が変わるんだよー!

 ありがとうー!


「真智くんのおじさんが? じゃあ、最近千頭山(せんずやま)家のご当主さんが総会に来ないのは……。悪魔って、確かなのかな?」

「マヨイの話を聞いたおじさんが『多分乗っ取られてる』って言ってた。でも、悪魔祓いをするのは準備がいっぱい必要だから、って言ってた」

「そうね」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ