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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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結界の外の話


「あ、お邪魔しています」

「いらっしゃい! 今日はどのようなご用?」

「あ、えっと、依頼していたイラストが完成したからと……呼んでいただいたので、お邪魔させていただきました」

 

 ぺこ、と頭を下げると十夜母はものすごく嬉しそうに「一夜のイラストをそんなに気に入ってくれるなんて!」と近づいてきた。

 これだけ大きなお屋敷に住んでいるのだから、相当に稼いでいるのだろうけれど……専業主婦をやらずにちゃんとお祓いのお仕事に行っているんだ?

 

「おばさんもお仕事?」

「こんにちは、真智くん。そうよ。このあともすぐに遠方に出張なの」

「あのお化け屋敷?」

「そうね」

「お化け屋敷?」

 

 なにやら聞き捨てならない言葉だ。

 不安に感じて聞き返すと、真智が「いっぱい遠くのところにでっかいお化け屋敷があるんだって」と教えてくれた。

 この世界観でお化け屋敷なんて呼ばれるような場所、絶対にろくでもなくない!? 

 

「ケッカイの外にあるんだよー。パパも、一夜お兄ちゃん以外のお兄ちゃんたちもお姉ちゃんたちも昨日から行ってるの」

「家族総出で?」

「うむ。結界の外にある『坩堝(るつぼ)』という建物がね、無数にあるんだよ。百年前、巫女が反転したお話は知っているかな?」

「は、はい。えっと、本家の人に聞きました」

 

 嘘は言ってない。

 秋月は本家の守護神だからね。

 

「うん、いつか教わるとは思うが『六家(むつけ)』により結界が張られているのは最初、日本の六大都市――東京府東京市、神奈川県横浜市、愛知県名古屋市、京都府京都市、大阪府大阪市、兵庫県神戸市だけだった。その後、安部家、大離神(おおりかみ)家、千頭山せんずやま家が中心となり各地の都市を浄化、結界を張って祟りの軽減と現状の回復に努めているのだとか」

 

 つまり、六芒星結界を張った六家は巫女の反転により穢され切った世界の浄化と回復のため、安全圏である結界の中で次世代を育成しつつ結界の外の人々の生活を戻すために定期的に結界の外に出て新たな人々の居住区にするよう浄化や浄霊に勤めていたってことらしい。

 め、めちゃくちゃ大変じゃん……!

 っていうか、世界の半分を壊滅させ、百年経った今ももう半分を祟り続ける巫女って本当に激ヤバ祟り神じゃん。

『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の制作陣は攻略対象を祟りが身にして殺すくらいなら、こっちの激ヤバ祟り神をなんとかさせた方が主人公のすごさが伝わると思うんですがなんでやらなかったんですかねぇ!?

 さすがにゲームの主人公でも世界崩壊を引き起こしたレベルの祟り神は無理だったとか?

 もしくは――登場予定の攻略対象のストーリーが全員公開されたら、ラスボスとして登場予定だった……とか?

 は? じゃあ……もしもしもそうだとしたなら『宵闇の光はラピスラズリの導きで』の公式悪役令嬢、千頭山真宵(せんずやままよい)の存在ってなに?

 ラスボスが出てくるまでの繋ぎボス?

 それとも、反転巫女の祟り神が出てくれば千頭山真宵(せんずやままよい)には救済ルートが追加されるとか?

 そうだよね? だっていくらなんでも可哀想すぎるもんね?

 ……まあ、それがいつかわからない。

 本当に公式悪役令嬢、千頭山真宵(せんずやままよい)の救済ルートが追加されるかもわからない。

 だから結局のところ、あるかどうかわからないものにすがるより自分の力でなんとかするしかないってこと。

 

「じゃあ、おばちゃんは結界の外の悪魔や悪霊を祓っているの?」

「そうよ。力のある者が何時間もかけて人が通れる道を整備して、少しずつ拠点を増やしていくの。拠点が増えれば人が住める場所になるから、そうしてもっとたくさんの能力者がもっといろんな地域に浄化に行けるようになるのよ。パパや安部家、大離神(おおりかみ)家の能力者が中心になって作業が進んでいるから、いつか旅行にだって行けるようになるんだから!」

「旅行ー!」

 

 旅行!

 そっか、結界の外に出ることすら危険だから旅行っていうのも難しいのか!

 それでも結界の中だけでここまで前世の世界と変わらない科学技術なのすごくない?

 ネットの環境が整っているのも奇跡みたい。

 

「だからママ、また三日くらいお留守にするね」

「うん、わかったー! がんばってねー!」

「奥様、仕事の件で千頭山(せんずやま)家の方から急ぎの依頼が……」

「ええ? 珍しいわね? 詳しく教えて」

「……っ……!?」

 

 せ、千頭山(せんずやま)!?

 うちの鬼ババアからってこと!?

 まさか自分のところに来た依頼を、他の六家の家に振ってるって話じゃないでしょうね!?

 

「ちょっと行ってくるわね」

「ま、待ってください! そ、祖母がなにかご迷惑をかけているのでしたら、私にも教えてほしいです!」

「ええ?」

 

 困惑されたが、もしかしたらこの件が十夜母が悪魔に乗っ取られて行方不明になる件かもしれない。

 というわけでお仕事の内容をお聞きする。

 依頼人のプライベート内容は伏せるが、うちの鬼ババアが善岩寺(ぜんがんじ)家に依頼をした内容は『第一都市内のとある家の奥様に取り憑いている悪霊を祓ってほしい、というもの。

 悪霊? 悪霊なら違うのかな?


「悪魔ではないのですか?」

「悪魔だったら真智くんのお家に依頼が行くんじゃないかしら?」


 なるほど、確かに。

 真智の家――宇治家(うじいえ)家は悪魔祓いの名士だからな。

 じゃあ今回のこれは違うか。

 でも、なんか嫌な感じがするんだよなー。

 なぜなら鬼ババアからの依頼っていうところにね、嫌な感じがひしひしとね。



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