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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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レベルアップもするぞ!


 それから毎日のように林の周りを少しずつ移動しながら浄化していく。

 本丸を攻める前に、まずは外堀からってやつだ。

 少なくとも今の私では絶対に林の中の悪霊を倒すことはできない。

 霊力自体は問題ないが、戦う気力体力に不安があるからだ。

 負ければ取り憑かれて中から穢される。

 悪霊との戦いは、自分の命をかけた戦い。

 その上の存在である悪魔や鬼、最上級の危険存在“祟り神”は、今の幼い私では視ただけで命を取られかねない。

 秋月は屋敷の外には出られないから、助けてもらえないし。

 自分の身は自分で守るしかないのだ。


「という感じで、明日には林を一周できるよ!」

「すごいねえー! 本当にこの一ヶ月で林の周りの浄化が終わったんだ? 成長だね」

「へへへへへー」


 その夜、秋月に進捗を報告。

 膝の上に座らせて、頭を撫でてくれる。

 私ちゃんとやり遂げるから見ててね、と言いたいところだけれど、夕飯を食べ終わったら秋月はすぐに本家に帰らなければならない。

 一応、千頭山(せんずやま)家の――本家の守り神だからね。


「ここ一ヶ月頑張ったおかげか、元々量が多かった真宵の霊力の質が上がっているね。より研ぎ澄まされ、魂の炎が霊力に混じり始めて強くなっている。このまま研ぎ澄ます修行を続ければ、日々の汚れを魂の性質の炎が焼き続けて負の気が漂ってきても焼き払ってしまえるくらいになるだろう。太陽の性質とはそういうものだからね」

「私、負の気に負けなくなる?」

「なるなる。土地の浄化は“徳を積む”こと。徳を積めば魂の格が上がり、魂の性質である『太陽』の力も強くなるということ。洗練された霊力にその性質が乗ることで、真宵はもっともっと強くなれるんだよ」


 つまるところ、魂のレベルアップだ。

 今よりも強くなれば、鬼ババアたちがゲームの真宵にしたような『呪いや怨念を真宵の中に移す』やり方での除霊はできなくなる。

 その前に私の魂の性質が乗った霊力により、そういう

 負の気のものを全部焼き尽くせるというわけだ。

 もちろん、私の魂の性質の現状を上回る負の気には負けちゃうけれど。

 だからこそ日々の修行で霊力を研ぎ澄ませ、魂の質を霊力に反映できるようにしなければならない。

 土地を浄化して魂の格のレベルアップを行い、霊力そのものと一緒に強くしていく。

 こういうことを説明されると、だいぶゲームの中っぽい。

 実際ゲームのシステムの中に『土地浄化』があった。

 確か、マップの黒いモヤを浄化することで“徳”の経験値が得られるのだ。

 うん、だんだん思い出してきたぞ。

 攻略対象のことばかりに気を取られていたけれど、ゲームシステムの方こそ私の生活には重要だった。

 ちゃんと思い出して、効率よくレベルアップしていこう。


「それで――ぶいちゅーばー? っていうのはどうなっているの?」

「今は立ち絵の完成を待っているの。一ヶ月くらいで必ず完成させるからーって、一夜さんが言ってたからそろそろ完成するかも」

「ふーん。まあ、よくわからないけれど、真宵がやりたいようにやりなさい。僕は真宵が幸せならそれでいい。君が好きなよう生きて、間違いなく育つのが一番なんだから」

「うん、ありがとう秋月」

 というわけで今日の放課後に最後の林外周一画の浄化、にいくわけなのだが――。


「まよいちゃーん」

「ぶっ!? ぜ、善岩寺くん……」

「やだなあ、とーやでいいよぉー。お兄ちゃんがイラスト完成したから、確認に来てって言ってたよー。だから今日、一緒に帰ろうねー」

「いぃいぃ一緒に!? 今日!?」

「だめ?」

「っ」


 こてん、とこ首を傾げる十夜。

 こ、こいつ! 自分がセンターを務める攻略対象の自覚でもあるの!?

 ショタだからってやっていいことと悪いことがあるぞ!

 私がおねショタ属性なくて感謝されてもいいぐらいの可愛さ……!

 幼児って、ショタってこんなに威力があるものだっけ!?


「なになに、絵、できたの? おれも見に行きたーい」

「へ!? 真智……!?」

「いいよー。真智も一緒に見よー。お兄ちゃんの“こんしんのいっさく”なんだって〜」

「ぐ、くぐぬぬ……」


 私を挟んで盛り上がる二人。

 心なしかクラスメイトの女子の視線が痛い。

 この調子で他の攻略対象も出てくるとか、そんな怖い話ないよね?

 いや、考えるのはやめよう。

 変なフラグになりそうだし。

 まずはイラストを確認しつつ――十夜母が悪魔祓いに行く時に見学として連れて行ってもらう……とか、とにかく善岩寺(ぜんがんじ)十夜(とうや)ルートの破滅フラグをへし折ろう。

 彼が祟り神になるルート、マジで悲しかったんだよ。

 “十夜”はずっと主人公に優しかった。

 出会った時から主人公をどう助けるのがいいのかを、主人公の意思を確認しながら「一緒に頑張ろうね」と励まして寄り添ってくれる、まさしくセンターを務めるに相応しいイケメンぶり。

 そんなの好きになるじゃん!

 呪い屋に狙われて不安な日々を寄り添って守ってくれる王子様。

 ふわふわ癒し系で、少し抜けているけれどその隙のある感じが可愛い。

 復讐に燃える真智との対比で風邪引くかと思ったレベル。

 そんな“十夜”が主人公を助けるために、悪魔に乗っ取られた母親と対峙する。

 そして大好きだった懐かしい母親を倒すことができなかった。

 “十夜”のバッドエンドルートは彼の優しさが仇となり、彼が祟り神になって主人公に浄化される。

 そもそも十夜母を悪魔に乗っ取られる前に助けられたなら……。


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