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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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善岩寺家本家に潜入!?(1)


「あの、じゃあ、もしかして私、話しかけない方がよかったですか?」

「なんで? 別にだいじょーぶだよぉ」

「あの、それじゃあお願いがあるんですが……一夜さんはすごく絵が上手いとお聞きしました! お仕事を依頼したいです!」

「一夜おにいちゃんに? いいよー、聞いてみるねー」

「よろしくお願いします!」


 よっしゃー!

 第一段階クリアー!


「あと――」


 正直、真宵が『ヤバい子扱い』されていること、私自身はどうでもいい。

 友人を作り、遊ぶ時間が私にはないと思うから。

 でも、私自身ではなく千頭山(せんずやま)真宵(まよい)という子どものために、頭を下げる。


「私の祖母が皆さんのお父様、お母様を大変驚かせてしまったことを謝罪いたします。身内の者が申し訳ありませんでした。私自身は皆さんとぜひお友達になりたいと思っておりますので、なにかございましたらお気軽お声がけくださいませ」


 丁寧にお辞儀をして、にっこり笑顔を向けてからお淑やかに教室からお暇する。

 私の後ろから真智もついてきて、廊下に出てから肩の力が抜けた。


「き、緊張したぁー」

「お前のばあちゃん、入学式の時からヤバかったんだな」

「ね、ね……びっくりした。いや、なんかヤバいのはわかってたんだけれど、想像以上にヤバいというか」

「多分『攻撃型』の悪魔が憑いてるんだろうな」

「攻撃型の悪魔……?」


 そういえば秋月も『悪魔にも色々種類がある』と言っていた。

 基本的に悪霊、悪魔は人の気を吸い取る。

 しかしその吸い取り方に個体差があるという。

 人を孤立させて弱らせて吸い取るモノ、取り憑いて人格を乗っ取るモノ、周りとの関係性を破壊していくモノ。

 そして祖母に取り憑いているモノは、周りを攻撃してすべて破壊しようとする一番危険なモノ。


「それって私のおばあちゃんは悪魔を祓えば穏やかな人になるってこと?」

「人格を乗っ取って周囲を攻撃し尽くすタイプの中でも、一番ヤバい。人が死ぬこともある。元々の人格がどうかはわかんね。悪魔を祓ってみないと」

「ふーん」


 じゃあ多分、ゴミのままだろうな。

 ゲームの中ですら結局真宵を祟り神にしてそのままその後が語られていない。

 SNSでは『真宵、悪役令嬢だけどさすがに人生悲惨すぎる』『真宵のばあさんとマザコン親父にザマァがほしい』『真宵が祟り神になっている時に食い殺されていてほしい』と言われているレベルなのだ。

 マジでなんとかお亡くなりになっていていただけないだろうか。

 はっ! いかんいかん、あまり負の感情を撒き散らしてはいけない。

 修行が足らないな!




 放課後、帰る準備をしていると「まよいちゃーん」とふわふわした声がした。

 教室の後ろの入り口を見ると、善岩寺十夜(ぜんがんじとうや)が手を振っている。

 ほ、ほげえええ!?


「ど、どうしたんですか!?」

「昼休みにお兄ちゃんに聞いたら『お仕事やるー』って喜んでたんだぁ。すぐにお連れしろーって。だから一緒に帰ろー」

「へ、がっ……えっ……い、いいんですか!?」

「うんー。なんか『ぜひお連れしろ』って」


 逆にそんな仕事に飢えてらっしゃる……?

 怖……。

 いや、むしろありがたい!

 でもなんかここまで食いつかれると思ったよりもアレなのかな、結構イラスト料とかお高いのかなって不安を感じてしまう。

 い、いや、まあ、やるか。

 こんなチャンスきっとないし。


「わかりました。よろしくお願いします!」

「お家に連絡しなくて大丈夫?」

「大丈夫ですっ。あのー……まあ、その……携帯持ってないので」

「そうなんだー、貸そうか?」

「う、ううん。固定電話も、ないから」


 くっ、家電量販店で固定電話も買ってくればよかっ……あ、ダメだ、結局回線の契約が私と粦じゃできない。

 つまり携帯はおろか固定電話も家に置くことができないのか。

 ヤバいな。

 うち、連絡つかない……。


「そうなんだ。じゃあ一緒に帰ろー」

「マヨイ、十夜と帰るのかー?」

「う、うん。十夜くんのお兄さんにお仕事をお願いしたいの」

「そっかー、気をつけて帰れよ」

「うん。また明日ね」

「おー。また明日なー」


 真智が普通に帰っていく。

 あ、あのー、若干気まずいから一緒に来ていただくことは〜〜〜……無理だよねぇ……。

 諦めて真智にバイバイをして、二人で教室を出る。

 ちなみに、私は徒歩通いなのだが学校にはロータリーがあり、名家の令息、令嬢は車で送迎されるのだ。

 もう一度言うが、私は徒歩である。

 徒歩で行ける距離とはいえ、名家の令息令嬢は基本的に車送迎。

 実際誘拐事件が定期的に起こるためだ。

 うちのように攫われても問題ないのはレアだし、真智のようにガチで家が近い場合でも普通は送迎される。

 真智もある意味おかしいタイプの令息。

 当然のようにこれほどの高級車……いや、なんなら車に乗るの自体初めて――!


「どうしたの?」

「く、車、乗るの初めてで」

「え? そうなの? 普通に椅子に座ればいいんだよー」

「お、お邪魔します」


 降りてきた運転手が後部座席の扉を開ける。

 そして私がお辞儀をすると、ににこにと笑ってる「どうぞ」と言ってくれた。

 すごくまともな使用人だー。

 いや、うちの粦だって立派な使用人だけれども!


「わあ……ふかふかだ」

「ふかふかだよねー」


 車に乗り込む。

 うわあー! チェアふっかふっかだぁぁぁ!

 しかも今の時代だと後部座席はシートベルトを絞めなくてもいい、だと!?



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