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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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新生活(1)


「すっごい速さで引っ越しになったねえ」

「はい。先にお屋敷のお掃除を終わらせますので、真宵お嬢様はお部屋をどのように模様替えするか考えておいてくださいませね。わたしがやりますから」

「ありがとう、粦」


 秋月の手紙が余程効いたのか、熱が下がった翌週には私の引っ越しが決まっていた。

 海の見える丘の上の、白い壁、洋室と和室のある二階建ての大きな家。

 隣には竹林。

 この竹林に、強めの悪霊が住んでいるらしい。

 夜間には竹林の奥の千頭山(せんずやま)大橋の真ん中あたりに現れ、橋に集まった浮遊霊や亡霊などを食い散らしているという。

 その状況がここ五年ほど続いており、これ以上続くようなら生きている人間にも影響が出始めるのではないか、と案じられている。

 ヤバいよね、うちのご先祖様が出資して設置した橋らしいのならそんなことになったら。

 だから、千頭山(せんずやま)家の人間がなんとかしなければならないのに、当主の鬼ババアが『自分の力ではすでに手が出せない』と放置している状態。

 次期当主のはずのマザコン親父は、ムチュコたんだいちゅきの鬼ババアが『そんな危険なこと、きゃわいいきゃわいいアテクシのムチュコたんにさせられない!』と反対して、やっぱり放置。

 ……クソすぎる、マジで。

 なので、結局私にやらせるのがいい、と秋月の提案を喜んで採用したってわけだ。

 しかし、今の私にその悪霊を祓う力はない。


「明日から禊を再開して、もっと力を高めなくちゃ。そのためにも、海までの道を確認しておきたいな。……ちなみに、粦」

「はい、なんでしょうか?」

「パソコンとか、ある?」

「ぱそ、こん……ですか?」


 あれ? この反応、もしかしてパソコンそのものがない感じ?

 ない可能性ある?

 インターネット、ない?

 あのー……もしかしてワイチューブも、ない?

 私の前世、二つ折り携帯があった時代からインターネットはあったはず。

 あとワイチューブもそのくらいの時期にできてない?

 あ、ニッコニッコ動画?

 いや、8ちゃんねる?

 なんかそういうのはすでにあった気がするんだけれど……。


「すみません、粦はわかりません。学校で聞いてみますね」

「うん」


 そっか、粦も学生だもんね。

 インターネット、ないのか?

 そろそろインターネットが恋しい。

 Vtuberの配信が恋しい。

 一人暮らしお手伝いさん付きになったからには、ちょっとだけ……ちょっとだけでいいから娯楽がほしいの。

 推しが、推しがほしい。

 推し活がしたい!

 こっそりでいいから!

 小学生ができる範囲で!


「あ、でもテレビは居間にございますよ。粦はアイドル番組をよく見るのですが、『スクールBOYZ(ボーイズ)っていう学生服六人組のアイドルがすっごくかっこいいんですよ! 今度一緒に観てみませんか?」

「アイドル……かぁ……」


 そうか、パソコンやインターネットが普及し始めたばかりで時代はまだアイドルなんだ?

 Vtuberって私の前世の時代だと始まりの人が『バーチャルワイチューバー』と名乗ってできた造語。

 その始まりの人は出現して八年。

 今の時代では難しい……のか。

 それとも私が知らないだけで、もうインターネットは普及しているのだろうか。

 なんとなく千頭山(せんずやま)家って時代に乗り遅れてる気配を感じるんだよね。

 ……一回家電屋に連れてってもらう?

 それアリじゃない?

 せっかく引っ越したんだもの、この辺りに住む悪霊を倒すという大義名分の下、この家で生活する以上お金は引っ張ってこれるはずだもの。

 とはいえ、私の味方は秋月と粦だけ。

 もう一人、人間の大人の味方がほしいところだよね。


「ねえ、粦。このお屋敷ってどのくらい家電が揃っているの?」

「はい? 家電、ですか?」

「テレビはあるんでしょう? でも、あのー……他にも、冷蔵庫とか、洗濯機とか、扇風機とかストーブとか……」

「冷蔵庫と洗濯機はありますけれど……扇風機とストーブは、確かにないですね」


 ないの!? ヤバくない!?

 私の前世の世界は夏は人の生き死にに関わるほどに暑かった。

 正直扇風機じゃ足りない。

 クーラーがないと……まずい。

 とはいえ、この世界ってなんとなく平成初期な感じだしな。

 いや、やっぱりうちの感じが遅れている可能性がワンチャン――。


「一度家電量販店に行ってみたいんだけれど……お金ある?」

「一年間の生活費として一千万円お預かりしております」


 頭おかしいのかあの鬼ババア。

 与えすぎだろ、私は小学生だし粦は中学生だぞ?


「――あ……それって、私たちの学費とか生活費全般とか、全部ひっくるめて?」

「はい」

「そっか」


 それなら結構、厳しいかも。

 一応私学だもんね、私が通っているところ学費高そう。

 なんかこれ、私たちが生活する上で経理面をやってくれる大人の人がいた方が絶対にいいよね?


「粦、千頭山(せんずやま)家に専属の会計士さんとかいないのかな?」

「会計士さん、ですか?」

「そう。私も粦も未成年でしょう? お金の管理をしてくれる大人の人がいてくれた方が間違いないと思うの。私、その……まだ算数習い始めたばかりだから……。それとも、粦、計算得意?」

「……………………」


 ダメそうだなこれ。

 ちょっと見たことないレベルで目が泳いでるわ。


「会計士って一般家庭の会計とかもやってくれるのかな?」

「わ、わかりません。調べてみますね」

「うん。よろしくね。粦にもお給料を払わないといけないし」

「お給料!? そんな、大丈夫ですよ!? 寝るところと、食べるところ、学校にも通わせていただいているのですから……そこからさらにお給料なんて……!」

「ダメだよ! 粦は学校に通いながらうちのこともやってくれているんだから」



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