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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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旅行に行くぞ!(3)


「詳しく聞いても?」

「そう言われても、まだまだ占いは勉強中なのです。いつどこで、とか細かいことまではわからなくて」

「そう……。でも、善岩寺(ぜんがんじ)家の奥さんがそんな目に遭ってしまうという占い結果は出ているんだよね?」

「はい……」

 

 なんだかあまりにも真剣な眼差しで聞かれて申し訳ない気持ちになる。

 別に騙しているわけではないのだが、想像以上に深刻に受け止められてしまっているというか。

 だって一応、ゲームの知識だから。

 十夜のプロフィール情報だけであり、とにかく『善岩寺(ぜんがんじ)十夜(とうや)が“幼少期に”母親が悪霊に乗っ取られて行方不明』ということだけ。

 それを真智叔父に話すと、神妙な面持ちで「了解した。気に留めておくとしよう」と言ってくれた。

 こんなに真摯に受け止めてくれると思わなかったな。

 

「あの、どうしてそんなに真剣に話を聞いてくれるんですか? 私の占いなんて、本当に最近覚えたばかりなのに」

「いやいや。祈祷師の――千頭山(せんずやま)家の占い精度は安部家・大離神(おおりかみ)家の占術専門家並みだと言われてるんだよ。占術を学び始めたばかりでも、真宵ちゃんが千頭山(せんずやま)家の人間で、なおかつそこまで霊力が高いとなれば、君の占術は清聴する価値がある」

「そ、そうなんですか」

 

 素人でしかないのだが、千頭山(せんずやま)家の人間というだけで占術の精度が高いのか。

 まあ、それならそれでゲームの知識を『占いで』といえば結構使える気がする。

 それに、本来ゲームの攻略対象たちが不幸になる出来事を無理やり捻じ曲げた結果、未来はどうなるのか……。

 私の占術でわかるなら、動き方を変えて破滅エンドを回避できたかわかるかも。

 自立のためでもあるけれど、先日は真面目に勉強した方がいいかもね。

 

「それに、その話を聞いたら気が引き締まる。準備はより、入念にやらせてもらうよ」

「は、はい」

 

 結局は私は連れて行ってもらえなさそう。

 ざんねーん。

 

 

 

 数時間後、電車に揺られてようやく大栄(おおさかえ)町駅に到着した。

 若い体のおかげか、腰もお尻も痛まずにすぐ立ち上がって自分の荷物を持って駅に降り立つ。

 車内では美味しいおやつ、楽しい会話で盛り上がり、景色を指差しあって笑い合う楽しい移動時間だった。

 なんかめっちゃ旅行って感じ。

 (りん)も楽しそうだし、ここまで遠出してきた価値は十分な気がする。

 いや、もちろんこれからだけれど。

 そう、これからだ。

 この旅行の目的はパワースポットを巡り、自分の霊力を高めること。

 本当は十夜母が悪霊に乗っ取られてしまわないか、心配ではあるのだけれど……ひとまず真智叔父を信じて任せるしかない。

 

「まずは旅館にチェックインしましょう。お魚料理が美味しいところを予約してあるの!」

「まあ、楽しみですわ」

 

 十夜母が呼んでおいてくれたタクシー二台で旅館へ。

 一軒家を大きめにしたこじんまりとした旅館を想像していたら、五棟くらいあるめっちゃくちゃでっかい高級旅館に到着した。

 で、で、で、でっか!?

 

「十人泊まれる大部屋を予約したのだけれど、それでよかったかしら? 部屋に個室のお風呂と露天風呂もついているし、襖を閉めれば各家族の団らんもできるし」

「そこまで配慮してくださりありがとうございます」

 

 十夜母、なんというシゴデキ。

 それができるのはありがたいな。

 予約した十夜母が受付カウンターで鍵をもらい、まずは荷物を部屋に置いてくることにした。

 襖を挟んだ三部屋を、それぞれの家庭で使うことに。

 ありがてぇ。

 

「荷物を置いたらさっそく神社に行ってこの辺りの土地神様にみんなでご挨拶しに行きましょう」

「そうですね」

「とちがみさまに、ごあいさつー?」

「ええ、この辺りの土地神様にご挨拶をして、お力をお借りするのよ」

 

 土地神様にご挨拶か。

 神社にいるのかなと思ったが、神社と神社周辺にある祠などを巡って祀られている土地神様に『あの屋敷の悪霊悪魔を祓いに来ました。なにかあった時、どうかご助力ください』とお願いしに行くらしい。

 その時に土地神様を清めることで溜まった穢れを祓い、土地神様の力を強めることでより力を借りやすくなるという。

 そういうのもまた、事前準備に含まれる。

 勉強になるな~。

 

「ぜひ行きたいです!」

「じゃあお水とお塩を持って、早速出かけましょう」


 お祓い道具一式を持ちあげる真智叔父。

 私たちのことを促しながら、部屋から出る十夜母。

 真智が飛び跳ねながら「ご、あいさつー! ご、あいさつー!」とリズムよく繰り返しながら廊下を走り出そうとしたのを三重子(みえこ)さんが引き留める。


「真智くん、走ってはダメよ!」

「はーい」


 なんだか、すっかり親子のようだ。

 ……不安なことといえば、真智のことも無事に回避できたのかどうか。

 もしも真智の両親同様、ゲームの強制力で両親の代わり(・・・・・・)になっている叔父夫婦がもしも――。

 そう思うと……心配でたまらない。

 もしも叔父夫婦まで真智の前からいなくなってしまったら、真智はどうなってしまう?

 この町から出て行って、ゲームの始まる十二年後に帰ってくるとか……?

 そうなった頃にはもう、真智はゲームの通りの復讐者になってしまうのではないか。

 不安がつきまとう。

 (すぐる)日和(ひより)は、そういう心配がないのがありがたいのだけれど……。


「真智のおじ様や十夜のお母様はこの辺りに来たことがあるのですか?」

「何度か仕事でね。大栄町は『六芒星』、宇治家(うじいえ)家の核担当なの。その隣が善岩寺(ぜんがんじ)家の核担当なのよ」

「核……結界の、ですか?」

「ええ」



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