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ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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旅行に行くぞ!(2)


 窓口のお姉さんに教えてもらったホームにある駅弁の売店に立ち寄る。

 美味しそうなものが並んでいるな~。

 人気だという鮭海苔弁、数量限定だといっていたけれど、残りが三つ!

 そ、そんなに美味しいの?

 

「真宵ちゃんはどれを食べたいの?」

「窓口のお姉さんが言っていた鮭海苔弁!」

「おれもそれ食べたい」

「ぼくもー」

「それじゃあ、鮭海苔弁を三つ。唐揚げ弁当と牛丼弁当二つ。(りん)さんはどれにしますか?」

「あ、わたしは鳥そぼろ弁当で」

 

 全員で駅弁を頼み、店員さんが袋に入れている間に電車が到着した。

 緑色のラインが入った、私から見るとちょっと古臭いデザイン。

 

「お会計は私が払うわ。宇治家(うじいえ)さん、十夜たちを電車の中に連れて行ってくださる?」

「まあ、悪いですわ。あとでお支払いするのでレシートは貰っておいてください」

「あらあ、気にしなくてもいいのに」

 

 三重子(みえこ)さんに引き連れられて、電車の中に入る。

 涼しい~。

 ちゃんと冷房がついているのね。

 それに結構広い。

 いや、私が小さいせいか?

 

「おれ、窓がいいー!」

「ぼくもー」

「真宵ちゃんも窓際がいい?」

「いえ。トイレ行きたくなると思うので、通路側でいいです」

「「ダメです」」

「「え?」」

 

 真智叔父に覗き込まれてどこの席がいいか聞かれたので答えただけなのだが、なぜか三重子(みえこ)さんからも十夜母からも笑顔で『ダメ』が出た。

 困惑しつつ思わず(りん)を見上げてしまうと、(りん)も笑顔で「そうですね。ダメですね」と言い放たれた。

 ダメなんだ。

 なんでダメなんだ?


「通路側なんて、変質者が通過したついでに真宵ちゃんを触ったり連れて行ったりするかもしれないでしょう? まったく、男の人ってそういうところがわからないのね」

「そ、そんなことなあるんですか?」

「小さな子だとよくあるのよ。通り過ぎるついでに頭をポンポン撫でたり、ほっぺを突いたり、さりげなく触っていくのよ。気持ちが悪い」


 そ、そんな変質者いるのぉ!?

 驚いている私と真智叔父。

 しかも、他に勝手に写真を撮ったり話しかけるやつもいるとか。

 どの世界でもロリコン変態って生息しているんだ。

 きもぉ。


「そういうことなら真宵ちゃんも窓際に座った方がいいね」

「男の人一人いるだけでも違うけれど、子どもが三人もいるから目が行き届かないでしょう? その隙を狙ってくるのが変質者なの。十夜も真智くんも可愛いから、もちろん男の子でも十分気をつけなきゃいけないけれど」

「そうですね。わかりました。それじゃあ――」


 結局、席順は対面席窓際に真智と十夜、その隣に三重子(みえこ)さんと十夜母。

 その隣の対面席、窓際が私と(りん)

 私の隣に真智叔父が座ってガード。

 (りん)の隣も不審者が座ってこないように荷物を置く。


「それなりに教わってきたけれど、女の人ってこういう時も色々気を使うんだなぁ」

「そうですよ」

「どうして女の人って自分の隣の席とかに荷物を置くんだろうって思っていたけれど、変な人が隣に座らないよう牽制するためなのか」

「逆に荷物が置いてあっても『荷物を退けて座らせろ』とか言うやつが現れたら、席を立てばいいわ。そんなことまで言って隣に座ってくるようなやつ、絶対イタズラ目的だもの」

「「確かに」」


 真智叔父同様、私も驚愕してしまった。

 前世電車に乗る機会は多かったけれど、私が乗る電車は満員電車。

 むぎゅむぎゅの箱詰めで痴漢も痴漢する元気がなくなる場所。

 なにしろ女の人に近づくのと同じ割合でおっさんともチューできる距離になるし、内臓圧迫されて生死を彷徨う場所。

 痴漢してる場合じゃねぇ。

 あそこは我が身を守ることにすべての神経を注がなければ潰れて死ぬ。

 しかし、ここはそうじゃない。

 変態が変態行動を十分楽しめる空間。

 その余裕がある。

 だからおとなは子どもを全力で守る。

 守ってくれる。

 なんか、こういう“守られる”感じ、久しぶりだな。


「じゃあこっちに座ろうか」

「はぁい。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 というわけで私と(りん)は真智たちの通路を挟んだ隣の席に座る。

 発車まであと五分。

 三重子(みえこ)さんが「飲み物を買ってくるわ。なにが飲みたい?」と聞いてくる。

 あー、なんかこの、出発前の感じ……旅行前って感じ!

 そわそわして、わくわくする。

 いったいどのくらいぶりだろうか。

 シンプルに楽しくなってきたな。

 

「ごめんね、真宵ちゃん。せっかく真智や十夜くんもいるのに、席が離れてしまって」

「そんな、大丈夫です! お気になさらないでください。(りん)がいるから話し相手には困らないですから」

「そうか。それならよかった」

「――あの、ところで悪魔の住む屋敷……って、やっぱり私がついて行ったらダメですか?」

 

 十夜母が悪霊に乗っ取られて行方不明になる事件。

 やはり、その件が気になってしまう。

 真智叔父にそれとなく聞いてみるが、困ったような表情をされる。

 やっぱりダメかぁ。

 

「そんなに悪魔が気になるの? 普通に危ないよ?」

「そうなんですけれど……」


 あ、そうだ!

 いいことを考えた!


「実は、師匠に“占い”を教えてもらった時、十夜くんのお母さんが悪霊だか悪魔だかに取り憑かれて誘拐されてしまう、みたいな映像が見えたんです」

「――!?」


 私がそう言った途端、真智叔父の顔色が変わる。

 ……ヒットしたっぽい。



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