爬虫類、女戦士、そして焼けたコート
アシュラは信じられないという表情で見つめた。彼は見たものを見て、もしかしたら空腹による幻覚を見ているのではないかと考えた。 2日も何も食べていないのに、ないものを見るにはまだ早いのでは?
目の前にはトカゲのようなものが立っていた。彼の知っているトカゲは小型犬ほどの大きさしかない。このトカゲは、大型犬を10匹重ねたよりも背が高かった。間違いなく大きなトカゲで、羽が生えていた。つまり、空を飛ぶ大きなトカゲだった。
もうこの生き物に驚かされることはないだろうと思っていると、その生き物は突然頭を下げ、鼻の穴からアシュラに向かって煙の雲を吹き出した。アシュラは全身を灰色の雲に包まれ、大声を上げ始めた。しばらくして煙は消えたが、アシュラはまだその匂いを感じていた。しばらくして、アシュラは何かがおかしいと思った。急に暑くなり、煙のにおいが強烈になったからだ。辺りを見回し、目の端にあった自分のコートに目をやると、自分自身、もっと言えば自分の服が燃えていることに気がついた。パニックになった彼は、火を消そうと走り回った。
「しまった、あの生い茂ったトカゲが私のコートを焦がした!」。
「くしゃみをするトカゲの前に立ってはいけない」。
その言葉は少し楽しげに語られた。なんとか炎を消したアシュラは、息を殺して自分の負けを嘆き続け、声のした方を見上げた。彼が驚いたのは、革製の簡素な鞍に乗ったトカゲの背中に、軽い鎧を着た女性が座っていたことだった。碧眼で、長い黒髪を三つ編みに結い、右肩にかけている。彼女は明らかにこの状況を面白がって彼を見下ろした。
「トカゲが人にくしゃみをするのを止めてくれませんか?」
「ドラゴン!」。
「ドラゴン?」。
「ドラゴンです。トカゲではなくドラゴンです。私のものではないが、私の仲間だ。どうして挨拶しないの?」
突然、アスラの頭に穏やかな声が響いた。
「ども」。
「これは・・・これは何かを言っている・・・これは何かを言っている?」。
「はい、何がおかしいんですか?」。
「まあ、私は他のドラゴンと同じように話すことができます」。
アシュラはショックで倒れた。地面に座り込み、何が起こったのか、なぜ自分に起こったのかを頭の中で整理しようとした。彼はトカゲが好きではなかったが、このトカゲはしゃべり、火を噴いた。これは良い兆候ではなかった。
女は巧みに鞍から滑り落ち、トカゲの脇から地面に滑り降りた。彼女は埃を振り払うと、まだショックを受けているアシュラに歩み寄り、彼の手を握って立ち上がらせた。
「私はセリア、セリア・ヌミア、あなたの名前は?」。
「アシュラです。私はアシュラ...ジャカールのアシュラです」。
「お会いできて光栄です。しかし、私たちは奇妙な状況で、奇妙な場所で出会った。このような荒れ地で、このような威厳のある服装の人が何をしているのですか」。
「あなたのような女性が、ドラゴンと一緒に、このような荒野で何をしているのですか?」。
「礼儀として、まず質問者が答えるべきですよね?」。
その言葉に、アシュラは訝しげに彼女を見た。彼女の態度に、単なる警戒心をはるかに超えた距離を感じた。しかし、ダーメン王の代理として彼を追及できるような人物には見えなかったので、いずれにせよ彼女に隠すことはあまりないと判断した。
「私は元宮廷魔道士です。残念ながら・・・不幸な出来事のために国を離れなければならなくなり、居心地の良い場所を探して数ヶ月放浪しています」。
「これは興味深い。面白そうだね。提案があります。私と一緒に来ない?一緒に近所を歩き回った方が楽でしょう?」。
「まあ、馬鹿な選択肢ではない。この申し出に応じようと思う」。
新しく出会った二人が進むべき方向を定め、アシュタとセリアは出発した。セリアはドラゴンに乗り、アシュタは徒歩で並走した。アシュタが王宮でのエピソードを話し、ドラゴン(そのドラゴンの名前はイコと判明した)が珍妙なコメントを交えながら歩くこと数時間、日が暮れ始めた。セリアはその日の旅の終わりを告げ、キャンプを張ることにした。