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そもそも現代っ子は戦闘に向いていない

というわけで、不本意ながらもダンジョンを攻略することなったわけだが。


「「武器がない」」


そう、攻略しようにも武器がない。脱出しようにも武器がない。戦闘をするにしても武器がないのである。いや、これは困った。私が知るラノベ知識でいえば、ダンジョンの外に出るには何パターンかあり、その脱出方法も様々。整備されて周回するようなダンジョンはそもそも階ごとのボス部屋での戦闘を終えれば帰還の魔法陣が出現したりする。でもそれは創作の世界の話であって、現実はそうもいかない。鑑定した結果、このダンジョンは生まれたばかり。そもそもトラップも魔物も不安定であり、なんならダンジョンボスを倒しても帰還出来るかは不明。簡単にいえば、まだ赤ちゃんなので何も分からないのである。多分ダンジョンもよくわかっていない。

「一択とは言ったものの、このダンジョンを攻略したところで帰れるかは分からないんだけどね。どちらにせよ武器は必要だけど、ここ中級者向けレベルの赤ちゃんダンジョンだから、レベルに合わない魔物が出る可能性もある。困ったね」

「俺ら、そもそも武器があったところで何も出来ずにここに飛び込んでたよな。武芸を嗜んでいたわけでもないし、身体能力がチートでも戦い方が分からん」

「ほんとそう、それなんだよね。武器がないし、スキルも足りない。あと、魔物といえど、そもそも生き物を殺したことなかったから…それもあって倒すイメージも何も出来なかったわ」

倒す、それ即ち殺すということで、そんなの平和な元の世界を生きていた私たちにすぐにできるかと言われれば難しいに決まっていた。ゲームなどで何かを倒すのと現実で目の前のものを倒すのでは大きく意味が違うのだ。ご都合主義でも現実は甘くなかった。身体や環境の変化もそうだが、実際に命の危険に晒されると異世界にいるというのを否応にも実感してしまった。

「正直さ、怖いよな」

「怖い。死が隣り合わせな状況に陥っている現実も無理」

「死にたくないから、こんなにも怖い。でも、死にたくないんならやるしかないよな」

「やるしかない、けど、約束を決めよう。これからの」

私たちのこの世界を旅する目的は、祝福を解除し、私の身体を元の大きさに戻すこと。加えて、やらかしやがった神にクレームという名の拳を入れにいくことだ。正直、一発は殴らないと気が済まない。そのために、二人で決めた約束事は全部で5つ。

1つ、後悔しない選択をする。

2つ、自分たちのことを最優先事項として考える。

3つ、大事なことは話し合って二人で決める。

4つ、無闇矢鱈と殺生はしない。

5つ、お互いを呼ぶときに本名で呼ばないこと。

一つ目は当然、いつ死んでもいいように後悔のないように生きようねっていうおまじないみたいなものだ。お互い、死ぬ時はいつか死ぬ。だからこそ、どんな状況でも生を諦めないと根性あることは言い切れなかった。

二つ目としては、こんなチートな能力をもらっていれば人助けやら何やら可能なんだろうが私たちの旅にそんな余裕はない。なので、見てみぬふりをするとまでいかなくても困っている人に自ら声をかけてトラブルに巻き込まれるようなことは避けたい。あと普通に私の正体がバレると面倒なので目立ちたくないという利己的な決め事である。

三つ目は祝福のせいで離れられないため当然のことで、四つ目に関しては私たちの精神衛生上それがいいと判断したためである。あと普通に怖い。

最後の一つ、これはハタからの希望だった。

「あの、さ。言いにくいんだけど、名前で呼ぶの、やめないか?」

「名前で呼ぶとどうしても、元の世界の俺らのイメージが強くなる。そうするとさ、余計に今この受け入れ難い現実が、本当に現実なんだって、元の世界の弱い俺の意識が強くなって、向き合うのが少し怖くなるんだ。何言ってるのか自分でも、よく分かんねーけど、でも…」

ハタの言いたいことも、少しわかるような気はする。受け入れてつもりになっていても、ふとした時に魔法なんて使えない、チートなんてない元の世界の私はこの世界のものに対応できない。今いる現実と向き合うことに名前は関係ないかもしれないけど、意識が何もできない自分に引っ張られる気がする。その一瞬の怯みが命取りになるようなら、この世界での呼び名を決めるのもありかもしれないよね。

「いーよ。そうしよう。現実と向き合わないわけじゃない、今この現実を生きていくために、新しい名前を決めよっか」

「え、いいの?俺、だいぶ変なこと言ったのに」

「まぁなんとなく、気持ちはわかるしね。ちょっと古傷が痛むけど、この世界で産まれ直したってことでいいんでは?」

まぁ、ちょっとっていうか大分古傷を刺激するような気分だが。オタクは一度は通るよね、そういうの…。

「そっか、うん、ありがと!…じゃあさ、どういう名前にする?なんかこの世界に合わせてカタカナの名前とかつける!?」

カタカナはありだね……お互いに呼びやすいといいか……なんか外国の単語から取ったらオシャレかな……俺あんまり外国語知らないわ、英語とかも無理だった……ええ、私も別に得意じゃないけどな……あ、そういえば最近見た作品にいいのがあったかも……


「……うん、いい感じだな!じゃ、改めて、これからよろしくな!『プペ』!」

「なんか照れくさいな、よろしく。『オム』」




「……やっぱ、プペって言いにくくない?」

「いいの!だって、プペとオムって、なんか可愛いだろ?」

「いや、よくわかんないわそれは」



***************



「よし、名前も決まったし、まずはこの部屋の探索から始めよう。まずは、そう、ハ……じゃない、オムの後ろに隠された宝箱とか」

「え!!??そこ何かあったの!??!」

私は魔眼が備わっているので、この部屋に入った時から隠蔽された宝箱に気がついていたのだが、オムは全く気がついていなかったらしい。大分しっかり隠蔽されているので、さすがの第六感も仕事はしないか。

装飾はあまり派手なものではなくいたってシンプルな造りであり、見た目だけでいえば中身はあまり期待できそうなものではなさそうだ。特に鍵穴があるタイプでもなく、ミミックなどの魔物の気配もない。未だに見えていないオムのために隠蔽を解除してやれば、急に目の前に現れた箱に驚いて後ろにひっくり返っていた。だからあるって言ってるのに。


一応、何かあってもいいように慎重に宝箱を開ける……つもりだったのだが、見た目の割に思ったより蓋が軽く、しゃがむ私の後ろから覗き込むようにして様子を伺っていたオムの顎にクリーンヒットした。マジでごめん。

呻くオムをよそに中を覗き込むと、そこには銀の指輪と、剣のキーホルダーが入っていた。

「……何これ。指輪はまだいいにしても、何これ。修学旅行のお土産じゃん」

復活したオムがそう呟きながら剣のキーホルダーをつまんで弄んでいるが、私の鑑定結果によればそんな簡単に扱っていいものではないんだよな……まぁオムのステータスなら大丈夫だと思うけども。

この剣のキーホルダーは、ただのお土産の玩具ではない。唯一無二、世界に一つの魔剣である。このダンジョン、生まれたてだけあって世界にまだ存在していないヘンテコな魔道具もあるらしい。いるのか知らないがダンジョンマスターのセンスが独特なんだろう。見た目はともかく、性能はいい。現段階では手のひらサイズのキーホルダーだが、魔力を登録すれば、使用時に本来の姿へ変化する。そう、本来の姿、切れ味はあまりよくないがどんなものより丈夫で、まぁ重たい剣に早変わりするのだ。この剣の魔力の登録者は一人まで。そして今、手元でいじくり回し無意識に魔力を馴染ませて登録した男がいる。

「なぁ、これマジで何ーー」ズドンッッ!!

「それはね、使用時に本来の姿に戻る、とっても便利な魔剣だよ」

「な、なんで急に変わって……」

「手元でいじくり回しながら魔力を馴染ませて、使用者として登録したからだね。魔力の操作できなくても、そういうのは出来るのは発見だわ。その剣、ちょっと重たくて切れ味はいまいちだけど、すっごい丈夫だからぴったりだよ。太くて大きい大剣だから盾にもなる優れもの。ちょっと重いけど」

剣の下敷きになっていたオムだが、剣の避けて起き上がるとそのまま剣を持ち上げ、ブンブンと振り始めた。

「おー、確かに、片手だとちょっと重さ感じるけど、でも思ったより大丈夫かも。急に重くなったからびびったけど、落ち着いたらいい感じだわ!」

楽しそうに素振りを始めたので、私も指輪に自分を登録することにする。

宝箱から出てきた銀の指輪。こちらの方は私向きの性能の魔道具だ。この魔道具は登録した魔力の持ち主とこの指輪をつけた対象者の魔力を馴染ませ、登録者側からも操作供給を可能にするというものだ。これを使えば、身体強化しか出来ないオムのサポートを私側からすることが出来るため、魔力を補いながら武器に魔力を纏わせたり、オム経由で魔法を使ったりできるというわけだ。欠点があるとすれば、魔道具の魔力の登録は二つまで、要は供給元と配給元の二つしか登録出来ないという点と、登録者が指輪の半径10メートル以内にいなければならないという点かな。でもまぁ基本私たちは離れられないので問題ない。

指輪の説明をして、オムに指輪をはめてもらう。先ほども出来ていたから勝手に馴染むだろう。

「その指輪は基本、何があっても外さないでね。取られても他の人にはもうどうにも出来ないけど、これがないとオムに魔法を出力させられなくなる。魔道具は魔力で状態を保ち続けるらしいから、基本錆びないし風呂とかもそのまま入ってね」

「邪魔すぎるな……でもこれで俺も魔法が!」

指輪を四六時中つける習慣などオムにはないらしく、邪魔だからと足の指に嵌めていた。失くさなそうだからいいか。魔法が使えることに喜んでいるので、その辺には目を瞑ってもらおう。邪魔だろうけど。


武器も揃ったところで、ガイドブックの魔法をいくつか練習する。姿・気配を隠蔽して隠密行動できるものや、一時的に昏睡状態にできる魔法などなど……私は泥棒にでもなるのだろうか。あまりにも悪用できそうなラインナップ。これも深層心理を反映した結果じゃね?などと笑ったオムは一発殴った。タフだから大丈夫だろ。

一応戦闘用の魔法もあった。初級しかなかったが、基礎がわかればあとはイマジネーションで努力するので、初級があるだけマシである。

私が必死こいて練習する一方で、オムは同じくガイドブック…の付録にあった、初心者でもできる戦闘〜剣術編〜を後ろで習得しようと頑張っている。もれなく二人ともチートが仕事をしているので、一旦今日中(体感)になんとか形になりそうである。


実際に戦闘で活きるかは、また別の話だが。






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