29.結ばれた二人
「アスランは此処に住んでるの?」
「いや、前は住んでいたけど王宮に戻ったよ。でもリリスと結婚したら改造して住みたいなと思ってる。」
「ふふっ、改造?改築じゃないの?」
「改造だよ、カッコいいだろ?」
狭い部屋には大きなベッドと壁一面に本棚があり不思議な物や本で埋め尽くされている。
「リリスの母君が凄い人だってのは理解したけど結婚が大学を出てからなんて嫌だ。」
「婚約も結婚も大差はなくない?」
「大ありだ。結婚すればずっと一緒にいられるじゃないか。それに」
「それに?」
アスランは座っていたベッドの上にリリスを押し倒した。
「こんなこともしちゃうしー。」
リリスの耳元で囁くと可愛い声を漏らす。
アスランは堪らずにリリスにキスをする。
「女の子とも出来るの?」
「リリスも鈍いよね。男色は設定だよ、俺はノーマルなんだ。キスはした事あるけど。」
「舌を絡ませるキス?」
「違うよ、軽くしただけ。リリス、口を開けて。」
リリスが少し口を開けるとアスランは舌を絡ませてきた。
リリスの髪に触れていた手は次第に下がり身体にそっと触れてくる。
「するの?」
赤い顔をしたリリスは精一杯の平気なふりをしていて潤んだ瞳でアスランの頬を両手で包み込む。
「うん。続きをしてもいい?」
「いいよ。アスランなら。」
お互い初めてでぎこちなく時に笑いを交えながら二人は結ばれた。
愛している
大好き
ずっと一緒にいよう
「終わると気恥ずかしいわね。」
「それがいいんだよ。」
「どうしてそんなに結婚を急ぐの?」
「第一王子の俺が結婚しないとミハイルが出来ないしシンもリリスを欲しがっているからだ。」
「・・・え?第一王子?」
「あれ?知らなかったの?陛下を父上って呼べるの俺だけなんだよ。気付かなかった?」
リリスは裸のまま起き上がりアスランを見つめた。
アスランは笑いながらリリスの手を握っている。
どうりで母が反対しているはずだ。
次期国王の座に一番近いのがアスランなのだ。
「俺、国王に向いてないよね?」
「向いてないわ。」
「ミハイルに譲るつもりだよ。安心した?」
「絶対?約束してくれる?」
約束するよと言ってアスランはキスをしてきたがリリスはそれどころではない。
第一王子がこの怪しい屋敷に住むのも許されないだろう。
「この屋敷気に入ってるんだけどな。このベッドもさ、とある国の王様が使ってたやつなんだぜ。残虐王として悪名高い王だったんだけど民衆に殺されちゃったんだよね。その王様が集めてた拷問器具もまとめて買ったんだけどベッド以外は売れたんだ。」
リリスは羞恥心も忘れてベッドから飛び降りた。
そんな王様の使っていたベッドなど触りたくもない。
その後二人は大喧嘩に発展したのだが怒っているのはリリスだけでまさかそんなに怒るとは思わなかったアスランはひたすら謝った。
「ごめんね。ロズウェル伯爵の古い机が好きって言ってたから平気だと思ったんだ。二人で住む家を探そうか、此処は仕事として使うよ。リリスの好きな家具を買いに行こう。」
お互いに知らない事はまだまだあるだろう。
初めて言い争いをしたけれど最後には仲直り出来たのでこの先も衝突しても安心だと思えた。