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20.サリーの結婚報告

久しぶりに王都へ戻って来た。

船旅を合わせるとひと月近くは行っていたはずだ。


「お帰り、リンジー!なによこの荷物の山は!お土産なら嬉しいけど。」

「ただいまサリー。荷解きを手伝ってよ。お土産もいっぱいあるから。」


サリーはトランクを片っ端から開けるが広げてはきゃあきゃあはしゃいで手伝いにはならない。


「商家の友人にサリーのお土産に服を買いたいって言ったら大量にくれたの。欲しいだけ持って行って。」


サリーはあんぐり口を開けて固まっている。と思ったら奇声を発して踊り出した。


「私こんなに沢山の服の山を洗濯物以外に見た事ないわ。いつも同じ服ばかり着ているから。どうしよう、これなんて結婚式に着れちゃうわ。この色は新婚の奥さんにピッタリだと思わない?」

「白くて可愛いけれど結婚式ならもう少し長い丈がいいんじゃない?誰の結婚式に出るの?」

「え?私が花嫁よ。」


今度はリリスが口をあんぐり開けてしまう。

よくよく話を聞いてみるとサリーはお目当ての男性と上手くいき先日めでたくプロポーズをされたらしい。


「すご・・・まだ出会って間もないのに。いいの?」

「いいんだぁ。この人となら楽しく生きていけるって思ったから。それが一番大事じゃない?」

「そうなの?」

「人によって違うかもね。私は彼が他の人と結婚したら耐えられないって思ったし彼も同じ気持ちって言っていたわ。」

「彼が他の人と・・・。」


リリスは考えた。

ミハイル王子が他の方と結婚したとしても王子なのだから当たり前だと思うし嫌ではない。

シン王子も同様の事が言える。

オーウェンに至ってはどうぞどうぞと笑顔で送り出せる。なんなら菓子折も渡したい。

ではアスランは?


(彼は女性に興味がないもの。私にキスするのも意味はないわ。彼なりの挨拶なのよ。)


リリスは更に考えた。

一緒にいてずっと楽しく暮らせる男性とは。

彼が何を言っても楽しくて笑顔の絶えない家庭。

それは理想的に思えた。

そして気付いてしまったのだ。


(ジェレミー様なら生涯笑って暮らせる自信がある)


「リンジー何をにやにや笑ってるの?もしかして好きな人でも出来た?」

「ううん、笑って過ごせる可愛い男の子を思い出していたの。侯爵家の可愛い悪戯っ子だったわ。元気にしているかしら。」

「なぁんだ、ちびっこじゃキスも出来ないじゃない。キス出来るかどうかも重要よ。想像してみて?誰とならキスしたい?」



帰りの船でクリスも同じ様な事を言っていた。

ミハイル様と三人で寛いでいた時だ。

何番目かの王子様から縁談を持ちかけられている彼女は国に帰り次第お断りをするそうだ。

ミハイル王子が何故断るのかを聞いた時に衝撃的な答えが返ってきた。


「わたし旦那様のアソコを共有するなんて考えられないわ。仮令私が最初だったとしても次にする時は他の人の後になるでしょう?一回こっきりならまだしも永遠にループするなんて嫌なの。それにお仕事が忙しいからお妃様にはなれないわ。」


ミハイル王子がお怒りではと顔を覗いたが彼は少しばかりショックだったようだ。

リリスもついでと言わんばかりに私だけを愛してくれる人と結婚をすると言っておいたが聞いてくれただろうか。

アリシアはもの凄くすっぱい顔をしていたのを覚えている。


「リンジー?聞いてる?私この侍女部屋を出て彼と街から通うから。まだ家は探しているんだけど遊びに来てよね。」

「え、いつ?」

「決まり次第かな。寂しくなるね。」


本当に寂しかった。四人部屋だが殆ど二人で使っていたこの部屋にひとりぼっちで残されるのは気が滅入る。

後の二人は恋人の家から通っているので荷物が少し残っているだけだ。


「サリーはこのまま調理室で働くの?」

「結婚するまではね。夫婦で同じ職場にはいられないみたいだから結婚したら街で仕事を探すつもり。リンジーはどうするの?殿下の侍女になるの?」

「どうしよう、サリーがいたから侍女見習いも出来たけど。侍女になんてなりたくない。」


今までは何とも思わなかった侍女の仕事だがやり甲斐は感じない。優雅な坊ちゃんの部屋を整えて茶を淹れ頼まれた雑用をするだけの日々に正直飽きてきている。


「就活よ、リンジー。働きながらこっそり別の仕事を探すのよ。あんたなら賢いからいくらでも仕事が見つかるわ。私は赤ちゃんも欲しいから短時間の仕事がいいな。お互い頑張ろうね。」 


赤ちゃん。

リリスには別世界の話に聞こえた。


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