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ウドゥンバラの華  作者: 御手洗団子
序章:興亡盛哀の先史
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隠晦曲折~・5・~

エーカムと会ってから数日、王子は亡くなった友人の事を思い出していた。寝ても覚めても埋められていく友が脳裏に焼き付いて離れないのだ。父に嘘を衝かれたと感じた王子は自室で籠る様になり自分の価値に虚無感を抱き父に不信感を募らせた。

友人は亡くなった奴だけ、父も城に居る事は少なく最近は殆どは近衛と秘書を連れて何処かに出向いている。今月は特に酷く顔も見ていない。父との思い出は片手で数える程でしかないが笑っていた事だけは覚えている。それは、親の期待に応えれた為だと気付く。また、王子の記憶は友人一人と父親だけしかなく、父親への不信感と認識のずれが友人の思い出を心地よくさせ、王子が約束したどんな病も治す薬を作ろうと決心させた。

そんな時、ふとあの黒い果実を食べた光景を思い出し、芋ずる式に神樹の事も思い出した。願いは一度しか叶えられないが自分が目指す高みと友人との約束を果たそうとする気持ちが永劫の命を欲させた。

夜中、ランプに群がる蛾の気持ちが理解できた気がした。神樹に引かれ出したのだ。気付くといつの間にか神樹の前におり、見覚えのある子供たちと一緒にいた。ちらっとだが皆の掌や甲に印章が見えた気がした。そして気付いた時には神樹に願いをしていたのだった。

〈その願いで良いのだな?そのような私欲にまみれた願いは何時か身を亡ぼすぞ〉

すると一人が大声を張り上げる。

「いいから叶えさせてくれよ」

神樹は其れに答え

〈承知したでは叶えてやろう〉

そして神樹から金色の光が身を包むと力が湧き出てくるのを感じる。皆は願いが叶い歓喜する。一人が近寄りナイフは有るかと聞いてきた。

懐から出し手渡すと突然自身の腕を切った。血がぼたぼたと流れるも直ぐに止まり傷が塞がっていく。そして次は自分の心臓に突き立て刺す。柄まで食い込ませたナイフを引き抜き血潮がまき散り、血だまりを作りその場に倒れる。そして瞬く間にその致命傷までもが塞がり治る。そいつは寝ころびながら笑う。他の者もそいつと似た行動を取り始める。そいつは皆に聞こえる様に話し出す。

「もしかして皆不老不死になりたいと願ったのか?僕もそうさ奇遇だね。それとさ自分の本当の母親って知ってる?この森の統治者だよ。皆ね。なんで皆ばらばらになったのか分かる?それは要らなかったからさ。捨てられたんだよ。あの女は預言者だから知ってたんだよ俺らに資格が無いことをさ。けど俺はただ今の国を継いであの女を崇拝するような事はやだね。君らはどう?」

「でもあの時は今じゃないって話にならなかったっけ?いつかはこの中から出るんでしょ?」

「まだこの森の統治者に固執してんのか?馬鹿馬鹿しい」

「いや馬鹿馬鹿しくないでしょ」

「じゃあここで更に詳しく話をしてやろう、実は俺らの他にもう一人子供がいたんだよ。でもそいつはずっとこの森に居たみたいなんだよ。じゃあなんで居られたと思う?じゃあ何でそいつがあの時の会議で居なかったと思う?後継者だったからさ。俺らの視界に入れさせたくなかったのさ。皆は悔しくないのか?自由な選択も無く王位を継がされ衆愚の為に働く。操り人形みたいじゃないか。何か政策をしても全員が幸福を受けられる訳でも無いのに。それを理解できない鈍才が一向に減らない。君たちの国王も民衆も誰も君たち自身に価値を見出していないのさ。だが父上が治める国は違っただろう?皆自分の力で生きようとしている姿を見てきたろ?だから俺の父上の支援を受けようとしたのだろう?なんとなくでも分かってたんじゃないか?生まれた境遇で価値を決められていることに。それに意味が有るのか?君らの父親たちの本心は後継者としての資格を有してるかでしか見ていない。自分たちの期限が近づいてるのを理解してるのか?誰も自分の中身を見てくれないんだぞ。それに母親も一度も顔を見せなかったじゃないか。きっと僕たちには端から興味は無いんだよ。私たちは見捨てられる前に自分たちの価値を築かなきゃいけないんだよ」

「だけどさ、狙ってそんな事やる意味あんの?十二人の内一人でも現れたらその国はどうなるのさ。統治者の親になる訳でしょ?」

「そしたらこの大陸全土支配出来る可能性が出てくるということだよ!まぁ仮に出来なくても国王の立場よりか権力は上がるからね」

「じゃより一層俺らの中から出しちゃ駄目なんじゃないの?」

「それは神樹が関係してるんじゃないか?なんか・・・こう・・女の人を信用してるんじゃなくてその人の言動を信用してるっていうか・・・神樹に指示されたとか?とかそんな感じじゃないのか」

「どういう事さ?」

「普通だったらそんな上手い話信じないけど信憑性にたる証拠がでてきたんじゃないってことでしょ?じゃなきゃ信じれないじゃない」

「だったら、僕らは最悪の事態を考えなきゃダメなんじゃない?この中から誰も選ばれなかった場合の事をさ」

「だからその話を今したんでしょうが」

その話は俺らを釣り込むには十分で怒りと憤りと虚しさの感情が溢れ支配し、脅迫観念に迫られる。そして僕らは僕らの目指す道を歩み始める。


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