俺とワタシのちょっと変わった同居生活(仮)
木造3階建て、築60年の年季の入ったアパートに俺は住んでいる。
引っ越したのは今から2年前、勿論一人暮らしだ。
今ではこのボロいアパートにも愛着があって過ごしやすく快適だ。
なにより夏が涼しい。
その理由は………
「なっちゃん、ちょっと寒い」
『寒い?ごめん、冷気出過ぎてたかー』
今はまだまだ暑さが残る秋。
しかし、室内は快適に冷やされている。いや、今は少し寒いくらいだ。
この室内を冷やしてくれるのが彼女、同居人の那智だ。
なっちゃんと普段から呼んでいる。
『これくらいかな?』
「うん、ありがとう」
『いえいえ〜』
すぐに温度調節をして確認してくれるなっちゃんはいい子だ。
綺麗な黒髪がサラリと動いて首を傾げる。
青白い肌に薄ピンクのワンピースを着たなっちゃんはちょっとだけふくよかだ。だが、彼女の優しい雰囲気にとても合っている。
ニコッと笑って俺を見るなっちゃんの口からは血が出てるが。
引っ越し当時一人暮らしだったのが、開始早々に同居人ができた。
そう、元からこの家に住んでいる
地縛霊のなっちゃん
彼女が、俺、佐々木健人の同居人である。
「健ちゃん、準備できたよ」
「うん、今行くね」
部屋を薄暗くしてソファに2人で並んで座る。
そして時計が9時を指した時に始まった『怖さは辛さの数百倍、ホラー100連発』という意味のわからないタイトルのホラー番組を見だした。
最初は明らかに合成だろー!と見ていたが、そのうち室内が寒くなってくる。
まだ暑いはずなのに、暑いから食べていたアイスが何故か凍っていく。
「な、なっちゃん?」
『っっ健ちゃん……こわい……!』
口から血を吹き出しながら青ざめた顔でカタカタと震えながら言う那智を見て、健人は思う。
「(この番組の中のどれよりも完全なるホラー!!)」
そんな2人はのチグハグな同居は、意外と楽しくやっているようで
憑かれている健人は思っていた以上に恐怖で泣く可愛い地縛霊の頭を撫でて今日も金縛りにあいながら就寝するのだった。