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魔法世界の幼女に転生した僕は拗らせ百合少女達に溺愛されています!?  作者: 十一屋 翠


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18/22

第18話 はじめてのバトル

前回のあらすじ「中学生からは呪文を唱える。オリジナル言語もおっけー」

今回のあらすじ「大会本番が始まるよー」


『それではこれより蜂植町魔法大会を開催します』


 大会アナウンスと共に、魔法大会が開催される。


「いよいよ始まったね」


 僕は大会用の魔法具を装着しながら周囲の選手達に視線を送る。

 僕達が参加したのは子供の部のチーム部門。

 子供の部だけあって大人はいないけど、僕達みたいな低学年の子は殆どいなかった事もあってちょっと目立っていた。

 その所為か受付のおじさんの眼差しが微笑ましさ半分心配半分だったのがなかなかキツかった。

 まぁメンバー全員一年生だからそうもなるか。

 

「私達の試合は第二試合ですね」


 大会は市民運動場を使っていて、会場全体にいくつもの試合枠が作られていた。

 それを使って同時に試合を進行していく形式みたいだ。

 このあたり、普通の運動会と違って多人数のチーム戦じゃないからなんだろうね。

 どっちかと言うと漫画とかでよくある格闘大会の予選会場みたいなノリなんだろうな。 


 僕達が第二試合の開催される試合枠にたどり着くと、そこには既に対戦相手の姿があった。


「おいおい、俺らの相手低学年じゃん」


「マジかよ、流石に可哀そうじゃね?」


「一回戦楽勝で良いじゃん」


 どうやら対戦相手は高学年らしく、全員が1年生の僕達は完全にナメられていた。


「咲良ちゃんを馬鹿にしてる……呪う? ねぇ呪う?」


「許せませんね。腕の5、6本折りましょう」


「まってまって二人共」


 何でこんなに血の気が多いのウチのチームは。


「ありゃー、1年対5年かー。可哀そうに」


「せめてもう少し年が近かったら良い勝負が出来たかもしれないんだけどねぇ」


「頑張れ1年達ー!」


 観客も完全に敗北ムードらしく、負けが確定している僕達を哀れんで応援してくれる始末だ。

 まぁ分かるけどね。ちょっと前まで幼稚園だった1年生と、そろそろ高学年の5年生じゃどっちが強いかと言われたら答えるまでもない。


「これより第二試合、チーム咲良対チームビクトリーズの試合を始めます」


 ちょっ!? チームビクトリーズって、完全に小学生センスじゃん! ああいや、リアル小学生か。

 いかんいかん、ちょっとネーミングセンスにやられそうになった。


「始めっ!」


 試合開始の号令を危うく、聞き逃しそうになった僕は、慌てて牽制の魔法を放つ。


「春雷!!」


 僕の放った魔法が相手チームの右端の選手に炸裂する。


「うわぁっ!?」


「健太!?」


 1年の魔法をモロに喰らった事で、彼のチームメイトも驚いているけれど、それで終わりじゃないんだ。


 僕の放った春雷は、健太と呼ばれた右端の選手に命中したあと、そのまま真ん中の選手を貫き、左端の選手に襲い掛かった。


「「えっ? う、うわぁぁぁぁぁぁっ!!」」


 結果、仲間が攻撃を受けた事で注意が散漫になっていた二人は、あっさりと追撃を受ける。


「よし! 魅環ちゃん! 追撃行くよ!」


「はい!」


 僕達の作戦は簡単だ。まず僕が自在に軌道を変える事の出来る春雷で相手チーム全員にダメージを与える。

 次いで虚を突かれた相手チームに僕と魅環ちゃんが突撃し、一人ずつ敵チームの選手を叩いて行く。

 そして燐瑚ちゃんは他の選手を足止めする役割だ。



 この作戦は、燐瑚ちゃんと魅環ちゃんからの提案だった。

 と言うのも、作戦を練る為にお互いが使える魔法を確認しあってたら、僕の春雷に二人が喰いついたからだ。


 春野先生が教え、いや見せてくれた春雷は、術者の意思に沿って自在に軌道を変える事の出来る魔法だったんだけど、そんな魔法は小学生が習う魔法にはないと二人から教えられたんだよね。

 確かに春野先生も高等魔法だって言ってたもんなぁ。


 で、それならこれを使って相手チームを一網打尽にしてしまおうという意見が出たんだ。

 そして作戦は大成功。

 チームビクトリーズは全員が綺麗に僕の魔法を喰らって吹き飛ばされた。

 あとは一人ずつ倒していけば……


「勝者! チーム咲良!!」


「……え?」


 さぁ止めを刺すぞ! と近づいた瞬間、突然審判からの試合終了の号令が鳴り響いた。


 っていうか、僕達が勝った? 何で?


 一体どういうことかと確認しおうとしたら、魅環ちゃんがあっと声を上げる。


「魔法具が」


「え? 魔法具?」


 何のことかと思って相手チームを見ると、彼等の胸の魔法具が弾け飛んでいたんだ。


「あれって……」


 確かダメージを身代わりしてくれる魔法具の筈。


「咲良ちゃんの魔法であれが壊れたから私達の勝利になったみたいね」


「え? でも一発当てただけだよ!?」


 ホントにたった一発当てただけで勝てちゃったの!?


「「「「「うぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」


 僕達が勝利した理由を理解したその時だった、突然周囲から物凄い歓声が上がったんだ。


「え? 何々?」


「すげぇぞお嬢ちゃん!! 5年生に勝っちまいやがった!!」


「凄い魔法だったわよー!!」


「一撃で全員倒すなんて信じられねぇ!?」


「マジでスゲェよ!!」


 観客達の歓声は僕達に向けられたものみたいなんだけど、それにしても皆興奮し過ぎじゃない!?

 まるでプロスポーツ選手の試合を応援しているみたいな大歓声だ。


「分かる。そもそも、咲良ちゃんの魔法は小学生が使える筈のない高等魔法だから」


「だよね。私も咲良ちゃんの今の魔法を試合で初めて見たら絶対ああなっちゃうよ。寧ろ感極まって抱きついてキスしちゃう!」


 いやさすがにキスはちょっと……


「それに、今の私じゃどんなにがんばっても中学生の魔法が限界だろうからね」


「制御もですけど、なにより私達じゃ魔力が足りないですから」


「そうなの?」


「うん、普通高等魔法なんてどんなに才能があっても、魔力が中学生くらいに成長しないと無理だよ」


「はい、こればかりは体の成長の問題ですから」


 知らなかった。高等魔法を使えるってそこまで凄かったのか。

 自分の魔力が規格外だって聞いてはいたけど、探せばそれなりに高等魔法を使える魔力の持ち主はいると思ってたんだよね。


「でもさすが咲良ちゃんだよ! 5年生相手に一発で勝っちゃった!」


「はい、流石にもっと苦戦するかと思ったんですが、私達の予想以上です! あの威力は本当に驚きでした!」


 二人は僕の魔法の威力にかなり興奮してるらしく、密着しながら凄い凄いと騒ぐ。

 というか、かなり密着しすぎでは?


「ええと、ほら、次の試合が始まるし、向こうに行こうよ」


 僕は興奮する二人を引きずって、試合会場を後にする。

 この試合が周りにもたらした影響を知らずに。


 ◆観客達◆


「お、おい見たか今の……? 1年が5年生に勝っちまったぞ?」


「お前が見たって事は、俺の見間違えじゃなかったってことか……」


 目の前で起きた出来事が信じられず、俺達は試合が終わった後も呆然としていた。

 だってそうだろう。魔法を覚え始めた1年生が勝っちまったんだぜ?

 しかも明らかに高等魔法を使って一発でだ。


「まじかよ……」


「何だ今の魔法? 相手の選手全員を一発で失格させちまったぞ」


 俺達だけじゃなく、他の連中も今の信じられない試合に動揺している、しないわけがない。

 自分達の見たものが幻じゃないとようやく実感がわいてきた事で、客席のざわめきが次第に大きくなっていき、遂には大歓声へと変化していった。


「とんでもないガキが出てきたもんだ……」


 アイツ等は間違いなくこの大会の台風の目になるぜ!


「うぉぉぉーっ!! さすがは咲良じゃわい! 見事な大勝利じゃ!!」


「お館様、騒ぐと気づかれます! お静かに!!」


「これはでーぶいでーで商品化せんとあかんじゃろ!」


「そんなことしたら本気で嫌われますよ! あと今どきはブルーレイです!」


 何か向こうで騒いでる連中がいるみたいだけど、子供が勝ってはしゃいでるのかね?

春野「ふはーっ! さっすが儂の孫じゃわい! グッズも作らんとな!」

鈴木「そんな事するからお嬢様に駆け落ちされるんですよ……」

あとがき「コーナーを乗っ取られた」

母「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ」

次回予告「ひぃっ!」


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