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魔法世界の幼女に転生した僕は拗らせ百合少女達に溺愛されています!?  作者: 十一屋 翠


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17/22

第17話 全国大会の記録

前回のあらすじ「名も知らぬ無垢な小学生が本人の知らない所で公開処刑に遭いました」

今回のあらすじ「そっとしておいてやれよ」


「じゃあ次は全国大会の方を見ようか」


 ディスクを変えて今度は全国大会の動画を見る事にする。

 すると今度は学校の運動場から、競技場のような会場に移った。


『これより葛島(かつしま)中学、播曽良(まそら)中学の試合を開始します』


 アナウンスと共に、三人一組のチームが二組、試合会場に入っていく。

 そして審判の合図と共に試合が開始されると、両チームが陣形を組む。


 葛島中学は前衛が一人、後衛が二人の陣形。

 対して捲曽良中学の陣形は真逆で、前衛が二人で後衛が一人だ。


 葛島中学の後衛の一人と捲曽良中学のチームの後衛が魔法を放つ。


「風よ! 焔を纏いて万物を焼き尽くせ! 『炎空』!!」


 葛島中学の後衛が放った炎が風に煽られ広がりながら、勢いを増して捲曽良中学に襲い掛かる。


「水よ! その身を凝縮し万物を貫け! 『貫摘!』」


 対して捲曽良中学の後衛が放ったのは、細い水の槍だった。

 明らかに捲曽良中学の攻撃の方が小さくて不利に見えたんだけど、葛島中学の魔法とぶつかった瞬間双方の魔法が掻き消えた。


「えっ!? 消えた!?」


「今のは葛島中学の魔法が広がり切る前に核となる部分を貫いたんですね。範囲型の魔法は拡散しきる前に核を貫かれると相殺されてしまうんです」


「へぇ、そうなんだ」


「それに葛島中学の魔法は凝縮する事で少ない魔力で魔法の威力を高めていたね。その分浮いた魔力を速度に回す事で、相手の魔法が拡散しきる前に届いたみたい」


「そ、そうなんだ……二人共凄いね」


「「うふふふふっ」」


 とても小学一年生とは思えない分析力に僕は舌を巻く。

 燐瑚ちゃんは良い所の娘さんだけだし、魅環ちゃんもスポーツ選手の家柄みたいだから、二人共英才教育をうけてるんだろうなぁ。

 ……うーん、もしかしてこの中で僕が一番足手まといなんじゃ?


「ところでさ、ちょっと気になったんだけど」


「何々? 何でも聞いて咲良ちゃん!」


「いえ、私に聞いてください」


「いや、今、あの人達魔法を使う時に……呪文……を使ったよね?」


 そう、試合をしている二人の選手は明らかに呪文らしきものを唱えてた。

 けど、僕が勉強した一年生の教科書に呪文なんてなかったし、春野先生達も呪文の事は教えてくれなかったからだ。


「ああ、そういう事ね。ええとね、私達は小学生だから呪文のいらない簡単な魔法しか習ってないんだけど……」


「中学生からは制御の為に呪文が必要な魔法を学ぶようになるんです」


「ちょっ! それ私の説明!!」


「早い者勝ちです」


 成る程、だから誰も呪文の事を教えてくれなかったんだ。

 けどそうか。この世界にも呪文って存在するんだ。

 ちょっとワクワクするな……あ、いや別に呪文があった方がカッコいいとか、そういうことは思ってないよ! ホントだよ!


「だから中学生以上の選手は、呪文を唱える為の試合づくりも考えないといけないんです」


 と、魅環ちゃんが補足してくれた。

 なるほど、ゲームでいう隙の多いタメ攻撃みたいなものなんだろうね。


 とお喋りをしている間に、両チームの前衛達が飛びだして接近戦が始まる。

 前衛はやっぱり身体強化魔法の使い手達で、とても生身の人間とは思えない速さで格闘戦が繰り広げられる。

 しかも選手達は手に炎を燃やしたり、突然空中で軌道を変えたりしながら戦う。


「うおお、凄い……」


 人間ってこんな動きが出来たんだって感じだ。完全にバトル漫画の世界だよ!


「あっ、全員複数属性の持ち主だよ。葛島中学は自然魔法を体に纏って攻撃力をあげているのね」


「捲曽良中学は風魔法でジャンプ中の軌道を変えているようです。もう一人の前衛は空間魔法で正面の空間をずらして相手の攻撃を防いでいますね。結構高度な魔法の使い方ですが、その分集中力と魔力を消費します」


 葛島中学の前衛は善戦しているけれど、やっぱり二対一はキツいらしくてじりじりと押されていく。

 しかしそこで沈黙を保っていた葛島中学のもう一人の後衛が動き出す。


「ハイヒール!!」


 どうやらこの人は回復魔法の使い手だったらしく、前衛の傷が回復し戦線を立て直す。

 すると捲曽良中学の前衛の片割れが猛烈なスピードで回復魔法使いに向かって行く。


「風魔法で加速して距離を詰めるつもりですね。足の速い前衛選手で後衛を潰すのが捲曽良中学の作戦のようです」


 なるほど、回復役をさっさと倒して二対一の優位を取り戻すつもりか。

 ゲームでもお約束の戦術は、現実でも有効のようだ。


 葛島中学の前衛が止めようとするんだけど、残った前衛に阻まれてしまう。

 もう一人の後衛は、捲曽良中学の後衛の魔法を相殺するのに手いっぱいみたいだ。


 そして捲曽良中学の拳が回復魔法使いに襲い掛かる。

 ただここで一つ誤算が発生する。


 なんと狙われた葛島中学の回復魔法使いが前衛の攻撃を華麗に受け流したんだ。

 回避でも防御でもなく受け流し。

 これには格闘技の素人の僕でも、回復魔法使いが只者ではないと分かった。


「この回復魔法使いは身体強化魔法も使えるみたいですね」


 まさかの殴りヒーラーとは思わず、捲曽良中学の前衛は綺麗に葛島中学の罠にはまって猛烈な反撃を受けてしまう。


『ぐはっ!!』


 よっぽどいい攻撃を受けたらしく、捲曽良中学の前衛の膝が崩れる。


『はっ!!』 


 そして葛島中学の回復魔法使いが猛ラッシュを喰らわせると、捲曽良中学の選手の胸に装着された魔道具が発光する。


『捲曽良中学2番、失格!』


「魔道具が限界までダメージを受けたので、あの選手は失格になったんです。チーム戦では一人がダメージを負い過ぎるとああやって失格になってしまうので、ダメージコントロールも大事なんですよ」


 そして2対3になった事で戦況が大きく変わり出した。

 捲曽良中学は人数が減ってしまった上に、消耗させていた葛島中学の前衛は回復魔法でほぼ全快。しかも回復役が前衛もこなせる事が判明したので、前衛の優位が逆転してしまったんだ。


 後衛の魔法使いは完全に相手に封殺されていて仲間の援護が出来ない為、捲曽良中学の前衛はじりじりと削られていって遂に二人目の失格者となってしまった。

 あとは後衛一人だけなので、3人でフルボッコだった。


 一応後衛も二属性使いだったから、奥の手である2属性の魔法を組み合わせたコンボを使おうとしていたんだけど、三人からの波状攻撃を受けてコンボをうまく使えず、そう時間を置かずに失格になってしまったんだ。


「これは捲曽良中学の作戦ミスですね。風魔法使いの前衛がもう一人の後衛に向かっていれば状況は変わっていたかもしれません」


「これ、回復魔法を使ったの完全に誘いよね」


 なるほど、確かに言われてみればそこまで含めての作戦だったのかもしれない。


「いやー、凄かったね。魔法ってこんなに凄い戦いが出来るんだ」


 完全に自分の常識を越えた戦いに、思わず見入ってしまったよ。


「僕もあんな風に魔法を使いこなしてみたいな」


「咲良ちゃんなら出来るよ!」


「そうです。何しろ咲良ちゃんは世界で唯一の全属性の持ち主で、凄い努力家なんですから」


 ふとそんな願望を口にしてしまったんだけど、燐瑚ちゃんと魅環ちゃんは笑うことなく応援してくれた。


「うん、ありがとう二人共! 僕も頑張るよ!」


 ちょっと不安だけど、ワクワクしてきたぞ!

 僕もあんな風に魔法を使えるよう、もっともっと訓練しないとね!!



「そういえば何で魔法って日本語と英語があるの?」


 試合映像を見終わった僕は、試合を見ていて気になった事を聞いてみる事にした。

 土曜日の魔法特訓で習った授業でもそうだったんだけど、魔法の名前が和風だったり洋風だったりと統一されてないんだよね。


「あーそれね。魔法って同じ効果の魔法でも国ごとに呪文が違うのよ。で、そのせいか呪文の種類によって威力も変わるみたいなの」


「呪文や魔法の名前が違うので、効果や威力が違う別の魔法だと考えられています」


 僕の疑問に燐瑚ちゃんと魅環ちゃんが交互に応えてくれる。


「で、学校で教える魔法って国によって方針が違うのよ。自分の国の魔法だけって国もあれば、優れているならどこの国の魔法でも構わないって国とかね」


 なるほど、分かりやすいから日本語に英語混ぜて使うとか、国産品よりも性能の良い海外からの輸入品を使うみたいな感じなんだ。


「呪文の必要な魔法は語学の勉強も必要になるので自国の魔法を使う国が多いですが、逆に呪文の必要ない簡単な魔法は他国の優れた魔法を使う事に抵抗のない国が少なくないですね。あと魔法は開発した人が命名するので、日本人でも英語の魔法名を付ける人が居ます」


「魔法の専門家の家系は代々伝わる秘伝の魔法を持ってて、そういう魔法は自分の国の言葉を使うみたいよ」


「秘伝の魔法!?」


 なにそれ! 超気になるんだけど!


「あと、珍しい所ではオリジナル言語で命名する人もいますね」


「え?」


 それ、厨二病なんじゃ……

あとがき「どんな世界にも右手が封印されている若者はいるのだな」

次回予告「そして将来黒歴史にもだえ苦しむのか。ある意味呪いだ」

あとがき「助けて解呪魔法!!」

燐瑚「そう言うのは専門外だから」


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