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ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒純愛  作者: 釧路太郎
第二部 二人だけの世界編
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二日目の夜は恐怖の一夜

 私は二人が温泉に入りに行っている間に洗濯をしていた。もちろん、ある程度手洗いをしてから洗濯機に入れてはいるのだけれど、少しだけ申し訳ない気持ちになってしまった。レベッカはずっと号泣しながら謝ってくれたのだけれど、なぜかまー君も一緒になって謝ってくれたのだ。よくよく考えてみると、まー君が謝ることなんて何もないのだけれど、そんなところでもまー君の優しさを感じることが出来て嬉しかった。

 旅館の人はここで貸し出している浴衣なのでこちらで洗いますよとは言ってくれたのだけれど、なんとなく私が洗ってあげた方がレベッカ的にも心の傷が多少は浅くなるような気がしたので、その申し出は丁重にお断りして私が洗うことにしたのだ。さすがにパンツを一緒に洗うのは色々な意味でよくない事だとは思うのでずっと手洗いをしているのだけれど、そのパンツは大きさは普通なのにプリントされている柄が女児アニメのものだというのが気になっていた。いや、温泉の脱衣所で見た時から気にはなっていたのだけれど、こうして手に取って見てみるとレベッカの容姿とは不釣り合いなような気もしていた。髪の色が同じキャラクターがいるにはいるのだけれど、髪の長さが違うのでレベッカの方は意識はしていないようだ。


 洗濯も無事に終わって汚れもある程度は落ちているのだけれど、どうしても落ちない染みがいくつか残っていた。染み抜きをやろうにも、あまり強い洗剤を使ってしまうと浴衣の生地自体が傷んでしまいそうなので、どうしたらいいものかと悩んでいたところ、私の近くにやってきた旅館の人が

「いっそのこと染め直しちゃいましょうか。少し暗めの色の浴衣もちょうど欲しかったところなんですよ」

 と言って、洗いたての浴衣を持っていってしまったのだった。本当に染め直すのかはわからないけれど、レベッカが戻ってきたときに聞かれたらそう答えることにしようとは思った。


 二人が戻ってきたのはそれからしばらくしてからなのだが、二人の間に先ほどよりも壁があるように見えていた。きっと、行き帰りに会話らしい会話なんてしていないんだろうなという事は容易に想像がついた。それでも、まー君は気を遣って話しかけていたと思うし、レベッカも謝ってばかりではなく何かしら伝えていたりはしたのだろう。ただ、それがうまく行かなかったのだろうという事は簡単に見て取れた。

 二人の仲が良くなろうが変わらなかろうが私にはどっちでもいいことではあるのだけれど、二人の気持ちが沈んだままというのは私にとっても嬉しいことではない。どちらかと言えば、昼間や一緒に温泉に入っていた時のように明るいレベッカの方が見てて面白いとは思っていた。なぜなら、レベッカの好意が向いている先がまー君ではなく私になっていると思われるからだ。まー君の事よりも私の事の方が好きだという人には優しくしてあげたくなってしまうものなのだ。


「あの、今日はごめんなさい。二人の旅行に変な思い出を追加しちゃってごめんなさい」

「別に謝らなくてもいいよ。浴衣だったら旅館の人が新しい色に染め直してわからないようにしておくって言ってたからね」

「それって、もう元には戻らないって事なの?」

「元に戻らないんじゃなくて、あえてリメイクするって事なんじゃないかな。レベッカもどんな感じだったのかわからないくらい変わってる方が気が楽なんじゃないかな」

「どうだろう。私は何枚も写真を撮っちゃったからどんなデザインだったか見たら思い出しちゃうかも」

「一つ一つが違う柄ってわけでもないだろうし、同じのをいくつか作って染め直すのかもしれないからさ。旅館の人も楽しい旅行なんだからあんまり気にしないでいてくれていいよっていってたからさ」

「でも、私はサンドイッチもダメにしちゃったし、浴衣もダメにしちゃったよ。どうやってお詫びをしたらいいのかわからないよ」

「それはそうかもしれないけどさ、温泉に入ってた時みたいに明るくて元気なレベッカでいてくれた方がみんなも嬉しいと思うよ。あと、浴衣は旅館の人が持っていってくれたんだけど、パンツだけは別に手洗いしてたからね。なるべく痛まないように優しく洗っておいたよ」

「ちょっと、それは洗わないで捨ててくれても良かったのに。いや、むしろ捨てて欲しかったよ」

「本当に捨ててよかったの?」

「だって、お漏らししちゃったパンツなんてもう履けないでしょ」

「そうかもしれないけどさ、そんな事を言ってこの子達が悲しんじゃうんじゃないかな」


 私はレベッカのパンツを広げて見せてしまった。広げて見せた後になって、ここにはまー君もいたという事を思い出したのだけれど、気付いた時にはもう手遅れだった。レベッカの可愛い女児パンツはまー君の視界にハッキリと入っていしまっていたのだった。

 レベッカは私の行動に対して怒ろうとしているのだけれど、きっと私に対して負い目を感じているためなのか強く言えないでいる。一方のまー君はレベッカのパンツを見ても特に何のリアクションも無かった。


「へえ、今でもそんな感じのパンツって売ってるんだね」

「え、今でもってどういうこと?」

「どういう事って、妹の唯が去年くらいまでそんな感じのパンツを履いてたからさ。キャラクターの顔とかは覚えてないんで同じ物かはわからないけど、そんな感じのを履いてお風呂上りにウロウロしてたと思うよ」

「ねえ、それってさ、唯ちゃんがお風呂上りにパンツ一枚でウロウロしてたってこと?」

「いや、パンツ一枚ではなくて、上にシャツとか着てたと思うよ」

「着てたと思うって事は、裸ではなかったってことだよね?」

「そうだね。いくら何でも裸でウロウロしているのなんて幼稚園くらいまでじゃないかな」

「そっか、良かった。唯ちゃんとは言え、まー君に日常的に裸を見せていたらどうしようかなって思っちゃった。ちょっと勘違いしちゃったかもね」

「いくら家族とはいえ、唯だって羞恥心はあるだろうから裸でうろつくことなんてまずないよ。あったとしてもさ、僕も父さんも服を着ろって注意してると思うしね」


 危なく私の中で唯ちゃんに対する評価が変わるところだったんだけど、そう言う事にはならずに済んでよかった。いくら兄妹とはいえ、魅力的なまー君がいつも一緒に居て変な気にならないとも言い切れないもんね。


「ねえ、正樹の妹ってもしかしたら、私と仲良くなれるのかな?」

「多分仲良くなれると思うよ。見た感じだけど、趣味とかも合いそうだしレベッカと意外と相性良いのかもしれないな」

「そうだといいな。ねえ、いつか正樹とみさきの住んでいる街に遊びに行った時にさ、正樹の妹を紹介してもらってもいいかな?」

「もちろん。日程がわかってはやめに教えてくれれば妹にも予定をいれないようにって言っておくからさ。遊ぶって言ってもゲームしかやることないかもしれないけどね」

「全然ゲームでもいいの。何となくだけど、話を聞いていると仲良くなれそうな感じがしてくるから不思議ね。それと、二人には申し訳ないんだけどさ、今日の夜は一緒にご飯を食べてもらってもいいかな?」

「私は構わないけど、どうかしたの?」

「あのね、パパの仕事が長引いてしまっているみたいで、夜の十時を過ぎてしまうかもしれないんだって。ママもパパと一緒だから私は一人でご飯を食べることになるんだけどね、二人さえよければ一緒にご飯を食べてもらってもいいかな?」

「僕もみさきも大丈夫だよ。それにさ、僕らはもっとレベッカと仲良くなりたいなって思ってたからね」

「ありがとう。嬉しいよ」

「さあ、そろそろ晩御飯の時間になりそうだけどさ、みさきは明日の昼で帰るってことで良いのかな?」

「うーん、私はもう少しここに居たいなって思うよ。まー君は?」

「僕ももう少しここにいてもいいかなって思うな。もうちょっと探検したいところも見つかったしね。じゃあ、旅館の人にもう少し泊まってもいいか聞いてくるよ」


 まー君は旅館の受付に行って宿泊の延長をお願いしてた。まー君が途中で一度こちらを見て左右の手で一と二を作っていた。おそらく、一泊延長なのか二泊延長なのか聞いているのだろう。私は指を二本立ててそれに応えた。


「ねえ、二人が明日も泊まるのなら、明日の夜に一緒に露天風呂に行ってもらってもいいかな?」

「ええ、一緒に温泉に行きましょう」

「良かった。断られたらどうしようかと思ったよ」

「断るわけないじゃない。でも、明日はたくさん牛乳飲んだら駄目よ」

「わかってるよ。もー牛乳はこりごりだもん」


 宿泊の延長手続きをしてくれたまー君が戻ってきたので三人で仲良く食堂へと向かっていった。ランドリールームを出た時から薄々気が付いていたのだけれど、今日の晩御飯は世界各地のカレーが用意されていた。ご飯もナンも食べ放題のようだが、まー君とレベッカはカレーを見て固まっていた。


「毎週金曜恒例のカレー祭りだよ。今日は本格的なスパイスカレーにスープカレー。欧風カレーに日本式のカレーもあるよ。もちろん、今回も麺類を用意してあるから好きなだけ食べていってね。そばにうどんだけじゃなくラーメンや焼きそばも用意してあるからね」


 今日が金曜日で毎週金曜はカレーの日なのだ。これは恒例行事なのでレベッカが何かをしたとか関係無く毎週金曜はカレーなのだ。もちろん、私は頭の中ではわかっているのだが、旅館の人も食堂の料理長も何も意図してやっている事ではないのだ。

 それでも、まー君とレベッカがカレーを食べるスピードはお昼とは比べ物にならないくらゆっくりとしたものだった。食事は焦らずにゆっくりいただく方がいいと思うな。

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