お姉さんとお姉さん
お姉さんは僕の目をじっと見つめているのだけれど、僕が全く目を逸らさずにまっすぐに見つめていたのでお姉さんの方が先に目を逸らしていた。僕はそれが何だか面白くなってしまい、お姉さんが逸らした目をずっと見ていたのだけれど、お姉さんは僕の目を隠すように手を伸ばしてきた。自分からやってきたのに随分と恥ずかしがり屋な人だと僕は思っていた。
「ちょっと、そんなに真っすぐに見つめられたら照れちゃうじゃない。なんでそんなに真っすぐに見てくるのよ」
「いや、別に意味は無いですけど、何かあるのかなと思ってみてただけです」
「何かあるのかって、それはあると思うけど、だからって見過ぎだよ。もしかして、私の事が好きになっちゃったのかな?」
「いえ、それは無いです。僕が好きなのはみさきだけなので」
「もう、どうしてそんな事を言うのよ。今は私と君の二人だけなんだから他の事は考えなくてもいいのに」
「そこでもう一人のお姉さんが寝てるじゃないですか。寝てなくても僕がお姉さんと何かすることはありえないですけどね」
「そんなこと言ってもさ、若い体は正直なんだよね。ほら、お姉さんの事を見て興奮してるでしょ。…………してないの?」
「はい。お姉さんは魅力的だと思いますけど、僕はみさきがいるんで本当に他の人に興味が持てないんです。友人としてなら仲良くなれるとは思いますが、それ以上の関係にはなれないですね。それはお姉さんが悪いんじゃなくて、僕が勝手に決めてることですから。それに、お姉さんは一人の女性として見ても魅力的だとは思いますよ。ただ、僕にはみさきがいるってだけの話ですから」
「「ちょっと待ってよ」」
僕が話していたお姉さんがそう言うのはわかるけれど、お酒で潰れたお姉さんまで僕に突っかかってきたのはなんでだろう。何をしても起きなくなるというのは嘘だったのだろうか。
「君くらいの若い子だったら体が勝手に反応しちゃうんじゃないの?」
「そうよ。良美がこんなに迫ってるんだからそう言うもんでしょ」
「それなのに、私の事は魅力的とか言っても説得力無いじゃない」
「じゃあさ、良美じゃなくて私のを見たらどうなるのかな?」
お酒で潰れていたはずのお姉さんが僕の前で浴衣をはだけさせていた。みさきよりは大きい物がそこにはあったのだけれど、僕はそれをじっと冷静に見つめるだけだった。何も言わずにただ見ているのだけれど、お姉さんは僕よりも先に恥ずかしがって後ろを向いてしまった。
「そんな真顔で見つめないでしょ。恥ずかしくなっちゃうじゃない」
「愛ちゃんお顔真っ赤だけど、それってお酒の影響じゃないよね?」
「そういうこと言わなくていいから。言われたら余計に恥ずかしくなっちゃうでしょ」
「そうかもしれないけどさ、なんで見せてる方が恥ずかしがってるのよ。反応違うでしょ」
「うるさいって。あんなに真顔で見られると思ってなくて、急に恥ずかしくなっちゃったんだよ」
「それはわかるけどさ、愛ちゃんって積極的なのかそうじゃないのか全く分からないね」
「いや、私は積極的ではないでしょ」
「積極的じゃない人が自分から胸を見せたりしないでしょ。それも、そこまで立派じゃないやつをさ」
「いやいや、良美が大きすぎるだけで私だって小さい方じゃないと思うよ。ここにはいないけど久子に比べたら全然ある方だと思うし。そっか、君の彼女もそんなに大きい方じゃないから小さいのが好きなのかな?」
「いや、僕はそう言うのに拘りは無いです。みさきのかそうじゃないかってだけですね」
「それってさ、彼女にとっては嬉しい事かもしれないけど、私達にとってはちょっと屈辱かもね。でもさ、そんなにコントロール出来るもんなの?」
「どうなんですかね。他の人の事はわからないですけど、僕はみさき以外の人に魅力を感じないようになってるだけかもしれないです」
「ああ、そう言う人と付き合いたかったわ。私も愛ちゃんも捨てられた側だからさ、君みたいに一途な人に思われていたら浮気なんてされることも無かったんだよね」
「本当だよね。どうしたら君みたいな一途な人と出会えるんだろうね」
「ねえ、やっぱり君が彼女の事を好きになってから告白したの?」
「いや、僕はみさきに告白されたんです。それからお互いに好きになっていったって感じですかね」
「それってさ」
「自分からいっても」
「「一途に思ってもらえるって事じゃん」」
それから僕とみさきの馴れ初めを離すことになったのだけれど、お姉さんたちは僕の話を真剣に聞いているようだった。僕は今までの事を全部話すつもりもないし、みさきたちが帰ってくるまでそれほど時間もないだろう。
「じゃあ、とりあえず僕とみさきの話を少しだけしますけど、その前に二人とも浴衣をちゃんと着直してもらっていいですか?」
浴衣をちゃんと着直したお姉さん方はテーブルの向こう側に座っていた。目の前にあるものはお酒ではなくお茶になっていたのだけれど、さっきみたいなことを繰り返さないといいなと思いながら、僕はゆっくりと話し始めたのだった。