大人の時間
「愛ちゃんの事だったら心配しなくてもいいわよ。無理に起こそうとしても起きないだろうし、起きたとしても愛ちゃんも参加してくれると思うよ。君だって若いんだから旅の思い出として良い事をしてもいいんじゃないかな」
「良い事って何ですか?」
「そんなの言わなくても分かってるんじゃないかな。ほら、お姉さんの素敵な体を見て何も思わないのかな?」
この人はいったい何がしたいんだろうと思いながらも浴衣の前をはだけさせているのはどうかと思った。特に何かを感じるということは無いのだけれど、言われなくてもみさきより大きい胸だという事はわかる。ただ、僕は胸の大小で人を判断したりしないし、そもそもみさき以外の人には興味なんてないのだ。どんなにアピールされても僕は何も感じることなんてないのだ。
「でもね、よく考えてごらん。君の彼女は今何をしてると思うかな?」
「何をって、温泉に行ってるんじゃないですか?」
「そうだね。私の友達の久子と一緒に温泉に行ってるんだよ。きっと、そこで君のために久子からスキンケアを教えてもらってるんじゃないかな。久子はお肌の手入れに時間もお金もかけてるからきっと勉強になること多いんじゃないかな。そうなってくると、あと一時間以上は帰ってこないと思うよ」
「帰りが遅いなら待ってればいいじゃないですか」
「そうなんだけどね。それだけじゃ退屈でしょ。私は思うんだけどさ、君の彼女って今の状況になることを想像して出ていったんじゃないかな。それってどういう言事かというと、君の彼女は久子のスキンケアが凄いって事を知っててそれには時間が結構かかる。時間が結構かかるという事は、この部屋に君を長時間滞在させることになってしまう。この部屋には失恋したばかりで男に飢えている私と愛ちゃんがいる。つまり、君の彼女は私達が何かするかもしれないというのにそれを気にもせずに温泉に行ってしまった。それって、公然と浮気を許可しているって事なのかもしれないよ。君の彼女は旅先での経験はノーカウントって考えなのかもしれないしね」
「みさきはそんな事を考えてはいないと思いますよ。単純に、あなたのお友達の技術を知りたいって事なんじゃないですかね」
「それもあるかもしれないけど、それ以外にも理由があるかもしれないよ。例えばだけど、私が君に色々と仕込んで彼女さんを楽しませるために練習しときなさい。って事かもしれないよね」
「それこそあり得ないでしょ。僕にもみさきにもそんな事を頼む理由なんてないですからね」
「あら、それって、お互いに相手を喜ばせているって自信があるって事なのかな?」
「そう言う話はどうでもいいんで止めましょうよ。普通に会話をして待ちましょうよ。ほら、その浴衣もちゃんと前をしまってください。それに、素肌に浴衣じゃなくて何か一枚着た方がいいですよ」
「そうは言うけどね、私ってあんまり肌着って着ないのよね。仕事の時とかはたまに着てたりもするんだけどさ、プライベートではほとんど着てないかも。愛ちゃんはちゃんと着てて偉いけど、私はちゃんと着てないいけない子なんだよね」
いけない子と言う年齢ではないと思うのだが、それを口に出してしまうと余計な火種になってしまう可能性もありそうだ。誰かが言っていたけれど、女の子はいつまでも気持ちだけは若くありたい。だ、そうだ。
それにしても、このお姉さんは欲求不満なのだろうか。浴衣の帯をきつく締めているのでウエストの細さと胸の大きさが強調されているのだが、僕にとってはそんな事はどうでもいいことの一つでしかなかったのだ。
そんな事よりも、あの胸はちょっと大きすぎると思うな。パッと見ただけでもみさきの五倍はありそうに思えた。お姉さんの胸は見てるだけだからちゃんとはわからないけれど、きっとそうなんだと思う。
「あれ、もしかして、君は私の胸に興味を持ってくれたのかな?」
「いえ、そうじゃなくて、さっきから一体何の話をしているのだろうと思っただけです」
「そうは言ってもね、君はさっきから私の胸をじっと見てることが多いよ。自分では気が付いていないかもしれないけど、私の胸がそんなに気になってしまうのかな。それも仕方ないよね。私はさ、スタイルもいいと思うんだよね。それでも振られちゃうのって私の内面には魅力がないって事ですかね」
「いや、そう言うわけでもないと思うけど。知り合ったばっかりで内面がどうなのかちょっとよくわかりませんが、痴女なのかなとは思ってたりします」
「そうね、君の言う通りで私は痴女なのかもしれないわね。そうとわかれば私の胸くらい揉んでもいいのよ。君の彼女には内緒にしておいてあげるからね」
「内緒にするも何も、僕はお姉さんの胸を触るつもりはないですよ」
「若いんだから我慢しなくてもいいんだよ。あ、もちろん胸を触ってその気になれるんだったらなってもいいけどね」
「そもそも触ることが無いんだからその気になるも何もないですよね」
「そうは言ってもさ、体は正直なんじゃないかな。お姉さんが確かめてあげるね」