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ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒純愛  作者: 釧路太郎
第一部 日常生活編
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花咲撫子 その一

 世の中は見た目がすべてだとは思わないけれど、初対面の人に限って言えば見た目だけで印象は決まってしまうのだ。私とお姉ちゃんが初めてあった人の前に出ると、よほど性癖が歪んでいない限りは私の方が可愛いと思われるはずだ。私を選ばないような人はどこか美的センスが歪んでいるとしか言えないはずだ。それは間違いないと思う。

 でも、お姉ちゃんはブスなわけではなく、ちゃんとすれば可愛くなれる素質はあると思う。高校生にもなって化粧もしようとしないし、服だって自分で選んだことは一度も無いんじゃないかと思う。本人はそれでもいいと思っているみたいだけれど、一番近くにいる私にまでその被害が及んでしまいそうで少し嫌な気分になることもある。身長が違い過ぎるので私の服は着ることが出来ないんだけれど、お姉ちゃんにはもっと似合う服があるんじゃないかなって常々感じている。部屋着は中学の時のジャージだし、休みの日に来ている服もお母さんがどこかで買ってきたよくわからないデザインの服を着ているのだ。次にお母さんがお姉ちゃんの服を買いに行く時があったら付いていこう、と毎回思っているのだけれど、いざその時になるとお姉ちゃんのために何かをするのが途端に面倒になってしまう。それは良くないと思っているのだけれど、面倒になってしまうのは仕方ない事なのだ。そもそも、お姉ちゃんが自分で自分に似合う服を探しに行けばいいだけなのだ。

 お姉ちゃんは小学生の時は好きな男子が出来たら教えてくれた。今では好きな男子がいるかどうかもわからないくらい恋バナなんてしていな。これはほぼほぼ私が悪いのだけれど、お姉ちゃんが好きになった男子を見に行くと、なぜかその男子は私の事を好きになってしまうのだ。

 妹としてお姉ちゃんの恋路を応援したのだけれど、その男子にお姉ちゃんの良いところを説明しているはずなのに、なぜか男子はみんなお姉ちゃんの事を無視して私に言い寄ってくる。話しながら手を握ったり腕を触っているだけなのに、私がお姉ちゃんよりも可愛いせいなのか、少なくとも一か月以内に私は告白されていた。でも、前田先輩だけはそうなってくれなかった。


 私が前田先輩に初めて会った時は偶然だったんだけど、お姉ちゃんの教室まで何となく行ってみた時に、お姉ちゃんと前田先輩が楽しそうに話しているのが目に入ったのだ。

 お姉ちゃんが前田先輩の事を好きなのかはわからないけれど、楽しそうに話しているのを見て、私は何となく腹が立ってしまった。理由なんてわからなけれど、お姉ちゃんが男子と楽しそうに話しているのを見てそう思ってしまった。それは良くないなと思っていたけれど、お姉ちゃんと楽しそうに話している先輩の姿を見ると、どうも我慢が出来なかった。

 その後も色々と理由をつけてお姉ちゃんに会いに行ったのだけれど、前田先輩を見付けてお姉ちゃんに会いに行った六回目の時に初めて会話を交わしたのだ。

 なんてことない普通の会話だったけれど、前田先輩はお姉ちゃんに対しては何も警戒していない様子だったのに、私が近くに寄っただけで何かに怯えているように警戒していたのだ。可愛すぎる女子を目の前にして緊張しているのかなとも思っていたけれど、そうではなくて、単純に知らない女子と話すのが得意ではなかっただけみたいだ。

 それならとばかりに、ボディタッチを増やしてみたり強めにアイコンタクトをとってみたりしたんだけれど、どれも不発に終わってしまった。他の男子なら簡単に落ちているはずなのに、前田先輩は私の事が全く目に入っていないんじゃないかと思うくらいに無視してきたのだ。

 こうなったらとあの手この手でアピールしていたのだけれどそれも全て失敗に終わっていた。あとから知ったことなのだけれど、前田先輩には妹がいて普段から私が前田先輩にしているようなコミュニケーションをとっていたらしく、私がやっていたことは前田先輩にとっては日常の一コマでしかなかったみたいだった。実際に妹さんを見たことがあるんだけど、私に負けず劣らず可愛らしい子だったので、私に対してドキドキしないというのも少しだけ腑に落ちたと思う。

 一か月経っても全く反応が無かった先輩なんだけど、ある時にお姉ちゃんとゲームの話をしていたところ、珍しく先輩から会話に混ざってきたのだ。私はゲームの事があまり詳しくないのだけれど、お姉ちゃんが楽しそうにやっているのを見るのは好きだった。何をやるゲームなのか理解していないし、見ててもさっぱり何をしたいのかわからないのだが、それでもお姉ちゃんが楽しそうにやっているのを見るのは好きだった。

 前田先輩はそんなゲームが好きだったらしく、男子の間でもそのゲームが好きな人は前田先輩くらいしかいなかったそうで、そのゲームをかなりやっているお姉ちゃんと気が合うのは仕方ないんじゃないかとも思えていた。

 可愛い妹がいるので私を自分の妹と同じ生き物だと勘違いしていて、私には理解出来ないゲームの面白さをお姉ちゃんとは共有できている。そして、その先輩は何故か私には全く興味を示さない。

 私はこのままでは負けたままで終わってしまうと思い、それは良くないと思って、お姉ちゃんに前田先輩を誘ってゲームをしようと提案してみた。もちろん、私は説明されてもゲームをどうやるのか理解する気も無いので見ているだけになると思うが、前田先輩が家まで遊びに来るようになれば、あの手この手で前田先輩に私の魅力を伝えることが出来ると思う。

 もちろん、私の魅力が伝わればそこでおしまいなのだけれど。


 結果的に言えば、私の魅力は全く伝わることは無かった。お姉ちゃんが席を外している時はわざとらしく目を合わせてこなかった。目が合わないだけではなく、視線がこちらに向いている気配すら感じなかったのだ。毎回のように先輩を見つめていたんだから、それは紛れもない事実である。

 それと、なぜか私の出したものには手を出すことは無かった。

 試しに、私が持っていったモノを一度下げてお姉ちゃんが出し直したことがあったのだけれど、その時は一瞬の間もなく口に運んでいたので私の事が単純に嫌いなんじゃないかと思うほどだった。

 それでも、ゲームをやっているのを見ているといった日々が流れていくと、いつからか視線が合って目が合う瞬間が増えたのだ。

 私の魅力に気付けないような人でも時間をかければ魅力に気づくようになるんだと思った。その時はそう思っていたのだ。

 実際は、前田先輩はその時点でも私の事をなぜか警戒していたのだが、私が見ていないときにお姉ちゃんが前田先輩に私をそんなに警戒しないようにお願いしていたみたいだった。それが無ければ前田先輩はずっと私を無視していたのかもしれないと思うと、少しだけ自信を失ってしまった。


 それだけの事だったんだけど、先輩の彼女に先輩の事を諦めてもらうにはどんな話に変えればいいんだろうね?

 お姉ちゃんもそうだけど、前田先輩に関わる人は野生の勘が強く働いているのか、私の近くから離れていく人が多いように思えていた。いくら私が魅力的だとしても、近くにいないのではその魅力も伝わらないだろう。そう思わないとやっていけないだろ。


 先輩の彼女には出来なくてお姉ちゃんになら出来そうなこと。そんな事は無いだろうけれど、それでも先輩が彼女と別れるきっかけが作れたらそれでいいや。

 その後は私の魅力に気づいた先輩を振ることで全てが満足いく出来になるというものだ。

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