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ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒純愛  作者: 釧路太郎
第一部 日常生活編
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花咲百合と前田正樹

「前田君の彼女ってきっといい人なんだよね。私が前田君の彼女だったとしたら、知らない女の子と二人っきりにさせたりしないと思うからさ」

「普通はそう思うけど、みさきは割とそう言うのは平気なのかもしれないよ」

「そうなんだ。心が広い彼女なんだね」

「たぶんだけど、お互いに信頼しているからじゃないかな。他の人と二人で会ってもやましい事は何もしないって自身もあるしね」

「それだけ信頼しあえる関係って羨ましいかも。私だったらそこまで信頼することが出来ないって思うもん。特に、妹の撫子を見ていると他人を信用するのって難しいなって思うところがあるからね。前田君も彼女が撫子だったらそんなに信頼関係を築いていないよね?」

「そうだね。申し訳ないけど、花咲さんの妹にはあんまり深く関わりたくないって思うよ。今日も本音を言えば断りたいって思ってたけれど、僕の彼女が近くにいたってのもあるし、その彼女を妹さんがハッキリと認識していたってのもあるからね。失礼な言い方になってしまうけど、僕は妹さんを全く信用していないんだよ。でもね、花咲さんの事は良い人だと思ってるからさ。高校が別になったのは残念だけど、同じ高校の同じクラスだったらよかったなってちょっと思ってみたくらいだしね」

「前田君って昔から女子人気高かったからそう言われると嬉しいけど、お互いに恋愛感情が無いからそう思えるのかもね。人に好かれるのが苦手な前田君しか知らなかったから、彼女がいるのってちょっと意外かも。でも、少ししか見てないけれどお似合いのカップルだと思うよ」

「ありがとう。でもさ、花咲さんは気になる人とかいないの?」

「ちょっと、その聞き方だと彼氏がいないって断定していることになるよ。実際にいないから間違いではないんだけど、妹が近くにいる間は恋人作ろうとは思わないかな」

「そうだね。あの妹さんが近くにいるなら、その方がいいと思うな。あの子はちょっと普通じゃない執着心を持ってる感じだし不穏な感じがしてしまうからね。僕も中学の時の事を思い出すとちょっとどころかかなり寒気を感じてしまうからね」

「あの時は本当にごめんね。私がもっと強く言えたらよかったんだけど、あの時は今以上に私の言うことを聞いてくれなかったからどうすることも出来なかったんだよね」

「でも、そのおかげで良い事が二つあったからいいんだけどさ」

「良い事って何?」

「一つ目は、妹さんのお陰で言い寄ってくる女子がいなくなったことだね」

「もう一つは?」

「花咲さんと仲良くなれた事かな」

「もう、それは私の事をからかっているでしょ」

「そんな事ないって、花咲さんは他の女子と違って僕の事を異性としてじゃなくて同じ人間として意識してくれていたからさ。今までそんな人と会った事なかったからちょっと嬉しかったんだよ」

「でもね、お話しするまでは普通にかっこいい男の子だなって思ってたんだよ。思ってたんだけど、話しているうちにだんだんと苦労しているんだなって思うようになっていって、最終的には一人の人間として尊敬するようになっていたと思うんだよ」

「僕はあの妹さんのお姉さんって聞いた時に、普段は大人しいのにやばい人なのかなって警戒してたよ。でも、ちょっと話していたら妹さんとは全然違うタイプの人だなって思うようになっていて、気付いた時には話しやすい人だなって思ってたんだよね。花咲さんは話しててもストレスが溜まらない人だったんだよね」

「それってさ、撫子もそうだけど他の女子も前田君が何かするたびに歓声をあげていたってのもあるんじゃない?」

「それはあるかもしれないな。僕ってあんまり注目されるの好きじゃないんだけど、あの時期はやたらと注目されていたしね。そんな時だったからこそ普通に接してくれていた花咲さんが話しやすいって思ったのかもしれないね。もしかしたらだけど、その経験が無ければみさきの事を最初から信頼することも無かったかもしれないし、そうなってくると、花咲さんに出会っていなければ僕はみさきと付き合ってなかったかもしれないね」

「ああ、でもそうなると、私と前田君が話すきっかけになったのは妹の撫子のせいでもあるし、前田君と彼女が付き合うきっかけを最初に作ったのは撫子ってことになっちゃうよ」

「それはちょっと嫌かも」

「だよね」


 僕は花咲さんの事は今でも信頼している。少なくとも、僕は他の女子とは無理でも花咲さんとの間には友情関係が結べると信じているのだ。お互いに好きなタイプからかけ離れているというのもあるけれど、同じ作品が好きなモノ同士という何物にも代えがたい宝物があるのだ。お互いに好きな作品が同じだけれど、好きという視点がお互いにちょっとずれており、その事がかえって自分では気づけない発見をすることが出来るといった関係なのだ。つまり、本当の友達と言える関係だと思うのだ。

 しかし、そんな最高の友達と呼べる花咲さんにも欠点が一つだけある。それが、妹の花咲撫子だ。

 僕は中学生の時になぜか花咲撫子に目を付けれれてしまい、そのまま付きまとわられることになるのだった。最初のうちはあしらうこともせずに優しく接していたのだけれど、そうしているうちに女子の面倒な部分だけを僕に向けてくるようになったのだ。

 他のクラスメイト達は花咲撫子を見て可愛いだの綺麗だのと言っていたのだけれど、僕にはそう思えるようなことは何一つなかったのだ。確かに、見た目だけなら可愛らしい女の子だと思うのだけれど、他の女子に気付かれないように上手い事利用して自分の価値を高めているように思えて、なんだか気持ち悪くて怖く感じてしまったのだ。その事をクラスの友人に言ってみても誰一人として共感してもらえることは無く、僕だけ判断基準がおかしいのではないかと疑心暗鬼になっていたりした。ちょうどそんな時に、花咲撫子が自分を持ち上げるために紹介してくれた花咲百合さんと出会うことになったのだ。

 花咲百合さんの事は同じクラスの生徒としてしか認識していなかった僕は今みたいに信頼することはせず、他の女子と接するときのように一定の距離をとるようにしていた。それは花咲百合さんも同じだったようで、他の女子のように僕のもとへグイグイと寄ってくるようなことはせず、妹の花咲撫子の事で僕に謝ってくれたりもしていた。

 僕はなるべく花咲撫子と二人っきりになることは避けていたのだけれど、それを段々と理解してきた花咲撫子は二人っきりではなく誰かを間に挟むようになっていた。そのほとんどが花咲撫子と同じ学年の生徒だったのだけれど、僕はそういった人たちにもあまり興味を持てなかったので冷たい態度をとっていたと思う。しかし、極稀に花咲百合さんだけを連れてくることがあったのだけれど、今にして思えばなのだが、他の女子に対する態度と花咲百合さんに対する態度が違い過ぎたようで、人間の感情の変化を読み取るのが得意な花咲撫子はその事を見逃すはずもなく、クラスメイトを誘う回数と花咲百合さんを誘う回数がいつの間にか逆転しており、最終的には三人で会う機会が極端に多くなってしまっていた。

 当時の僕は何となく他の女子と違うという理由だけで花咲百合さんを見ていたのだけれど、そう感じていなければ今の時間もここではない場所でみさきと一緒に過ごしていたのかもしれない。

 でも、花咲百合さんと過ごした時間が無ければみさきと付き合おうとは思わなかったかもしれないので、人生でマイナスだと思っていた時間でも、それがあったことによってもたらされたプラスな時間もあるのだろうと思ってみた。


「ねえ、今思ったんだけど、前田君の彼女って撫子と二人で話しているのって大丈夫かな?」

「あんまり大丈夫じゃないかも。でも、みさきなら妹さんに惑わされないと思うんだよね。たぶんだけど、そう信じているよ」


 大丈夫。みさきならきっと何を言われても変わらずにいてくれると僕は信じているのだ。今日初めて会った花咲撫子の言葉よりも、僕と過ごした時間の全てを信じてくれると思うのだから。

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